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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと海外観光
69/104

68.サンチェスと事の顛末

前回の解決編が少し長かったので、今回は短めです。

この話で本章は終わりですので、章と章のつなぎの話のようなものです。

サンチェスと事の顛末


サンチェスが外城田氏の悪事を暴き、見事に逃げおおせてから、少しして―――。


「では、その隠し部屋に案内頂きましょうか」

「今更、逃げるなんて考えるなよ、現時点でお前は自分の罪を白状してるようなもんだからな」

レオパルドと佐々木警部が外城田氏を無理やり立たせ、隠し部屋に案内させた。

刑事たちが佐々木警部の指示で隠し部屋の中を調べると、そこには今まで県警が疑いをかけても証拠不十分で不起訴となってきた事件の証拠がずらりと並べられていた。

中には額縁に入れられているものや、ショーケースの中に飾られているものもあり、確かにそれが外城田氏のコレクションなのだ、ということが見て分かった。


「しっかし、何故こうも事件の証拠を残しておくんだか……俺には分からんなぁ」

佐々木警部が骨を失ったかのように地面に蹲る外城田氏を見やる。


―――捜査の時は口調が荒くなるのか……


口調が徐々に粗暴になってきた佐々木警部をちらりと見ながら、レオパルドは思った。

サンチェスを逃がしてしまった、という負い目や怒りもあるのかもしれない。


「よし、この証拠は県警に持って帰って、逮捕状を請求しておこう」

長谷川警部が刑事たちに指示を出しつつ、証拠品として外城田氏のコレクションを押収していった。

レオパルドは、佐々木警部や長谷川警部の様子を見ている。

直接的に県警の関係者ではないレオパルドは特にこういう時、することがないのが実情だった。


逃げたであろうサンチェスの捜索も行われたが、既にどこに逃げたのかさえ分からなくなっていた。

二人であったことも有り、手掛かりくらいは残っているのではないか、と考えられたが、どこにもそんなものはなかった。




『外城田氏の組織犯罪が露見し、外城田氏は本日逮捕され、城門氏をはじめ、関係しているとされる上流階級の人間にも県警の捜査が入っています』

ラジオから聞こえてくるニュース音声をイヤホンから耳に取り入れ、サンチェスは満足げに笑みを浮かべる。

サンチェスと三駒は既に拠点としていたホテルでの生活の痕跡を処分し、すべての荷物をまとめ終わっていた。


これで、日本観光を最後にサンチェスの特殊な海外旅行は幕を下ろす。


「それで、三駒はスペインに来る、ということで本当にいいんだね」

サンチェスが最終確認をするため、三駒に声を掛けた。

窓から周囲の監視をしていた三駒はその顔をサンチェスに向け、笑顔のまま頷く。

「勿論です。それが私の覚悟ですから……」

そう言ってサンチェスをしっかり見据える三駒の表情には一切の曇りも迷いも見えなかった。

当初、スペインに帰国する、という話を聞いて、三駒は一瞬の間躊躇っていた。

パスポートもある、日本に残したものはない、とは言うが、スペインに行ってしまえば本当にサンチェスの怪盗業に深く関わることになる。

勿論、先日の事件の際にサンチェスについて行ったというだけで、サンチェスの怪盗業に手を染めてしまったのは間違いない。しかし、共犯者ではあるが、まだ片足を突っ込んだ程度。

県警にも顔だけが知られているのみだ。ここから海外逃亡でもすれば逃げ切ることのできる可能性は低くない。

サンチェスだって、その選択肢も三駒に提示し、それでもスペインに来るのか、と尋ねた。

しかし、三駒の答えは終始一貫して変わることがなかった。

一瞬の躊躇いに反して、それから先に考えを揺らがすことは一切なかった。

だから、サンチェスも三駒を連れてスペインに行く、という判断をした。それが三駒の人生を確実に狂わせるとしても、それが本人の意思であり、覚悟である。

その覚悟に触れては、サンチェスも三駒を連れていくことを否とすることが出来なかった。



こうして、サンチェスと三駒は帰国する―――。

ご読了、ありがとうございます。

前書きではこの話で本章が終わり、と書きましたが、本編とは別にもう一話、番外編を投稿します。

番外編を投稿し終わった後、「殺すしか能がない最凶の権能を手にした令嬢」の本編の執筆に着手しようと考えています。そちらの一章が終わるまで、サンチェスの本編投稿は一旦止まりますが、ぜひどちらの小説もよろしくお願いいたします

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