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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと海外観光
56/104

55.ICPO、来たる

ICPO、来たる


サンチェスを逃したのち、セドリック警部とレオパルドは失意を抱いてフランス国家警察へと帰還していた。

良い結果を持って帰ってこれなかったことに、レオパルドとセドリック警部は落胆していた。

レオパルドとしては、サンチェスだとしても来たことのない場所ならば隙を見せると考えていたのだが、そういうわけでもなかったようだ。

フランスの地理については人一倍詳しいセドリック警部がついていながら、このあたりの地理をあまり知らないはずのサンチェスに負けてしまった、というのはレオパルドらの悔しさを引き出すのに十全な理由だった。


セドリック警部が失意落胆している中、周りの刑事たちはどうすればいいのかわからなかった。

セドリック警部同様現場に向かっていた刑事たちは、自分たちにはセドリック警部を慰める資格など無い、と慰めるのを諦めていた。

そして、いつもならば厳しくも優しく自分たちを導いてくれていたはずのセドリック警部が落ち込んでいる、というのは刑事たちにとってかなり新鮮なことであったため、こういう時にどうすればいいのかについては知識がないというのもあった。



「――警部……!? 今呼んできますから!」

「大丈夫だ。わざわざ呼び出すこともない。自分から出向く。」

「いや、ですから………」


セドリック警部のいる部屋の外の廊下で、刑事たちの喧騒に紛れて、そんな問答が聞こえてきた。

そして、何が起こっているのかを刑事たちが推測しようとするよりも先に――


「ここにセドリック警部はおられるか!」

部屋の扉が開けられ、快活な男性の声が響き渡った。

名を呼ばれたセドリック警部はというと、先ほどまで落ち込んでいたのが嘘かのようにして素早く立ち上がると、杖を支えに名を呼んだ人物のところへと歩いて行った。

警官たちは、先ほどまで落ち込んでいたセドリック警部がいきなり普通に行動し出したため、あっけにとられていた。

しかし、それと同時に納得もしていた。

セドリック警部は警官として、国家警察の一員としての責任感が人一倍大きい。

そのせいで今回はサンチェスを逃して落胆していたわけだが、逆に言えばその責任感を利用してセドリック警部を動かすこともできたのだ。

実際、セドリック警部は突然の来客に対してもすぐに行動している。



「私がセドリックですが、何か御用でしょうか?」

セドリック警部の前に立つのは高身長の男性。

しかし、その姿はフランス人には見えない。また、サンチェス関連で来る可能性のあるスペイン人でもなかった。


「私、日本警視庁捜査三課、長谷川と申します。サンチェスの事件を担当するため抜擢されまして、ICPOより派遣されました。」

セドリック警部の前に立つ男、長谷川と名乗る彼は、ICPOよりサンチェスを逮捕するために派遣されたまさに救世主であった。

本当ならば彼も日本警視庁捜査三課での職務があり、フランスへ出向くことなどなかった。

しかし、長谷川警部の圧倒的手腕を理由に、ICPOより抜擢され、サンチェス逮捕のために動き出すこととなったのである。

ICPOは警察機関を統率する国際的組織ではあるものの、実際の逮捕権などは持っていない。

そのため、ICPOの職員が直々にサンチェス逮捕に乗り出すことなどは不可能である。

それでも、ICPOとしては国際的犯罪者ともなってきたサンチェスについての相談をスペイン国家警察から受けておいて自分たちには何もできないから、とすますこともできなかった。

それで、ICPOでの職務経験もある長谷川警部を抜擢し、サンチェス事件を担当させたのである。



しかし、ICPOの力というのは警察機関の上層部にのみ働くものである。

ICPOは警察機関を統率するものの、現場経験の多そうなイメージは持たれない。

実際には警察機関での経験を持った人物がICPOになることだってあるのだが、そのようなことを刑事たちが知っているとも限らない。

そして、現場経験のなさそうな人たち相手に、現場の大変さを知り尽くす刑事たちが反感を抱かないはずもなく、刑事たちはICPOに対してそこまでいい印象を持っていなかった。

そのため、長谷川警部に対する印象もよくはなく、刑事たちは近くにいる者同士で長谷川警部のことをひそひそと話していた。



「まあ、はじめはこういうものか。外国からの刑事なんて受け入れられるわけもないな。」

長谷川警部は刑事たちの様子を見ながらそうつぶやいた。

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