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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと海外観光

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50.サンチェスは国際犯罪者

サンチェスは国際犯罪者


レオパルドがセドリック警部と共に秘密の話し合いをしているころ、サンチェスは次の狙いを定めていた。

サンチェスは、今のところレオパルドがフランスに来ていることこそ知らない。

まあ、いつかは来るのではないかという予想はたっていたが、今来ているとは思っていなかった。


そして、サンチェスは未だに気づいていない。

レオパルドがセドリック警部に会いに来た本当の意味を。

サンチェスを逮捕するために水面下で蠢いている新たな陰謀を。





「レオパルドさん、サンチェスからの予告状が来たようです。」

「そうですか、では今から国家警察に向かいます。」


そんな会話をセドリック警部とレオパルドは電話にて交わしていた。

レオパルドはセドリック警部との電話を終え、携帯電話を懐にしまうと出掛ける準備を始めた。

その数分後、レオパルドはあるアパートから出てきた。

レオパルドがここのアパートを一時的に借りることにしたのは、サンチェスと同じような思考からだ。

フランスにいる期間が分からない今、それならいっそフランスにも拠点を作るつもりで個々のアパートを借りたのだった。

しかし、レオパルドの思考は当人の予想以上にサンチェスに似ていたようだ。


レオパルドは、自分が借りているアパートにサンチェスも一時的に居住していることを知らない。

流石に同じアパートを借りるとは思っていなかったのだ。

レオパルドもサンチェスも、このアパートを選んだ理由はそこまでなく、適当に決めた。

そのため、誰が住んでいるとかそんなことは調べていなかったのだ。

レオパルドだって、そこに住む住人を調べていたらサンチェスの存在にも気づけていたのかもしれない。


サンチェスの気配も感じないまま、レオパルドはサンチェスの一時的な本拠地を後にした。





セドリック警部はレオパルドと机を挟んで座っていた。

先ほど、サンチェスからの予告状を確認したところだ。


サンチェスの予告内容としては、フレデリク氏の所有する、宝石を盗む、というシンプルなものだった。

そして、予告日は今から四日後である。

前回の事件からそこまで時間がたっていないのだが、早くも事件が起こるのだろう。

サンチェスとしても、フランスにいられる時間は限られているため、そこまで長期的な計画を立てていない。

それこそ、数日間隔で事件を起こす気なのだ。


セドリック警部とレオパルドも、サンチェスの考えにはある程度気付いていた。

そして、その対策もしっかり立ててある。

対策案は、極秘で進められ、今のところ知っているのはスペイン国家警察の上層部、フランス国家警察の上層部、レオパルドとセドリック警部、その他複数と言ったところだ。

ほとんどの人物はそのことを知らないし、サンチェスはもちろんのこと知っているわけがない。


かなり極秘で進んでいる計画だが、その分サンチェスを逮捕することだってできるかもしれないほどに上手くいく可能性の高い計画でもあった。

その計画の主軸となっていたレオパルドは、特にその計画を信頼していた。

しかし、不安要素だって少なからずある。

その計画を遂行するには、少なからず時間が必要なのである。

それこそ、数日単位の時間が。

その間にサンチェスがフランスを出てしまう、または姿をくらましてしまった場合は対応が難しくなってしまう。

そうなってしまったらかなり厄介になってしまうのだ。

それで、レオパルドはどうにかその計画を遂行できるようになるまで、自分とセドリック警部で足止めをしておこうとしていた。



「本当に間に合うんでしょうか。」

しわだらけの顔にさらにしわを刻みながら、セドリック警部がレオパルドに問う。

レオパルドは、すぐにそのことが今水面下で蠢いている計画のことだとわかった。

そして、その計画に絶対的な信頼を置いているレオパルドからしたら、その答えは一つしかなかった。


「どうでしょうね。間に合うかはわかりません。それでも、国を治める王よりも世界を治める神の方が権威を持つと同様に、上に立つ者ほど強く、勇ましくなり、その権威も強くなっていきますから。間に合うように私たちが足止めするだけですよ。」

レオパルドは、第三者が聞いたら意味を理解しずらいようなたとえ話を使った。

しかし、状況を理解しているセドリック警部はそのたとえ話を理解することが出来た。

セドリック警部は、レオパルドの言葉で少しは安心感を取り戻した。


こうして、士気を取り戻したセドリック警部とレオパルドはもう一度作戦会議を再開した。




 ◇ ◇ ◇ 


サンチェスがフランスにいるであろうことが、レオパルドの情報網からわかった。

レオパルドは、すぐにスペイン国家警察の中で、サンチェスの事件を担当していることの多いエクトル警部に連絡した。

二人はその場ですぐに会談することを決定、行動に移した。

彼らは、それぞれ忙しい人たちではあるのだが、サンチェスに関連することであれば事情が変わってくる。

彼らの主な仕事内容は、サンチェスの逮捕とスペイン国内の治安維持である。

サンチェスに関する情報であれば、多ければ多いほど有利となる。

集められるだけ集めたい、というのが彼らの本心であった。



「エクトル警部、サンチェスは既にスペインを出て、フランスに入国していることが分かりました。」

レオパルドは、スペイン国家警察に到着し、エクトル警部と挨拶を交わしたのち、すぐにその話題に入った。

エクトル警部もすぐに話を聞く体勢に入る。


レオパルドは、今持つ情報すべてをエクトル警部に開示した。

しかし、サンチェスがどこを隠れ家にしているかなどの詳細情報はレオパルドの情報網を駆使しても把握することは出来なかった。

しかし、この状況でも既に決定された事実がある。


サンチェスは、もともとスペインで事件を起こし、スペイン国家警察から追われていた。

だから、サンチェスがどれだけ大胆な方法で窃盗を行ったとしても、サンチェスにはあり得ないことだが、どれだけの人を殺したとしても、凶悪犯罪者の枠にとどまる。

しかし、この度、サンチェスがスペインの窃盗犯という一つのくくりを抜け出し、フランスでも事件を起こそうとしている。

今のところはフランスで事件を起こしておらず、スペインでも犯罪しか発覚していない。

これから、サンチェスがフランスで事件を犯した場合、サンチェスはもうスペインの窃盗犯でなくなる。

スペイン国家警察とフランス国家警察。その二つの警察機関から追われているサンチェスは、国際犯罪者となるのだ。


――国際犯罪

犯罪行為がある国の中の法だけに留まらず、他国の法にも干渉し始める場合、その行為を国際犯罪という。


サンチェスの行動は、あと少しで国際犯罪の定義に足りる。



「これは、国際犯罪にも値しますので、ICPOにも連絡した方がよさそうですね。」

エクトル警部は、レオパルドの話を聞いてすぐに判断を下した。



国際警察機関――通称インターポール

世界中の警察機関を統括し、その情報を統制する、国際的な警察組織である。


エクトル警部はインターポールに連絡した。


『エクトル警部もご存じの通り、我々インターポールは逮捕権を持ちません。ですが、その代わりとしてある刑事を派遣しましょう。我々が知る中で、最も優秀な刑事と言っても過言ではない人物です。』

エクトル警部が事情を話したのち、インターポールの職員はそう言った。





『国際警察機構である、インターポールでの職務経験も併せ持つ、日本警視庁が誇る逸材、長谷川警部に向かってもらいます。』

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