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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第2章 魔術研究所
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魔術のいろは

思ったように魔術を発動できず、皆を頭からずぶ濡れにして、アリアは顔を真っ赤にして泣きそうになっていた。


「アリア、笑ってすまなかった。あんな風に頭から水を掛けられることなんてないだろう。なんだか可笑しくてな」


アリアは、まだ笑いのおさまらない僕を少し恨めしそうに見ていた。


僕はふぅと息を吐いて気持ちを落ち着けると、アリアの前に立ち、乱れた前髪をそっと直してやった。


「不安な中、よく頑張ってるよ。あまり気負わなくていいから、少しずつ進めばいい」


「そうでしょうか…」


まだ納得いかない様子だが、アリアは小さく微笑んだ。



僕は調査官達の中に、闘技場での案内をしてくれたケニスがいることに気づき、疑問に思っていたことを聞いた。


「ケニス、どうやって狙った魔術を発動できると考えているんだろうか?」


「それは……」


「それは?」


なんだか言いにくそうにしている。


「どの文献にも『体の中で感じる魔力を放出する』としか書いていないのです。魔術師にとっては当たり前すぎて、説明もされていないようで……」


バツが悪そうに段々と声が小さくなっていった。


「では、アリアの感覚だけが頼りということか?」


「はい、今のところ…」


「それは……うまくいくはずないだろう」


「申し訳ございません」


「謝られても仕方がない。一体、昔の魔術師は、どうやってその魔力を感じていたんだろうなぁ……。生まれ持った感覚なら、魔力を持った時点でアリアにも感じられるだろうし。そうじゃないなら、幼い頃から習うのか……ん?」


「どうかされましたか、殿下?」


幼い頃からといえば……


「絵本じゃないか?」


ケニスも他の調査官らも、そしてレイドナー教授まで「絵本ですか?」と怪訝そうな顔をしている。


「青は 水が流れ

 緑は 風が吹き

 赤は 炎が揺れ……」


僕がそこまで言うと、アリアが思い出したように続けた。


「茶色は 土が我らを守る――ですね」


「そう!よく覚えてたね、アリア」


「初めて訳した絵本ですもの。とても可愛らしい挿絵で訳すのも楽しかったんです」


僕とアリアが絵本の一節で盛り上がっている横で、調査官達がぽかんとした顔をしていた。


「えっと……、古代魔術語で書かれた絵本の一節なんだが…」


と僕は補足してみたが、どうやら僕ら二人以外は知らなそうだ。どう説明しようかと思っている僕の横で、アリアがさっきの言葉を繰り返した。


「青は水が流れ…」


そう言って先程と同じように手のひらを上に向けると___


手のひらの上がふんわりと青い光に包まれ、水が静かに湧き出た。


「わ…、で、できた…」


小さな声でそう呟いたアリアの手のひらには、水が溜まっていた。その水を誰もいない方へパッと撒き、「緑は風が吹き…」と続けると、さーっと風が吹いて撒いた水を巻き上げた。陽の光を反射してキラキラと輝くのを皆、驚いた顔で見ていた。


「…ライナス様、できました……」


「ああ……できたな。すごいな…」


色で魔力をイメージしただけで、あんなに暴走していた魔術を操ることができるようになるなんて。


僕も皆と同じように口を半分開けて間抜けな顔で驚いているんだろう…。

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