第7話 敦賀の高嶋屋
「わりゃ、どこんもんや!」
「おう!源左、生きてたか~」
「・・・どひゃ~やすけさ~の幽霊や~~」
「あほかいな、足あるで~~」
「ほんまや、ああ、若大将やないか。
むさい髭でわからんかった~」
「怪我したんかゲンサよ~」
「あんときゃ死んだかと思ったで、左腕1本ですんだ~」
「そうか・・・旦那は?」
「そりゃこっちが逃げられたんは、若大将の足止めのおかげやし~」
「良かった。
積もる話はまたにして、旦那に知らせてくれ。
あと、荷車を2台ほど出してくんねえか」
「へい!」
みんな、交易で手に入れた和人の古着姿だ。
アイヌは髭や月代を剃らないのでひげ面で総髪を後ろで結わえている。
「許してちょんまげ」
「なんや?」
「なんでもない、ふわ~」
「オン・・・やなくて貴丸、ケリ(靴)のことはうっかりやな」
「あ!」
「そういや草鞋や草履やったな」
「今じゃこのほうがしっくりくるわいな」
「そやな~」
アイヌの若者達はパカンと口を開けてキョロキョロだった。
「おい、おまえら櫓を片付けやい」
「「「「うははい」」」」
半分が我に返って、櫓を外して所定の位置にしまい、荷物の固定縄をほどく。
「ごら、働け~」
「「「「ひゃ~」」」」
他の奴らもやっと動き出した。
「しかし、足が速いなあ、この船は」
「風さえ吹けばやね、帰りは海流もあるさかいな~」
「だな~」
やがて、源左が荷車と男衆を連れて戻り、荷物を積み替えた。
「旦那もお待ちやさかい」
「三吉と猪之助はこいつらと飯場に行ってこい。
源左、見張りは任せて良いか?」
「へい、三吉とイノも昔の面影はあるんやけど立派になってるの~」
「「へへへ」」
「それじゃ、行ってくるわ」
「へい!」
まだ戦禍なく変わらぬ街並みだそうだが、高嶋屋の本陣は立派だった。
「ほえ~」
「貴丸や、あほ面さらすなや」
「うう」
本陣は大騒ぎになっていて、バタバタと足音がしたら高嶋屋伝右衛門がヒイ~と言いながら傳二郎に抱きついた。
「ほんまや、傳二郎はんや、生きておったんか~うううう」
「幽霊やないで・・・太ったの~」
「おめえはむさくなったの~」
「「アハハハ」」
十代で出会った2人は気の置けない間柄だった。
「お、弥助はいいとして、こいつはワイの息子や」
「貴丸や、よろしゅう」
「おお~~凜々しいやないか、何歳や?」
「春に数え8歳やで、ま、詳しい話はおいおいな」
「わいの娘は6歳や、息子が4歳と1歳や」
「うう、娘が3歳や、数で負けた」
(こいつらアホダチだな)
「弥助も無事やったんやな」
「へい、わての娘も6歳と3歳やで」
「・・・嫁がきたのか、良かったな」
「ダテ食う虫も好き好きやで」
「ごら!大将!」
「す、すまん」