28.不可解な予告状
今話は他の話と比べてかなり短いものとなっています。
今話は第四章と第五章のつなぎと思ってくださればいいと思います。
不可解な予告状
サンチェスは今やっと自分の隠れ家に戻ってこれた。
アダン氏の邸宅から抜け道を通って外に出られたは良いものの、そこが違う町だったから帰るのが思ったよりも大変だったのだ。
しかし、サンチェスは疲れたことよりもまたも国家警察を出し抜けたことを喜んでいることが大きかったため、あまり疲れを感じていなかった。
そして、急にどこかから手榴弾を投げられたことも、忘れてしまっていた。
サンチェスは、一晩休んだのち、新たな計画を立てようとしていた。
今日はちょうどよい日差しで気持ちよさそうだったから、サンチェスは計画を立てるための次狙う人の邸宅の見取り図、紙とペンを持って日がよく当たるリビングに行った。
眩しくはなく、ほのかな温かみを与える日の光は本当にきれいだった。
これなら計画が立てやすそうだ。
サンチェスはそう思いながらテーブルに見取り図を広げたりしながら椅子に座った。
サンチェスはただただ見取り図を見ながらぼーっとしている。
実際は、この時サンチェスは計画のことを考えていなかった。
考えすぎてもいい案が浮かぶとも限らないため、パッと閃くのを待っているのだ。
すると、何かが、パッと閃いた…と思った途端、
パリンッ
という音とともにサンチェスの目に一閃の光が見えた。
サンチェスは本能的に座っていた椅子から飛び降りた。何か嫌な予感がしたのだ。
その予想は的中した。
外から投げ込まれた何かによって窓ガラスは割れ、飛散していた。
サンチェスの目に映った一閃の光はガラスに反射した光だったのだろう。
サンチェスは事態が収束したのを見て取り、慎重に起き上がった。
周りを見回しても何もなさそうだ。
「あ~」サンチェスは思わずため息とともに苦笑を漏らした。
何があてられたのかはまだ判明していないが、かなり大きい穴が窓に空いていた。
サンチェスはガラスの破片を踏まないように気を付けながら、当てられたものを探し出そうとした。
そして、サンチェスが見つけ出したものは手のひらに収まりきるか否か、といった大きさの石だった。
しかし、サンチェスが注目したのはその石の大きさではない。
その石を覆っていた紙だ。
しかも、その紙には文字が書かれていた。
紙に書かれていた内容
お前は泥棒だというのに、正義を全うする。
俺はお前をこの手で始末する。
昨日はうまくいかなかったが、次こそは成功させて見せる。
A
サンチェスはこの挑戦状めいたものを見つめて唸った。
今まで国家警察などに予告状を送ったことは多いサンチェスだが、送られたのは初めてだった。
そして、この挑戦状によると、昨日の手榴弾は今回の挑戦状を送ってきたものの仕業ということだ。
サンチェスはこの人物に対して闘争心を燃え上がらせた。




