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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
狙われしサンチェス
37/104

33.サンチェスと無事

いつもとは違う時間帯の投稿になります。

せっかくの祝日ですので、この小説が少しでも皆さんの祝日を彩れたら良いと思います。

サンチェスと無事


サンチェスはエクトル警部らがカードに気づく前に宝石の保管室に到着した。

あとはエクトル警部らがカードに気づくのを待つだけだ。

エクトル警部らが気付いてからは何が起きるかが分からない。

エクトル警部らがどう動くかがサンチェスにとっても大切なことなのだ。




「エクトル警部!見回りをしていた警官がこんなものを見つけました!」

各所各所を回って警備体制の隙が無いかを確認していたエクトル警部のもとに警官が走ってきた。

エクトル警部は警官からカードを受け取った。

そのカードは折られていて、中に書いてある文章はすぐには読めなかった。

そして、表面にも裏面にも何も書かれていないため、エクトル警部はそのカードだけを見てサンチェスからのものであることは断定できなかった。

エクトル警部は一応のためにアーロン氏のもとに一度戻り、レオパルドと共にカードを見ることにした。

エクトル警部にとってのレオパルドは今となってはかなり信頼できる人物となっているのだ。

少し前は泥棒であるサンチェスの大親友で幼馴染と言う明らかに怪しすぎる立ち位置だったレオパルドだが、今では国家警察の信用を得ることが出来ている。

それどころか、普通ならどれだけ信頼を得ようとも不可能であろう一般人の捜査介入まで許可されている。

レオパルドは一応探偵ではあるが、国家警察の人間ではない一般人だ。

それなのに、捜査に介入している。

エクトル警部はレオパルドの可能性を感じたのか、わざわざ国家警察の最高権力者である、スペイン国家警察長官にまで申し出て、レオパルドを国家警察にしないまでも捜査に参加させることを許可してもらった。

長官はエクトル警部の申し出にはじめは渋っていたが、エクトル警部があまりにも本気であったため、一旦それを許可した。

と言っても、レオパルドが不審な動き――例えばサンチェスに対しての情報漏洩など――をした場合はレオパルドはもちろんのこと刑罰に処し、そのことを見抜けなかったエクトル警部も少なからず解雇されることになるのだが。

それが長官がレオパルドの捜査介入を許可した条件だ。

エクトル警部はそんな条件を付けられても、レオパルドを操作に参加させることを頼みこんだ。

それほどに、レオパルドに可能性を感じていたのであろう。



「エクトル警部、戻られましたか?」

エクトル警部がレオパルドとアーロン氏が談笑する応接間につくと、はじめに反応したのはレオパルドだった。

エクトル警部は自分も席に着き、カードを見せながら事情を説明した。

レオパルドは興味深そうにカードを見ながらエクトル警部の話に聞き入っていた。

そして、エクトル警部が大体のいきさつを話し終えたころ――いきさつと言ってもそこまで長いものではない――レオパルドはカードを観察し出した。

そして、やっとそのカードの内容を確認することとなった。

なぜここまで中身を見なかったのかが分からないのだが、それもまあ、よくあることなのかもしれない。


カードの内容

今日は私のせいで皆さんを集めてしまい申し訳ございません。

特に、レオパルドについてはわざわざ予定を空けてもらって申し訳なかったね。

ということで、私の我儘で今に至るわけですが、私は既に宝石の保管室に到着しております。

と言っても、このまま宝石を盗んで帰るというのも面白くありません。

この部屋は目立たせないようにするためでしょうか、警官が一人も配置されていませんので、ただ来て、ただ盗んで、ただ帰るということになってしまいます。

それではここに来た意味と言うものがありませんので、皆さんにはこちらに来ていただきたいと思います。

これもまた私の我儘であることは承知の上ですが、是非、こちらに来ていただければと思います。


エクトル警部とレオパルド、そしてアーロン氏はこのカードを見て驚いた。

まず来るのが驚きである。

どうやって宝石の保管室を探し当てたのか。

やはりレオパルドの幼馴染だけあって、サンチェスの推理力もかなりのものなのだろう。

しかも、ご丁寧なことにカードの下の方にはアーロン氏の邸宅の見取り図が書かれており、宝石の保管室には赤でバツ印がつけられている。

エクトル警部らをカードでおびき寄せて宝石の保管室を知ろうとしているというわけではないようだ。

ということで、エクトル警部らはこれからどうするかを相談し出した。

今すぐにでもサンチェスを逮捕するため宝石の保管室に行くべきなのか、それともすぐには行かないでしっかりとした作戦を練ったうえで行くべきなのか。

それはエクトル警部らにとって最も悩ましい点だった。

その点さえ決まれば行動方針が決まるので、その後の行動も決めやすくなる。


「これまでのサンチェスの動きから今回の動きを予想して動くのが最も効果的だとは思うんですけど…」

レオパルドが言った。そして、レオパルドの視線は周りの警官隊へと向かう。

「作戦会議、っていうのも気を付けないといけないですしね……」

エクトル警部はレオパルドの意図を汲み取って同じく警官隊へと視線を飛ばした。

周りの警官隊はなぜ自分たちが見られているのかわからないようで、首をかしげていた。

エクトル警部とレオパルドはサンチェスが警官隊の中に紛れ込んでいる可能性を危惧しているのだ。

もしそうだとしたら、サンチェスが自分たちの作戦会議を聞くことになる。

カードに書かれていることとしては、今もサンチェスが宝石の保管室にいるということだが、それが本当かはわからないのだし、サンチェスのスピードを考えればエクトル警部らの様子をうかがったのちに宝石の保管室に戻ることだって可能だろう。

そう考えると、ここにいる警官隊さえも全員が怪しく思えてしまう。

サンチェスがいつ来るかと警戒しながらきょろきょろとする警官。

伝令で様々なところを走っているのか、現れたり消えたりするような警官。

普通なら怪しくないように思える行動も、今ではすべてが怪しい行動に見えてくる。

エクトル警部らは疑心暗鬼になりながらも作戦会議を始めた。


「ここは、すぐにでも宝石の保管室に行くのが得策と考えます。」

エクトル警部はまずそう言った。レオパルドは興味深そうに話を聞いている。

「どうしてそう思われるんですか?エクトル警部。」

アーロン氏が口を出した。アーロン氏は作戦会議の中でも一応の発言権を持つ。

この邸宅の家主であるためだ。

「前に、サンチェスが同じようなことをしていたんですよ。その時はすぐに向かってサンチェスの罠にかかりましたね。」

エクトル警部はアーロン氏に答えて言った。アーロン氏はエクトル警部の返答に疑問が残るようで、首をかしげている。

「それなら、逆にしっかりとした作戦を立ててから向かう方がいいという結論に至りませんか?その方が前回の失敗を生かせると思いますけど……」

アーロン氏は少し遠慮がちに言った。さすがに国家警察の警部を相手に反論するのは気が引けたのだろう。しかし、エクトル警部は一切気を悪くする様子もなく言った。

「その時はすぐに行って罠にはまった、というのはサンチェスだって覚えているはずです。なら、今回はしっかり作戦を立てたほうがいい、という決断を私たちがする、という予想も立てるはず。ならば、こちらは前の時同様急いで行くことでサンチェスの虚をつくのが得策だと思うのです。」

エクトル警部がそういうと、アーロン氏は納得すると同時に驚いていた。

レオパルドも頷いている。エクトル警部の案に賛成しているとみていいだろう。

エクトル警部だって伊達に国家警察警部をしているわけではないのだ。

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