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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
狙われしサンチェス

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43/104

43.殺人と窃盗

かなり間が空いてしまって申し訳ありません。

第五章はこの話ともう一話、そして番外で終わりの予定です。

今年中には五章を完結させるつもりですので、知っておいていただければと思います。

殺人と窃盗


アマド刑事は極度の緊張状態に置かれていた。

サンチェスからの予告状を受けた直後はサンチェスを始末するいいチャンスだと考えていたのだが、少し時間がたってしまった今ではその時の勢いも奪われ、不安につぶされていた。

エクトル警部やエドワード警視はいつもと様子の違うアマド刑事を心配したが、アマド刑事は大丈夫だとしか言わないので、どうしようもなかった。

それに、エクトル警部らにはアマド刑事を疑う心もあった。

スペイン国家警察長官から、直々にエクトル警部とエドワード警視に命令があったのだ。



「エクトル警部、―――国家警察長官がお呼びです。」

アマド刑事宛てにサンチェスの予告状が来たことをアマド刑事に説明し終えてから数十分後のことだった。

エクトル警部は国家警察長官に呼び出された。

エクトル警部は何があったのだろうか、と思いながら長官室に向かった。

「失礼いたします。お呼びでしょうか、―――長官。」

エクトル警部が長官室に入ると、中にはエドワード警視が先にいた。

エクトル警部は礼をしてから中に入った。

長官はエクトル警部とエドワード警視を見て、言った。

「今まで、サンチェスが予告状を出した相手は何らかの罪を犯している。アマド刑事は国家警察の刑事だ。罪を犯しているとは考えたくないが、可能性はある。君たちは事件当日にアマド刑事に十分に警戒しておくように。何もなければいいのだが、何かあった場合はアマド刑事を逃がさんように。」

