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ハイブリッド  作者: 天尾 義七
1章 Its no use crying over spilled milk
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6 帰路

その後はお嬢様と一緒に外から、体育館を眺めたり、校内に咲いていた桜の木に登ろうとするお嬢様を止めたり(お似合いの制服が汚れますと言ったら、顔を赤めながらやめてくれた、、、なんでだ?)私がウサギ小屋に指を入れて噛まれたりと(ちなみにお嬢様は横で爆笑していた。提案した本人はやらないというなにか釈然とはしなかったが)しているうちに時間もたち空が明るみ始めた頃、お嬢様が

「そろそろ、明るくなってきたしー、帰ろうか」

「へっ?」

私は驚きのあまりそんな間抜けな言葉を発した。

「何よーその食べようと思っていたのが、食品サンプルだったみたいな顔してー」

「なんですか、その妙にリアリティーがある例えは」

自分で間違った事があるのだろうか。

「いや、いままでお嬢様が引っ張り回す時は必ず私の方から、家まで引っ張り返して、家の人に怒られるのがセットだったじゃないですか」

たまに家にお嬢様のお父様がいる時は俺もお嬢様と一緒に正座させられ怒れたっけ。(あの人は笑顔で怒るから、下手に怒鳴られるより、すごく怖い)

「それはねー今は家に帰っても、口うるさく言う人もいないし、それにー」

と言った時お嬢様の腹からグーという音が鳴った。

「ほら、私のお腹も早く帰ろうって言ってるよー」

「少しは恥じらってください。たくっ」

私は溜息をつきながら、校門に向かって歩き出した。

それからは特別な事もなく、お嬢様から聞かされた通り、巡回の先生や警備員に見つかる事はなく、無事に家へと到着した。

私は玄関の鍵を開けながら、呟いた。

「本当にあなたお嬢様ですか」

「なによ、藪から棒にー」

「だって、おかしいじゃないですか、いままで、お嬢様だったら帰り道であっても、途中海まで遠征して泳ごう、なんなら今度は夜の動物園を探検してみようとか言ってくるのに、今回はただ自分の学校を見ただけで満足して帰るだなんて。絶対におかしいですって」

「セバスが私の事をどう見てるかがよく分かったよー」

とお嬢様は溜息をついた。普段溜息をつきたいのは私の方なんですけどね。

「私だって、今日から中学生立派な大人の女性への階段を上っているだよー。少しは落着きも出てくるのも当然じゃないのー」

「大人の女性はそもそも夜の学校に忍び込んだり、しないと思いますが」

「そこは遊び心というか大人になっても子ども心は忘れないというかー」

「このあー言えば、こー言う感じ、どうやらお嬢様で間違えないようですね」

「どこで納得してるのよー」

とお嬢様の不満げな声を聞きながら、俺はお嬢様の背中を押しながら、

「ほら、それなりに歩いて汗もかいたんですから、早くシャワー浴びちゃってください。その間に朝ごはん作っておきますから」

「んじゃー、一緒に入ろー」

「馬鹿いってると、朝ごはん人参まみれにしますよ」

「さて、早くシャワーをあびないと」

とお嬢様は風呂場の奥へと消えていった。

「まったく、こっちも男なんだら、ああいう事を言わないでほしいぜ」

俺は熱くなった顔を抑えながら、まずは手を洗うべく、台所へと向かった。


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