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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスの大冒険
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6.サンチェス逮捕!?

サンチェス逮捕


「レオパルド君、なぜ笑っているんだね。逃げられたのだぞ?」

エクトル警部はサンチェスに逃げられたのち、レオパルドが微笑を浮かべているのを見て尋ねた。レオパルドがサンチェスが逃亡できたということに安堵しているのではないかと思いながら。すると、

「ああ、まだサンチェスは逃げていないんです。というよりも、まだ私たちはサンチェスを逃がしたわけではないのです。」

レオパルドは言った。

「え…?」

エクトル警部は思わずつぶやいてしまった。それほどにレオパルドの言っていることは不可解だった。まだ逃がしていないとはどういうことか、サンチェスは実際目の前から消えた。いまだに邸宅内にいるということだろうか。そう思いながらエクトル警部はレオパルドの続きの言葉を待った。

「宝石を始めて見せてもらった時にこっそり発信機をつけさせてもらったんです。それから誰も宝石の発信機をとっていないので、サンチェスは発信機の付いている宝石も今も持っているんでしょう。だからこのレーダーを使えば居場所がわかるはずです。」

レオパルドはそう言いながらレーダーのような機械をポケットから取り出し、皆が見えるように軽く掲げて見せた。その機械の中心ではサンチェスの持っていった発信機の場所と思われる赤い表示がついていた。エクトル警部とアルベルト氏は思わず感嘆の声を上げた。レオパルドは今も平静を保っていたが、どこか誇らしそうにも見えた。レオパルドはそのままエクトル警部とアルベルト氏を促して捜索に向かった。サンチェスが逃げて行った方向は広い森だった。警官らは総出で森の中を捜索していった。そこは全体を捜索するのはかなり困難な広い森だったがレオパルドのレーダーがあったことで少しずつサンチェスに近づいていき、最終的にはレーダーの指すところが一定となった。

「もしかして、サンチェスが発信機に気づいたんでしょうか。」

レオパルドはエクトル警部に言った。サンチェスが発信機に気づいてしまったとすれば、サンチェスを逃がしてしまったも同然だ。次こそはレオパルドも落ち込むに違いない。そう思ったが、もしかしたらサンチェスもまだ気づいていないかもしれない。今は隠れ家にいるのかもしれない。エクトル警部はそう考えてレーダーの示すところに進み続けた。すると、

「すごい家ですね。これがサンチェスの隠れ家でしょうか?」

普通の家よりは明らかに大きい邸宅がそびえていた。周りをまわってみても大の大人が走って数分かかるほどの大豪邸だ。サンチェスが隠れ家にするには目立ちすぎているのではないか、エクトル警部やレオパルドもそう思ったが、レーダーはここを示しているため、一度調べてみることにした。

「ごめんくださーい。」

エクトル警部が戸を叩きながら声をかけるが誰の返答もなかった。エクトル警部は戸の前で数分待ったが、だれも出てこないのであきらめようかとも思った。すると、


ガチャッ


物音がしたと思ってエクトル警部らが先ほどの邸宅の戸の方を向くと、戸が軽く開いていた。エクトル警部はすぐに走り戻り、戸の周りを観察したが、やはり誰もいない。中を軽く覗いてみると外装に見合うような豪華な内装だった。赤いカーペットが敷かれ、天井にはシャンデリアが吊るされている。横には部屋がいくつも枝分かれしていた。エクトル警部が見た中でもかなりの大豪邸だった。そのようにしてこの邸宅の豪華さを理解すればするほどサンチェスの隠れ家である可能性は低く感じた。しかし、何度確認してもレーダーはここを示しているのだった。エクトル警部とレオパルドは覚悟を決めて中に入ることにした。警戒しながらも入ってみると、どこを見ても豪華な部屋だった。そして進んでいくと、奥の方で何か物音が聞こえてきた。エクトル警部らはそっちに誰かがいるのかと思い、そちらに進んでいく。進めば進むほどに物音が大きくなっていった。何かを書き記すような音だった。そうして物音がある方に進めばある一つの部屋から聞こえてきていることが分かった。エクトル警部とレオパルドは顔を見合わせた。こっそりと戸を開き、中をのぞくとなんとサンチェスが普通にいた。レオパルドとエクトル警部は驚きのあまり声を出さないようにするので精いっぱいだった。ここまで無防備にサンチェスがいるのはさすがに罠さえ疑う。しかし、サンチェスの周りを確認してみても誰もいないし、罠もなさそうだった。突入するか突入しないか。エクトル警部は悩んだ。横目でレオパルドを見ると、自分の判断を仰ぐようにして自分の方を見ている。自分で決定するしかないだろう。そう考えたエクトル警部は考えて考え抜いて、

「突入!」

突入を決意した。エクトル警部の言葉を合図にして、共についてきていた少数の警官らは大勢の警官にも負けぬほどの雄たけびを上げ、部屋に入っていった。すると、案外簡単にサンチェスは捕まってしまった。サンチェスもこの隠れ家を突き止められるなど思ってもみなかったのだろう。ほとんど警備も施されていない隠れ家にただ一人いたのだから警戒心もそこまでなかったのだろう。捕まったサンチェスは抵抗するわけでも警官らに敵意を示すようでもなく、潔く捕まっていった。その様子をレオパルドは見届けた。幼馴染であり、大親友であったサンチェスが、捕まっていく姿を悲しげな眼で。

「机の上の書類、確認してもらえますか?」

突然サンチェスが軽い口調で言いだした。サンチェスを連行している警官らは手を止めないが、近くにいた警官が先ほどまでサンチェスがいた机の上にある書類に目を通した。すると、

「エクトル警部!これを見てください。」

書類を見た警官が驚いた様子でエクトル警部の名を叫んだ。エクトル警部は警官らに指示を飛ばしていたがすぐに警官のところに戻って何事かと聞いた。すると、警官はエクトル警部に先ほどの書類を見せた。その書類はアルベルト氏とオヌクール氏の間で交わされた手紙だった。


手紙の内容

アルベルトへ

新しく設計の仕事ができた。一か月もかからないはずだから、今から準備をしておいてくれ。報酬は盗めた金の半分でいいか?何か不満があったら連絡してくれ。

                                オヌクール


短い手紙だったが、これでも十分に証拠になる。というよりも、アルベルト氏の焦燥具合から見ても自分から自白してくれそうだ。その後、鑑識の調べによってその手紙を書いたのがオヌクール氏だと断定され、アルベルト氏の自白もあって事件は解決した。サンチェスとアルベルト氏を連続で逮捕できたのだから、エクトル警部の大手柄だ。レオパルドもこれで信用された。大親友であるサンチェスの逃亡を手助けするどころか、サンチェス逮捕に最も貢献したのだから。国家警察からも正式に表彰までされた。そこまでにもレオパルドの成し遂げたことはすごいことなのだ。

今頃、サンチェスは拘留場だろうか。


チャールズ・サンチェス・ロペス

未来の大怪盗と謳われた一人の泥棒は、こうして泥棒人生を終えたのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

サンチェスが逮捕されたからと言ってこの小説は終わりませんのでご安心ください。

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