040(巨大隕石)
ーー僕の名前はハビィ。汎用猫型最終決戦兵器だ。今日もいい天気だ。心地好い。ウトウト、ガクッ。いかんいかん、寝落ちするところだった。流石、昼下がりと夕方の間。一番眠くなる。
バサッ、バサッ。
『開けてー!』
おや? ヤタガラスの魔獣の田吾作が来たか。バチ、ガラガラ。僕は一撃の猫パンチで内鍵と窓ガラスを開けた。バサッ、バサッと羽ばたかせて田吾作が部屋に入ってきた。
『大変だ! 大変だ!』
『どうしたの? 今、寝落ちするところだったのに』
『生きてたんだ、奴が!』
『誰?』
『伝説の魔法使い、プルトンだ』
『誰それ』
『プルトンは魔法使いのトップオブトップの男エルフだ』
『そんなヤバい奴はどっちに着いてるの?』
『今のところ王族側だ。プルトンは強力な魔法使い、俺はしばらく姿を消す。お前も気を付けろ』
ガチャ。レイとメフィストが帰ってきた。
『お帰りー』
「ただいま、ハビィ。田吾作も居たか」
『よっ』
「ヤタガラスの魔獣よ、聞こえておったぞ」
『ヒィィィーー!』
「カラスの水炊きなど不味そうじゃな」
『プ、プルトンという名に聞き覚えは?』
「師匠じゃな、我の師匠。あのジジイは正直、相手にしたくない奴じゃ」
「そんなに強いのか?」
「む! いかん、外を見ろ!」
僕はレイの机の上に飛び乗る。火球かな? 赤く光る隕石? あれが落ちたら大変だ。レイがテレビを点けた。情報収集のためだろう、ニュース番組にチャンネルを合わせた。
【ただいま入ってきた情報によると、突如として現れた隕石は地球に向かっているとの事です! 天文学者や数学者が割り出した落下地点は、神奈川県! 後1週間ほどで地球に衝突するとの予測が出でおります! 隕石の大きさは直径350キロメートルほど! 地球が消滅します!】
「やベーな。神奈川県に。クララを狙っての事か?」
「おそらく。これはプルトンお得意の隕石魔法じゃ。弟子として我が止める」
「これは罠だ、俺も行く!」
「分かっておる。ヤヨイ」
「クッ、何を…………」
「飛べぬレイは足手まといなのじゃ」
レイが片膝を突いた、レイの弱点だ。着いてくるなって事か。プルトンって奴はメフィストの師匠みたいだから、一騎討ちを望んでるんだろう。メフィストがレイの頬にキスをした。そして浮遊魔法を使い、ベランダから飛び立った。
ーー我の名はクララ・メフィスト。レイの妻じゃ。妻として夫を守るのは当然。これから出来の悪い師匠と決着を着けなくてはいけない。隕石に対抗するには隕石しかなかろう。破片に当たったらタダでは済まんじゃろう。これはプルトンの粛清。我が出てくる事を見越して唱えたのじゃろう。それでなければ、プルトンも死ぬ事になる。いくら我を育てた魔法使いでも宇宙空間では生きていけんからのう。しかし、相変わらず芸のない師匠じゃ。
隕石までの距離、35万キロメートル。空気が薄い。高度1万メートルほど。だが対抗する魔法を使うにはこのくらいの高さが必要じゃ。我が選択した魔法は、直径100メートルの隕鉄を極超音速でマシンガンのように連射するものじゃ。
我は詠唱に入る。6つの立体魔方陣が、我の後方に出来上がり、ガトリングガンの様に回転する。
「行くぞ! 火力なら負けぬ! 封印魔法、ファイナルアトミック!」
ズガガガガガーー!! 我は、極超音速で飛ぶ隕鉄を毎秒6000発、巨大隕石にぶつけて粉々にした。ミッション終了じゃな。意外とあっけないものじゃ。
「どこを見ておる、クララ・メフィスト!」
ザンッ! 死角にプルトンがおったのか。やはり罠じゃった。身体に力が入らない。我は妖刀で背中を斬られたようじゃ。ただでさえ使いづらい浮遊魔法に6個の立体魔方陣を使い、一時的に魔力が下がった状態では気配を覚る事が出来なかった。我は真っ逆さまに落ちていく。ダメじゃ、力が入らない。レイ、暫しの間楽しかったぞ。去らばじゃ、レイーー




