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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと海外観光
48/104

47.サンチェスと老人

近頃は遅れることが多くなっています。すいません。

春に向けて新作を作っているので、春までは今まで通り遅れてしまうことが多いと思います。

気長に待っていただければ幸いです。

サンチェスと老人


セドリック警部は、三十人の警官を連れて、アルフレッド氏の邸宅に0来ていた。

ここが、サンチェスからの予告状に記されていた場所なのだ。

警視総監やセドリック警部は、サンチェスという泥棒が書いた予告状を信じていいのか不安だったが、レオパルドやエクトル警部から、予告状に書かれていた日にちや場所が違っていたことはない、と聞いてそれを信じることにした。


アルフレッド氏は、ある大きな工場の工場主で、その工場が成功したことによってその工場で作られた製品を売り出す会社を設立。今では会社の社長として働いているのだ。

しかし、アルフレッド氏はそれだけの人物ではない。

サンチェスが狙ったことから、大体の察しがつくように、アルフレッド氏もある罪を犯しているのだ。

アルフレッド氏は、工場の製品をある程度高値で売っているのだが、その製品は欠陥品だったり、コスト削減のために何らかの要素を諦めたものとなっている。

それでアルフレッド氏が成功し、大金持ちになったといっても過言ではない。

それでも、フランス国家警察はそのことに気づいていない。

アルフレッド氏はそのことをうまくカモフラージュしているため、今までにそのような商品の欠陥などの苦情はあったとしても、詐欺として起訴されたことはない。

それほど、アルフレッド氏はカモフラージュ工作に努めているのだ。

その努力をそのまま自分の会社の運営などに使ったらよかったのではないか、とも思うが、そのあたりはもう過去のことだ。



セドリック警部は、窃盗犯担当部署なので、部署が違うこともあってアルフレッド氏が詐欺を犯していることに気づいていなかった。

今も軽く談笑しながら作戦会議をしていた。


そして、セドリック警部の横には一人の男がいる。

セドリック警部の隣にいることもあって、とても若く見え、実際に二十代と若かった。

サンチェスやレオパルド、エクトル警部と同じくらいだ。

あまり前に出ようとはせず、大人しくしているようにも見えるが、そのまなざしは周りを観察しながら鋭く光っていた。

アルフレッド氏も、彼の存在は気になっていたが、そのことにはあまり触れずに進めていった。

そして、大体の作戦会議が終わって少し雑談のようになったころ、ちょうどいいと、アルフレッド氏はずっと気になっていた彼の話を始めた。


「そういえば、セドリック警部、隣の男性は誰でしょうか。普通におられたのですが、警察の方にも見えませんし。」

そこで、セドリック警部ははっと気づいたかのようにしてああ~、と声を漏らした。

「こちらは、私立探偵のジェームズ君です。老いぼれとなった私を支えてくれている心優しい若者ですよ。」

ジェームズは、セドリック警部の誉め言葉に、いえいえ…と謙遜しながら改めてアルフレッド氏に挨拶をしておく。


「私立探偵のジェームズと申します。今回の事件ではセドリック警部に協力する形でかかわらせていただきますので、よろしくお願いいたします。」

ジェームズはそういうと流れるように礼をして一歩下がった。

アルフレッド氏も、セドリック警部の紹介を受けて、納得した。



「私は、セドリック警部を通してかかわった事件では紹介していただいていたので、ご存じだと思っていたんですが、知りませんでしたか。」

ジェームズは、朗らかに笑いながらそう言った。

その温かい笑顔にアルフレッド氏も普通に返してしまったが、あとからあることに気づく。

事件でかかわった人物なら自分を知っているはず。だからアルフレッド氏なら知っていて当然、といった感じにジェームズは言った。

つまり、今までに事件でかかわった記憶がある。または事件でかかわってもおかしくない人物だと認識されているということだ。

アルフレッド氏としては事件でかかわった記憶はないので、きっと後者だろう。

アルフレッド氏は、自分のしていたことを思い出しながら心臓がバクバクと動くのを感じていた。

ジェームズは今も温かく、普通に笑っていたが、アルフレッド氏からすればそのまなざしは獲物を捕らえようと潜む肉食獣のもののように見えた。

アルフレッド氏はセドリック警部に気づかないようにしながら一人震える。



そのまま、作戦会議は無事に終わった。

アルフレッド氏は会社の仕事があるということで、既に邸宅を後にしている。

アルフレッド氏の補佐役である執事が、今だけはこの邸宅を管理している。


「アルフレッド氏は、何かを隠しているみたいだな。」

セドリック警部は、ジェームズと二人になってからそう言った。

ジェームズは驚く様子を見せずに、セドリック警部の考えを肯定した。

ジェームズはもともとからアルフレッド氏に何らかの隠し事があることを知っていた。

それがなんであるかなどの具体的な情報は手に入れていなかったが、人には言えないような何かを隠している、と信じていたのだ。

それで、自分がセドリック警部に紹介された際に、一言付け足すことで鎌をかけておいた。

実際にアルフレッド氏はその罠にかかってくれたし、その時に動揺していたのをセドリック警部が気付いたことによって、情報源などを知らせずともアルフレッド氏に疑惑の目を向けることが出来た。

私立探偵ではあるものの、フランス国家警察のセドリック警部に協力しているジェームズは、今でこそ様々な経緯があってセドリック警部と協力し、事件を捜査する関係になっているが、自分の情報源などは漏らしたことがない。

どれだけセドリック警部を信頼しているとは言っても、私立探偵というものはクライアントとの信頼関係が大事な仕事だ。

そう簡単に情報を流すわけにはいかないのだ。

そして、それだけではない。

ジェームズの実家は、名家であり、ジェームズの情報源の中には、その実家も入っている。

元々はジェームズが実家の支援も受けながら始めた仕事である、私立探偵。

今でも金銭的な支援が無くなったとしても他の点で支援を受けている可能性はある。

実際に、ジェームズは探偵業で儲けたお金こそほとんどが実家のお金としている。

そして、その見返りとして実家はジェームズが必要とする人材や、情報源を提供しているのだ。

時には、その実家が情報源となることだってしばしばある。

そんな状況なのだから、いくら信頼できるセドリック警部とは言えど、ジェームズが簡単に情報源のことを口にすることは出来ないのだ。

口にしたが最後、最悪の場合ジェームズの探偵会社だけではなく、ジェームズの実家の信頼までもが地に落ちてしまう。

そのようなことになるのは、ジェームズだっていいことではなかった。

実家が名家であることによって、幼少時代に様々な苦労をしてきたジェームズだったが、そのようなことを理由に、今頃家族を恨んだりはしない。

そもそも、直接的な害を被ったわけではないのだ。

まあ、その話はまた今度ということにしておこう。



「今は証拠がないのでどうにもなりませんが、今回のことが収まったら一旦詐欺担当部署の刑事たちを送り込むのもいいかもしれませんね。まあ、このあたりのことは私も口出しできませんが。」

そういって、ジェームズは怪しく笑う。

一応、今のところ証拠がない、というのは本当のことだった。

本当ならばもう少ししっかりと証拠などを集めてからアルフレッド氏に接触したいと考えていたジェームズだったが、サンチェスの予告状によって、予定より早く接触することになってしまった。


「まあ、予定が前倒しになっただけだ。」

ジェームズの独り言は誰にも拾われることなく空気に溶けて消えていった。

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