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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第1章 かつて魔術が存在した世界で
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色と冷たさの仮説(前編)

アリアの診察が始まり、僕はギルバートと部屋を出て、一階の書斎に移動した。


「アリアに……何が起こったんだ?」


書斎の扉を閉めた途端に、ギルバートはそう言葉を発した。まだ頭の中の整理がついていないようで、僕にその答えを期待しているというより、ただ疑問を口にしただけといった感じだった。


そんな彼に、さっき思いついた仮説を話そうか迷った。


それは、僕のように魔道具が好きでこれまで魔術について色々と興味を持っていた者にとっては納得がいく内容ではあるが、そうではない人達には突拍子のないことだろうから。


「ライリー、どうかしたのか?」


話すべきかどうかと考えて黙り込んだ僕を、ギルバートは心配そうに見ていた。


「アリアに何が起こったか……あくまでも僕が思いついた仮説なんだけど…」


「それでも構わない。可能性のあることなら、些細なことでも知っておきたい」


そのギルバートの言葉に頷いて、僕は話し始めた。


「アリアの部屋に落ちていた物の中に、古代魔術語で『力を解放せよ』と書かれた木片があったんだ」


「…古代魔術語で、力を解放せよ……?」


「ああ。アリアがそれを読み上げたから、あの魔法(ぎょく)に込められていた魔力が爆発的に放出されたんじゃないかと僕は考えている」


「ちょっと待ってくれ。アリアの部屋にはお前が渡した魔法玉は破片すらなかったんじゃ…」


そう言いながら、ギルバートは手にしていた現場の調査報告書をパラパラとめくった。


「魔法玉って繰り返し使える物と、一度きりの物の二種類あると言われている。繰り返し使える物は、魔力を使い切るとそのままただの鉱石の丸玉になって残る」


「それを今の時代では、装飾品として飾ってるのか」


「ああ、そうだ」


「それで、一度きりってやつは?」


「その魔力を放出すると同時に消えて無くなるっていう記述があるんだ」


「消えて無くなる?弾け飛んじゃなくてか?」


「ああ、魔法玉自体が爆発したのなら、破片が残るはずだろう?でも、それらしいものは一つも無かった。


まあ、消えて無くなって証拠も残ってないから、一度きりの魔法玉が実際に存在していたかどうかすらアカデミーでも意見が割れているけどな」


「お前は、アリアに渡したのが一度きりの魔法玉だって考えてるっていうことか?」


「ああ」


あの藍晶石(らんしょうせき)の魔法玉が一度きりの物であれば、そこに込められた魔法があの爆発を引き起こし、その後、欠片も残さず無くなったことも説明がつくのだ。


けれども、どんな魔法が込められていたのか、それが爆発以外にどんなことを引き起こすのか、見当もつかないのだが…


「じゃあ、アリアの目の色は?何か思い当たる理由はあるのか?」


「それも僕の想像だけど……、魔法玉には様々な色があるのは知っているよね」


「ああ。叔父上から預かったやつも、赤とか黄色のもあったな」


「魔法玉は元はただの球状の石で、その色によって受け入れられる魔法が決まっているという説が有力なんだ。元は透明で、込めた魔法によって色づくと言う学者もいるけど」


「どちらにしても、色を見ればどんな魔法が込められてるかわかるってことか?」


「いや、魔法の種類がわかるだけで、どんな魔法かは見ただけではわからない。説明書がよく発見されているから、それを付けて売っていたと思われる」


「売ってた?」


「魔法玉って、魔術師が込めた魔法を呪文を唱えれば、魔力を持たない人でも使える物だったんだ。当時は、用途別の魔法玉が売られていたらしい」


「へぇ…、それは便利そうだな。それで魔法の種類って何だ?」


これまで魔術に興味がなかったギルバートは、色々な疑問が湧いてくるようだ。まあ、その内容に食いつくというより、半信半疑で話を聞いている感じだが。


「青が水魔法、緑が風、白が治癒。これが、アリアに渡した魔法玉に入っていた色だ。他の魔法は、赤が火、茶色が土、黄色が光、これが主な魔法の種類だ」


「アリアの瞳の色も、その魔法玉と同じ色になっているのは…?」


ギルバートが心配そうに疑問を口にした。

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