25.サンチェスと普通の事件
投稿が遅れて申し訳ありません。
このお話は粗削りなところも多いと思いますので、文がおかしいところは感想などで、誤字脱字などがあった場合は誤字報告で教えていただければとても助かります。
サンチェスと普通の事件
サンチェスは今日も計画を立てている。
昨日病院を脱出し、エクトル警部とレオパルド率いる警官隊の包囲網を突破したサンチェスは、今回の事件は普通の事件にしたいと思っていた。
といっても、サンチェスにとっての普通の事件は他の人とは少し違う。
ただ、大それたことをしないということだ。
サンチェスは計画を大体立て終わり、予告状も書き終わって、あとは国家警察に送るだけとなった。
サンチェスは怪盗だ。
予告状を出すのは簡単だが、誰かに見つかってはこの隠れ家もばれるかもしれない。
そうなればサンチェスとしても行動がしにくくなるのだった。
「サンチェスからの予告状が届きました!」
サンチェスが慎重に出した予告状は無事、エクトル警部のもとに届いた。
エクトル警部はサンチェスから届いたその予告状を丁寧に開けた。
サンチェスからの予告状の内容
私はアダン氏の所有するマーキュリー・クラウンを気に入っています。私も子供のころから頭にのせてみたいと思っていました。しかし、いつものごとく自身のものとするのではなく数々の介護施設に送りたいと思います。また、私は少し前まで病院のお世話になっていました。ということで、お手柔らかにお願いいたします。では、4月29日に参りますので丁重に迎えていただければ幸いです。
エクトル警部はサンチェスの予告状を読み終わり、すぐにでも準備を始めようとした。すると、
「今回もサンチェスを逃がしたようだな、エクトル君。」
エドワード警視が現れた。エクトル警部を含むそのあたりの刑事らは上官の登場に驚いた。
エクトル警部は「申し訳ありません。」とはっきり答えた。エクトル警部にとって、サンチェスを逃がしてしまったのは事実だが、やれることは全部やっての失態なので、後悔はなかった。
しかし、エドワード警視は納得しなかった。
「君ともあろう人がそんなに逃がすとは…」
エドワード警視がそういった時、エクトル警部はエドワード警視をじっと見つめた。
あなたも何度か逃がしたことありますよね?私より上官なのに。人のこと言えるんですか?
エクトル警部は何も言わなかったが、目がそう語っていた。
エドワード警視はその意図を理解したのか、ううむ…と唸ったのち、
「まあ、あれだ!…これからも頑張りたまえ!」
エドワード警視はそれだけ言うとそそくさと逃げるようにしてその場を離れた。
「はい!」エクトル警部は威勢の良い声を返し、サンチェス対策で準備を始めた。
しかし、途中で問題が発生した。普通にサンチェスの対策をすればいいのだが、アダン氏にある容疑がかかっていることが分かったのだ。
アダン氏は食品会社の社長なのだが、その会社ではいくつか栄養価の高い商品を取り扱っている。
また、その商品はすべてがかなり高価だ。
主にその商品を買っている人は大金持ちくらいのものだろう。
しかし、その商品の栄養価が本当に高いのかわからないとされている。
もし、栄養価が高くないというならば詐欺罪となる。
エクトル警部は詐欺の担当である知能犯担当部署には所属していないため、詐欺を担当する刑事もつれていこうとした。
エクトル警部が初めに思い付いたのは後輩であるセフェリノ警部だ。
しかし、セフェリノ警部は他の事件を担当しており、今は他の事件を担当できないと言うことだった。
エクトル警部はセフェリノ警部を諦めて他の刑事を探した。
そして見つかったのが、アマド刑事だった。
正確に言うと警部にも警部補にもなっていない、巡査部長だ。
つまり、そこまで事件の経験があるわけではない、ということだ。
アマド刑事はこういうとあれなのだが、ドジだった。
何もないところでつまづいたり、滑ったりする。
アマド刑事は少し前から国家警察で仕事をしているが、完全にドジなイメージがついていた。
エクトル警部は本当にアマド刑事だけで大丈夫か?と思った。
しかし、他に知能犯を担当できる刑事があまりいないのだ。
近頃は彼らが担当する事件が多いのだろう。
そのため、エクトル警部が何をいってもアマド刑事以外が今回の事件を担当することはできないのだった。
エクトル警部は少し不安だった。
まだ新米の刑事にサンチェスの事件なんて、かなり難しいだろう。
自分で言うのもなんだが、ベテラン警部と言われ、多くの事件を解決してきたエクトル警部でも一度しか逮捕できていない。
エクトル警部はそこまで考えて違和感を感じた。
一度しか、逮捕できていない?
