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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと海外観光
47/104

46.サンチェスとフランス

今までになく間が空いてしまい申し訳ありません。

いろいろと忙しいため、これからも何かと更新が遅れると思います。

申し訳ありません。

サンチェスとフランス


フランス国家警察。

フランスの治安を守るための警察組織の中でも、中枢にあたるその場所は、まさに混乱に陥っていた。

スペインのレオパルドと名乗る人物から、連絡があったのだ。

今、フランスにスペインで活動していた窃盗犯がいる可能性がある、と。

それだけなら、そこまで気にすることでもないのだろう。

しかし、レオパルドは今までのその窃盗犯、サンチェスの起こしてきた事件や、その手口、国家警察との勝敗などもフランス国家警察に対して伝えた。


はじめは、ただのいたずらだろう、と刑事たちも相手にしようとしなかった。

まあ、軽く警戒しておけば大丈夫だろう。 くらいの感じでいたのだ。


そこに、スペインでベテラン警部と有名なエクトル警部から、FAXを通して先ほどレオパルドが言っていたような内容と、この人物の事件が起こった場合には、必ずベテランの刑事が担当してほしい、というメッセージが送られてきた。

レオパルドの言っていた情報の信憑性は、一気に上がった。


フランス国家警察では、サンチェスの担当刑事をだれにするかについての会議が行われた。

国家警察長官や、各部署の警視が参加したその会議は、約二時間続き、エクトル警部が言っていたベテラン警部は、誰であるのか、ということを話しあった。

レオパルドの話、エクトル警部の話を総合するとフランスにいるという窃盗犯サンチェスは、かなりの手慣れの様だ。

国家警察の中でも、有能な刑事を送り込まなければ、サンチェスにとっての有象無象にしかなりえないだろう。

フランス国家警察の上層部は、今までの実績を中心に、サンチェスとの相性なども考慮に入れながらサンチェスを担当する刑事を決定した。




フランス国家警察に於いて、彼をおいてベテラン警部はいないだろう。

そう噂される人物がいた。

スペイン国家警察のエクトル警部とは、また別の意味でのベテラン警部だ。

というか、実際はエクトル警部は真の意味でのベテラン警部ではない。

長年の経験を伴っていないからだ。

エクトル警部は、いまだに二十二歳である。

普通なら、これほどに若くして警部に昇進するなんてことはあり得ない。

しかし、エクトル警部はそれをやり遂げた。

それに、エクトル警部は、そこまでの期間国家警察で働いていたわけではないが、人とは比べ物にならない量の事件を担当してきた。

それで、人々はエクトル警部の努力を称するためにベテラン警部と呼んでいるのだ。

そして、その人物は、長年の経験を持ち、数々の事件を経験した、まさにベテラン。


〝セドリック・クレール・ラバス〟

フランス国家警察の窃盗犯担当部署警部であり、もうすぐ定年だというのに今も犯人を検挙し続ける傑物。

サンチェスの担当に選ばれたのは、彼だった。

会議では、真っ先に彼の名前が挙げられた。

しかし、はじめは彼の年齢を考えて、そこまできつい仕事をさせるわけにもいかないのではないか、ということで他に任せようという流れだった。

そこに、セドリック警部自身が是非サンチェスの事件を担当したいと名乗り出たのだ。

悩んでいた上層部も、自分から名乗り出てくれるなら願ったりかなったりだ、と彼に事件の担当を許可・命令したのだった。




セドリック警部は、手始めにある人物との連絡を試みた。

その人物は、傑物を傑物たらしめている人物である。

セドリック警部の実力ももちろんあるのだが、その人物の助力がなければここまでの実績を上げることはなかっただろう。

その人物がいたからこそ、今のように年をとっても昔のように犯人を検挙することが出来たといっても過言ではない。


セドリック警部は、その人物に今回のことを話し、助力を依頼した。

その人物は、いくつかのことをセドリック警部に確認したうえで、その依頼を快諾した。





数日後、フランス国家警察にはある一通の手紙が送られてきた。

表の中心に予告状、と書かれたまさに、予告状である。

これがサンチェスによるものであることは明白だった。


すぐにセドリック警部が呼び出された。

セドリック警部は、ステッキの音を鳴らしながら警視総監室へと向かう。

ステッキの音が、静寂に溶けて消えていった。


「失礼いたします、セドリックでございます。」

セドリック警部は警視総監室の扉をノックし、中に入った。

そこにはフランス国家警察の警視総監に加え、セドリック警部直属の上司である、警視正もいた。

セドリック警部は、軽く一礼をした。

警視総監は、単刀直入に本題に入った。


「ついに、少し前に言われていた泥棒からの予告状が届いた。」

警視総監からそのことを言われたセドリック警部は少なからず驚いた。

長年の経験を積んだことによってほとんどの場合、驚いていても表情に出さないことが出来るようになっているセドリック警部だったが、目を見開いているその様子からは驚いていることがよく分かった。


警視総監は、セドリック警部にサンチェスからの予告状を手渡した。

セドリック警部は、表を見て、裏を見て、ある程度観察した後、警視総監のほうに視線を戻した。

「今回の事件については、担当はセドリック君、君に任せる。警官は、大体五十人までなら連れていける。警備体制を考えたうえで、連れて行くと良い。」

警視総監はそう言った。セドリック警部は何度か頷いて了承の意を示した。

セドリック警部は、一礼すると、退室しようとした。


「セドリック君。」

しかし、警視総監はセドリック警部を呼び留めた。

いつもなら、セドリック警部が退室するときは警視総監も何も言わない。

しかし、今回だけは警視総監もセドリック警部に伝えたいことがあったのだ。

セドリック警部は、警視総監に呼び留められたことを不思議に思いながら振り返った。

すると、いつもに増して厳しい表情の警視総監がいた。


「今回の事件、我々が相手にするのはわざわざ予告状なんかを送り付けてきている泥棒だ。しかも、スペイン国家警察からの情報もある。何があろうとも、我々が泥棒を逃せば非難は免れないだろう。絶対に逮捕せよ。期待してるよ、セドリック君。」

セドリック警部の表情は、驚きで塗りつぶされた。


――警視総監からの期待

それは、普通にうれしいものではあったが、それ以上の意味があるものだった。

フランス国家警察の警視総監である、アンセリム・バルビエは、今までに人に対して期待したことがなかった。

少年時代にかなりのことがあったとか噂されているが、その真実はわかっていない。

なんにせよ、今のところ周知の事実となっていることは、アンセリム警視総監が人に対して期待することは極端に少ない、ということだ。

というか、フランス国家警察の人間、今も働いている者からすでに退職したもの全員合わせても、アンセリム警視総監に期待されたことのある人間はいない。

アンセリム警視総監に期待される、というのは奇跡のようなものだとされてきており、それを成し遂げられたものはそれまでに前例のないほどの優秀な人間であるとされている。

セドリック警部は、それを成し遂げたのだ。


「身に余るほどのお言葉でございます。」

セドリック警部は、しゃがれ声でそういうと、深く礼をして、今度こそ退室した。

その背中は、いつも以上にまっすぐに伸びていた。


フランス国家警察関連で出てくるキャラクターたちは第六章以外ではほとんど出てきません。

しかし、アンセリム警視総監だけ、少しだけ出てきます。

アンセリム警視総監の過去を番外編にするかどうかを悩んでいるので、皆さんのご意見をお聞かせ願います。

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