エクトル警部はアマド刑事が罪を犯しているかもしれない、ということに驚いたが、確かにそうだと思いなおす。

今までサンチェスが狙った人物は罪を犯していた、というのは今までサンチェスが起こした事件をすべて担当してきたエクトル警部はもちろんのこと知っている。

しかし、その可能性をアマド刑事にも当てはめられなかったのはやはり同じ国家警察の刑事である、ということが深く関係しているのだろう。

といっても、エドワード警視は少しその可能性も考えていたのか、長官にアマド刑事のことを言われてもそこまで動揺していなかった。

やはりそういうのは経験の差なのだろうか。

エクトル警部はアマド刑事とサンチェスの戦いに向けて、さらに力を入れ始めた。



そんなことがあったのだ。

今のところ、アマド刑事の様子だけ見れば怪しさしかない。

明らかに動揺し、おどおどしている様子だ。

今までサンチェスの事件でもそこまでおどおどしてはいなかった。

他人が狙われるのと自分が狙われるのでは天と地ほどの差があるのはわかるが、あれほどまでに動揺するものなのだろうか。

エクトル警部としてはその点が怪しく思えていた。

サンチェスが自分の悪事を暴いてしまうのではないか、と考えているからおどおどしているのではないか、エクトル警部はそう考えているのだ。

そして、その予想はまさに的中していた。

アマド刑事はサンチェスのことばかり考えていて気付いていなかったが、エクトル警部やエドワード警視はアマド刑事について真実に近づきつつあるのだ。

あとは、サンチェスがアマド刑事の悪事を暴けば、エクトル警部とエドワード警視が逮捕するだろう。



サンチェスは少しずつ警官として移動しながら、宝石の展示室に向かっていた。

今回は、宝石を盗むだけでない。

アマド刑事の悪事を暴かなければならないのだ。

しかも、サンチェスはアマド刑事と直接対決するつもりでいた。

文字通り、アマド刑事に直接悪事の証拠を叩きつけるのだ。

それには当たり前のことながらかなりのリスクが伴うだろう。

しかし、そうであってもサンチェスはやめるつもりはなかった。


そろそろ頃あいだ。

サンチェスはそろそろ国家警察及び、アマド刑事の前に姿を現そうと思っていた。

サンチェスとしては、普通に出て行ったのでは面白くない。

せっかくなら皆が驚くようなかっこよい演出もした方がいいだろう。


ボンッ

軽い破裂音が鳴り響く。

エクトル警部はその音を間近で聞いてはっとした。

アマド刑事もすぐそばにいる。

エクトル警部は他の部屋の見回りに言っているであろうエドワード警視とレオパルドに無線で報告をした。

エクトル警部とアマド刑事の前には煙幕が広がっている。

そして、その煙幕が消え去ったのちに現れたのはもちろんのことサンチェスだった。

サンチェスははじめ優雅な笑みを浮かべていたのだが、周りを見回して首を傾げた。

「エドワード警視とレオパルドはいないようですね…待った方がいいですか?」

サンチェスは当然というようにエクトル警部に尋ねた。

エクトル警部はサンチェスの様子に苛立ちを覚えたが、何と答えるのが良いかわからず、黙り込んでしまった。

サンチェスはエクトル警部の反応を見て「まあ、いっか。」と呟いた。

サンチェスは目線をエクトル警部からアマド刑事へと移した。

アマド刑事はサンチェスがこの部屋にいるというその状況だけで気絶してしまいそうになっていたので、サンチェスから目線を向けられて震えがさらに強まった。

そして、アマド刑事は驚くべき行動に出る。

アマド刑事はだっと走り出したかと思えば、宝石を手に取った。

エクトル警部は突然にアマド刑事が動き出したために驚いても反応することは出来なかった。

これがサンチェスの動きであったら反応できたであろうが、サンチェスの一挙一動に注目していたエクトル警部はアマド刑事にまで注目する余裕はなかった。


アマド刑事は宝石をそのままサンチェスに投げつけた。

文字通りに投げつけたのである。

その軌道はそのままサンチェスの頭辺りに向いていた。

普通に飛んでいけば間違いなくサンチェスの頭に当たっていただろう。

少なくとも、傍観者であったエクトル警部はそう思った。

しかし、サンチェスはいつだって常識破りな存在だ。

サンチェスは軽くその宝石をよけると、片手を伸ばしてキャッチした。

アマド刑事は投げた反動でそのまま床にへたり込んでいる。

エクトル警部は今がどういう状況なのかよくわかっていないようだった。

ただ、サンチェスに盗まれそうな宝石をアマド刑事がサンチェスに投げつけて盗まれたことはわかった。

そして、何故アマド刑事は急にサンチェスに宝石を投げつけたのか、と疑問も生まれた。

エクトル警部はどうしたらいいのかわからないようだったが、まずはアマド刑事の方を向いた。


「なんで宝石を投げたんですか!サンチェスに盗られてしまったでしょう。」

エクトル警部はアマド刑事に半ば叫びながら尋ねた。

アマド刑事は放心状態のようだったが、焦点の合わない目でエクトル警部を見ながら言った。

「何らかの方法でサンチェスを追い払おうとして……」

アマド刑事はそう言いながらまたふらふらとして倒れかけた。

エクトル警部は周りの警官に言ってアマド刑事を病院に緊急搬送させようかと考えた。

しかし、サンチェスの一言で阻まれることになる。

「ちょっと待っていただけますか、エクトル警部。アマド刑事にいくつか言っておきたいことがありますので。」

サンチェスの言葉に一旦エクトル警部は動きを止めた。

憔悴しきっているアマド刑事に何を言ってもわからないだろう、とは思ったものの、エクトル警部は一応のためにサンチェスの話を聞くことにする。

周りを警官で包囲しているのだから、逃げられる心配も少ないだろう。



「アマド刑事、あなたは過去に犯罪を犯したことがありますか?」

サンチェスの声で、アマド刑事の肩は目に見えて震えた。

エクトル警部は、アマド刑事が何らかの悪事を働いていたことに確信を持った。

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