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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
狙われしサンチェス
34/104

30.サンチェスを狙う人物

かなり間が空いてしまって申し訳ありません。

中間テストも終わりましたので、やはり不定期ではありますが、少しずつ投稿していこうと思います。


サンチェスを狙う人物


エクトル警部はサンチェスの思惑もわからないままアーロン氏の邸宅に向かうことになった。

最終的に知能犯担当部署から尋常ではない覇気を放っていた刑事は連れていかれることとなった。

アーロン氏が詐欺を行っているかもしれないという情報が入ったからであった。

アーロン氏は宝石店のオーナーをしている。

アーロン氏の宝石店はまあまあの有名店で、大繁盛だった。

だからこそ、ナイト・クリスタルを所有できるほどの大金持ちとなったのだ。

しかし、悪いうわさも少なからずある。

アーロン氏の売った宝石のうち、いくつかは模造品の宝石なのだ。

アーロン氏はもちろん、宝石をわざと偽物にしたと言う容疑で裁判にかけられた。

では、結果はどうだろうか。

全ての裁判でアーロン氏の勝訴だった。

どうしてこうなったのかというと、原告が何らかの前科があるもので、証言に信憑性が低いのではないか、という判断がなされたのである。

そしてもう一つ、原告はアーロン氏に売られたはずの模造品の宝石を所持していないのだ。

原告は毎回なぜ無いのかわからない、といったようなことを言っているが、先述のように前科者のため、あまり信用されていなかった。

こうして毎回の裁判でアーロン氏は勝訴していた。


しかし、セフェリノ警部はそうは思っていなかった。

セフェリノ警部はアーロン氏についての事件を担当したことはなかったが、刑事らの話などから幾度か耳にして軽く知っていた。

そして、毎回アーロン氏に訴えを起こすものに前科があるというのは偶然にしては出来すぎていることに気づいていた。

そして、セフェリノ警部はそのことをアマド刑事にもいっていた。

アマド刑事もセフェリノ警部に同感で、今回エクトル警部とレオパルドのついでではあったが、アーロン氏のことを調べられることを楽しみにしていた。

アーロン氏は完全に黒だ。

アマド刑事はそう確信していたからである。



アマド刑事はアーロン氏の邸宅に到着してすぐに捜査を開始した。

そして、エクトル警部はサンチェス対策のため、アーロン氏との打ち合わせに向かっていた。

しかし、アーロン氏の邸宅は迷路のようになっている。

広くてそう簡単には目的の場所には行けないのだ。

しかも、アーロン氏はこんなことを言い出した。

「この家には宝石展示室がないんですよ。さて、どこに宝石を置いてあるでしょう。」

エクトル警部とレオパルドに対してのなぞかけの様だ。

エクトル警部は平然としていたが、頭の中では考えを巡らせていた。

こんなことで躓いているようでは国家警察としての面目が立たない。

そう思いながらも、あまりそれらしい可能性は考えつかないエクトル警部であった。


「アーロンさん、一つ、お聞きしてもいいでしょうか?」

レオパルドは微笑を浮かべながらそう言った。

エクトル警部はこの表情を見て、確信した。


――レオパルドはわかったのか


国家警察の刑事である自分が負けるのは悔しいと思っていたが、エクトル警部はレオパルドになら負けてもいいか、と思っているのだった。

レオパルドがアーロン氏に聞いたのは、この邸宅で最も広い部屋はどこですか?ということだった。

アーロン氏は何でそんなことを聞くのかわからない、と言った様子だったが、レオパルドがどうしても聞きたがっていたようだったので、教えていた。


アーロン氏がレオパルドに教えたのはそれこそ宝石の展示室のようなところだった。

しかし、アーロン氏によるとその部屋は知人を呼んでパーティーなどをするための部屋だそうだ。

大金持ちにもなるとそうなるのだろうか。

エクトル警部はそんなことを思っていたが、横では近くにあった机に邸宅の見取り図を広げてコンパスを弄っているレオパルドがいた。

大体予想はついているのだろうが、確証を得たいのだろうか。

そして、数分後、レオパルドは何か確証を得ることが出来たようで、見取り図をしまいつつ、言った。


「宝石のおかれている場所が分かりましたよ。」

この時、エクトル警部はレオパルドがまさしく探偵である、ということを改めて感じた。


「まず、考えないといけないのはこの邸宅の構造です。この邸宅は迷路の様であることで有名でしたよね。なら、そう簡単にたどり着けないようにすることでサンチェスから宝石を守ろうとすることくらいは思い付けます。そして、はじめにアーロンさんの述べた『この邸宅には宝石展示室がない』ということ。つまりは宝石展示室から私たちの意識を遠ざけようとしているのだろう、と考えられます。では、どこに宝石は隠されているのか。宝石展示室という部屋はないとしても、そのような雰囲気の部屋はあるはずです。その場所から意識を遠ざけようとしたのは、無意識なのではなく、アーロンさんのヒントだったと考えれば簡単です。このように宝石展示室だといっても納得できるような部屋から特に離れたところ。そこが宝石の隠し場所でしょう。しかし、そのような部屋は三つほどありました。では、ここからどうやって絞り込むのか。これまた簡単な話です。アーロンさんはサンチェスに盗まれないために、このような方法を使ったはず。なら、できるだけは生きにくいところに置いてあるはずです。先ほども言ったようにアーロンさんの邸宅は迷路の様で有名ですから。そのようなことを考えて行くと答えは導き出されるわけです。」

レオパルドはそこまで話し切ると、アーロン氏とエクトル警部を連れてレオパルドの言う部屋まで連れて行った。

流石にどこからサンチェスが聞き耳を立てているかもわからないからだろう。

エクトル警部はまだ警官らを各位置に配置していないため、警官らにもアーロン氏の宝石を隠している場所は気づかれていないだろう。

警官らを信用していないわけではないが、警官らの中にサンチェスが紛れている可能性もあるからということからの決定だった。

そして、レオパルドがアーロン氏らを連れて行ったとき、アーロン氏は呟いた。

「どうしてわかったんですか…?」

このつぶやきこそがレオパルドの推理が正しかったことを証明していた。

レオパルドは「先ほど言ったようなことですよ。」と言いながら微笑を浮かべていた。

その様子を見て、エクトル警部はレオパルドがやはり探偵であり、スペイン一であろうサンチェスのライバルなのだと思い知った。

今までエクトル警部も周りの人も、レオパルドの推理を聞くことはほとんどなかった。

なぜか、それは簡単だ。

サンチェスの手法にトリックが使われにくくなってきたからだ。

トリックなどを使うようになってくればレオパルドの活躍する機会も増えるのだろうが、サンチェスの身体能力だけで済ませられるのだ。

そのため、近頃ではレオパルドはサンチェスの相手をできるよう、足の速さや身体能力の向上へ努力していた。


「では、まずは作戦会議から始めますか?」

レオパルドは優雅にそういってその場の空気を操作した。

この場を支配しているのは国家警察の刑事であるエクトル警部ではない。

この邸宅の家主であるアーロン氏でもない。

レオパルドなのだった。

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