普通の泥棒だったら一度逮捕できたら終わりだ。
それで刑務所に入れられて、ほとんどの場合は脱獄できるわけもなく服役して出所する。
そのあとにも何度も何度も前科を重ねるものもいるが、そのようなものでもいつかは逮捕される。
サンチェスが特殊なだけだ。
エクトル警部はそう、結論付けた。
そして、アマド刑事と言う不安要因を抱えながらサンチェスの対策の続きを始めた。
アダン氏の邸宅にて
エクトル警部はアマド刑事と幾人かの警官を連れてアダン氏の邸宅に向かった。
アダン氏は会社の社長と言うことでそれなりに大金持ちだった。
そして、食品会社の社長らしく、廊下には自社製品がずらりと並んでいた。
それはリピテーションという構成日を利用した並べ方で、様々な色の使われた製品がきれいに並べられているのだった。
エクトル警部はその様子を見て一瞬サンチェスの事件でここに来たということを忘れて商品のならびに見とれていた。
そして、ここに来た理由を改めて思いだし、気を引き締めよう・・・としたら
ドテッ
アマド刑事が転びかけていた。
明らかに何もないところでだ。
エクトル警部はドジだな、と思ったが、口には出さずあまり関わらなかった。
「今日来る怪盗はどんなやつなんですか?」
「今まではどんな事件を起こしてきたんですか?」
「私にできることはありますか?」
アダン氏は思ったより積極的な人だった。
エクトル警部との事前の打ち合わせが始まったときにはエクトル警部は質問攻めにされ、返答に困っている様子だった。
こういうときに限ってアマド刑事はいない。
アマド刑事はサンチェスの事件を担当するために来たのではない。
アダン氏の詐欺容疑を確かめるために来たのだ。
そのため、エクトル警部がアダン氏と作戦会議をしている間にはアマド刑事は邸宅内を捜索しているのだ。
エクトル警部はアマド刑事がいないことにアダン氏が違和感を感じないかと危惧していたが、アダン氏がサンチェスの事にかなり興味を持ったため、その心配はなさそうだった。
しかし、エクトル警部は他の問題にぶつかった。
アダン氏の対応が大変だ。
大金持ちの相手をするのはエクトル警部もなれてきたが、ここまで長く話したことはない。
それに、相手が自分より上の立場にいる人物だからあまり無粋な真似はできない。
それで、エクトル警部は困っているのだった。
アマド刑事はドジだし、新米で経験が少ない点はあったが、人懐っこい感じもあって友達などは早く作れそうなタイプだった。
自分とは全く逆だな。
エクトル警部はそう思った。
アマド刑事ならばアダン氏の相手も難なくこなせただろう。
エクトル警部はアダン氏の対応をしながらそう思った。
アダン氏の話はいまだに終わる気配を見せない。
早めに自分が話を終わらせないときついのではないか?
そう思ったエクトル警部はタイミングを見計らってアダン氏との会話を終わらせた。
「まずは、サンチェスが来るのを待ちましょう。サンチェスが来ないことにはどうにもなりません。」
エクトル警部はアダン氏にそういうと、警官らにもう一度計画の再確認をしに行った。