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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと戻ってきた日常
27/104

23.サンチェスは脱出する

サンチェスは突破する


「今日?!」

エクトル警部はレオパルドからサンチェスが予告したのが今日の夕方である、と聞いて本当に叫んでしまった。

今は昼前だからギリギリ準備できるものの、もし今が予告時間の一時間前とかだったらどうすればよかったのか、と思うと恐ろしい。

エクトル警部がサンチェスの作戦を改良して作った作戦はかなりの人数を使う。そんな大勢の人を一時間程度で動かすのは無理があった。

これもサンチェスの気配りなのだろうか。

エクトル警部はそう考えた。怪盗に気を配られるというのもどうかとは思うが、急に逃げ出されるよりは苦労しない。

しっかりと対策を立てられるのだから。


「あの作戦を実行しましょう。」


エクトル警部はそう言うと、一度病院の外に出て無線で各位置にいる刑事らに指示を飛ばした。




「そろそろ行こうかな?」

サンチェスは準備体操をしながら言った。

体も以前と同じく軽く動かすことが出来る。そのことを確認したサンチェスは、計画を頭の中で暗唱した。

サンチェスはエクトル警部が自分の考えた作戦を改良して実行するとは思っていなかった。

わざわざ作戦を考えてレオパルドに伝えたのにも、そこまでの意図がなかったサンチェスは、一応自分が伝えた作戦の対策はしていたが、その作戦を実際に実行するとは思っていなかった。

サンチェスの予想通りにはいかなかったのだ。

しかし、サンチェスにも勝算はある。どのようなことが起こっても、冷静に行動すればその状況を打破できる。サンチェスはそう信じていた。


「外には…いないみたいだね。」

サンチェスは病室の扉から首だけを出して周りを見回し、だれもいないことを確認した。

サンチェスはいくつもの病院に断られた結果、この田舎の病院に送られた。

田舎と言ってもスペイン国家警察にも近く、都市部から少し離れたくらいのところだった。

サンチェスは自分が怪盗だからいくつもの病院に断られたということはわかっていた。

この病院も、どうにか受け入れてくれたが、サンチェスの病室の周りには患者のいる病室はない。

サンチェスが怪盗だからだ。

何もする気はないのだが…

サンチェスはそう思った。サンチェスとしては、ほかの患者とも仲良くなりたいと思うほどだった。

しかし、それを許されないのが怪盗だ。

怪盗となってしまった今、そう簡単に一般人と関わることは出来ない。

レオパルドやセフェリノ警部、エクトル警部が見舞いに来てくれていることも普通ならあり得ないことだ。

まあ、エクトル警部は半分サンチェスを心から心配しており、半分は様子見のようではあったが。

しかし、エクトル警部だって本当なら来なくてもいいのに来てくれているというのはうれしいことだ。

様子見くらいならレオパルドやセフェリノ警部にだって頼める。なのに、わざわざ自分から来てくれたのだ。

サンチェスは思ったよりも皆に心配されていることが少しくすぐったいのだった。

が、そんな幸せな生活ともお別れだ。

これからはサンチェスとしての、怪盗としての日常が帰ってくる。



「行かなくちゃな。」

サンチェスはそうつぶやくと病室を抜け出し、病院の廊下を走った。

サンチェスの予想では、病院内にはあまり警官が敷かれていない。いるとして他の患者か、看護師や医者くらいのものだろう。

サンチェスがエクトル警部に予告状を出したから、他の患者に面会に来る親族などはいないはずだ。

元々いる患者や看護師や医者も荒事を避けるために部屋から出てくることはないだろう。

もとより、サンチェスも荒事は起こす気はない。医師か看護師、または患者などがいたとしたらその頭上を飛び越えるくらいでとどめておくつもりだ。

幸い、サンチェスの前に立ちふさがるような人は病院内にはいなかった。

サンチェスは容易に病院の外に出ることが出来た。

しかし、本番はここからだ。

サンチェスが物陰に隠れて辺りを見回すと、警官が所々にいた。

パッと見えたのは一人か二人だが、適当にそのあたりを徘徊している。

サンチェスが提案した作戦ではこのような配置はなかった。

これがエクトル警部の改案だ。

病院の周りを大きく囲み、その範囲内をほかの者たちに徘徊させる。そして、徘徊している者は誰かほかのものと出会った時に情報交換をし、いずれ周りを取り囲んでいる警官らにも情報は行き届く。エクトル警部やレオパルドもそのあたりを徘徊しているため、情報を常に更新し続けることもできる。

サンチェスは軽く周りを見回ってエクトル警部の考えた案の全貌を把握した。

サンチェスもこのようなパターンを予想していなかったわけでもない。

しかし、今一度どうするべきかを考え直す。

サンチェスはエクトル警部の案の欠点を見つけ出し、その欠点を突く計画を立てた。




サンチェスはすでに病院の外に出たのだろうか。

病院周辺を中心に徘徊しているエクトル警部は考えた。サンチェスの予告では夕方五時とのことだ。

しかし、その五時にどうするかはわかっていない。

五時に警官らの包囲網を突破する、という予告だったのか、五時に病院を抜け出す、という予告だったのか。

その差はかなり大きい。

エクトル警部はそんなことを考えながら病院の正面玄関辺りを見に行った。

エクトル警部やレオパルドはもちろんのこと、徘徊している警官らは基本的に自由行動である。

しかし、病院の近くなど、中央部を徘徊するものと中間部を徘徊するもの、包囲網のあたりの外側を徘徊するもので分かれ、他のグループに会った場合には状況を報告し、緊急時には自分から包囲網を作っている警官や、エクトル警部に伝えに言ったりするように決められている。


このまま何の変化もないようなら一度中間部の警官らに報告に行こうか

エクトル警部がそんなことを考え出した時、エクトル警部は反射的に身を隠した。

少し音がしたようだったが、身を隠す要因となった男は気づいていない。


まさか、サンチェスに遭遇するとは…

エクトル警部は草陰に身を潜めながらそう考えた。

サンチェスの様子からして未だ誰かに見つかった様子はない。

余裕の様子だ。

エクトル警部は一度様子を見ることにした。今自分が飛び出して行ってもサンチェスを逮捕することは出来ないだろうと考えたからだ。

他の警察官がサンチェスを見つけてからでも遅くはない。

エクトル警部はそのままサンチェスを見ていた。すると、サンチェスは急に持っていたカバンから変装道具を取り出し、警官の服装になった。

というよりもエクトル警部の姿になった。

顔かたちから服装まで、完全再現されている。

エクトル警部はサンチェスが一瞬にして自分と同じような恰好になっているのを見て驚いた。

サンチェスは変装し終えると…


「エクトル警部!姿お借りしますね!」


エクトル警部の隠れていたところに向かって叫んだ。

エクトル警部はまたもサンチェスに驚かされた。

サンチェスはエクトル警部が隠れていることも感づいていたのだった。

サンチェスはエクトル警部に叫んだ後に煙玉を投げてどこかに消えた。

エクトル警部はすでに気づかれているのだから、ということでサンチェスを追った。

サンチェスは思ったより離れたところにおらず、エクトル警部はすぐに走って追いかけることが出来た。


エクトル警部はサンチェスを追いかけた。

包囲網にさえ到達させないために…

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