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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと敵討ち
20/104

18.サンチェスと決戦 漆

サンチェスと決戦 漆


男は暗い空間の中、〝上で〟話すエクトル警部の声に耳を傾けた。今自分が声を上げればエクトル警部に気づいてもらえるかもしれない。しかし、そんなことをすれば自分は逮捕される。それに、今この状況でこの男、サンチェスは声を出す力を残していないのだった。サンチェスはどうしてこうなったのか、気を失いそうな状況で考える。サンチェスはすでに気絶する準備のように目を閉じている。サンチェスは、アレキザンドラ社に社員として潜入し、ほかの社員の噂話などから鉄の監獄の電源室の場所を突き止めた。大体のことは社員任せのアレキザンドラ氏なら社員が守りやすい場所、つまりはアレキザンドラ社本社に電源室を設置すると考えたのだ。そして、その予想は的中した。サンチェスは社長室にうまく侵入し、電源室にて鉄の監獄の電源を落とした。これで鉄の監獄はただの鉄柵となったのだ。主に電力に頼っていたその機械は鉄柵と鉄柵の間も小さくなく、サンチェスは軽く通り抜けられそうだった。サンチェスは事前にアレキザンドラ氏の鉄の監獄について調べていたため、難なく宝石を盗めると思った。国家警察の警官が守っている宝石の展示室もエクトル警部やアレキザンドラ氏がいなければ突破するのは簡単で、一瞬でサンチェスは鉄の監獄のところまで到着してしまった。そこまではいつも通り。簡単そのものだった。しかし、


ガッッッコン!!


サンチェスは急に物音がしたのに驚き、周りを見回した。すると、先ほどまで見えていた部屋の風景が白に塗りつぶされた。そして、妙な浮遊感を感じたサンチェスは足元を見た。

受け身をしないと…!

サンチェスが自分の状況を理解する前にサンチェスの思考は体全体に命令を出した。サンチェスの足元がなくなり、深い穴に落とされていたのだ。サンチェスがさっと行動できたため、重傷は免れた。しかし、いくつかの打撲傷を負ったサンチェスはそう簡単には動けなかった。それに、サンチェスが落とされた穴の壁は特別滑りやすい素材で作られており、サンチェスがいつも通り動けたとしても登れたかはわからない。サンチェスは思ったより広い落とし穴の中で寝ころんだ。楽な体勢をとることで体力を温存しようとしたのだ。いつか勝機は来る!サンチェスはそう信じて疑わなかった。そして十秒もしないうちに先ほどまで見えていた豪華な部屋の天井が見えなくなった。落とし穴の扉が閉じたのだろう。サンチェスは高さ十メートル以上の暗い穴の中に落ちたのだ。しかし、幸いにも落とし穴の中には空気穴が開いているようで、酸欠にはなら無そうだった。


「鑑定に詳しいものが見つかりました!」

警官は先ほどエクトル警部に指示された通り、警官の中で鑑定に詳しいものを探してきた。警官の中に宝石を鑑定できるような者がいてよかったと思う。そうでなければオヌクール氏事件の時同様ほかの場所から鑑定士を呼んでこないといけなかっただろう。

エクトル警部は警官が連れてきた鑑定のできる警官を宝石の展示台のところまで連れて行き、宝石の鑑定をさせた。そして、しなければいけないことが残っていないか、と考えながら鑑定が終わるのを待った。


「今のうちですね。」

「ええ、アレキザンドラ氏も今は宝石の展示室にいますから。」

彼らは素早く部屋の隅々まで捜索した。しかし、アレキザンドラ氏を逮捕できるような証拠は出てこない。レオパルドとセフェリノ警部の二人は出来るだけ早くアレキザンドラ氏の悪事を暴ける証拠を見つけようと思っていた。サンチェスが来たはずなのに、宝石は盗まれていない。レオパルドとセフェリノ警部も警官伝いにそのことを聞いていたため、明らかな違和感を感じた。しかし、レオパルドとしては今までのサンチェスの事件を知っているため、これも何かの罠か計画なのではないかと思えた。今もサンチェスはこの邸宅の中に潜んでいて、いまだ宝石を狙っているのではないか、そう思ったのだろう。レオパルドの考えは半分外れで半分正解だ。サンチェスはこの邸宅にまだ残っている。というか、この邸宅内でアレキザンドラ氏の罠にかかり、落とし穴の中に落とされている。しかし、サンチェスは今宝石を盗み出すことを考えられるほど余裕を持っていなかった。継承ではあるものの数は多い打撲傷によって思うようには動けず、今のまま時間が過ぎれば飢え死にする可能性もあるのだ。そのような状況で今も宝石を盗むことを考えているわけがない。しかし、サンチェスは、宝石を盗むことをあきらめはしても、自分が生き残ることは諦めていなかった。サンチェスには、レオパルドとセフェリノ警部という希望の光が残っているのだ。彼らとの約束を思い出せば、そう簡単に死んでたまるか!と思えるのだった。そして、サンチェスが罠にはまっているとは知らないレオパルドとセフェリノ警部は今も、証拠探しを続けていた。部屋の中を探してもない。引き出しの中やベッドのマットレスの間にもない。どこを探しても何の証拠も見つからないレオパルドとセフェリノ警部はかなり焦ってきた。そろそろサンチェスも来ないという判断がされて国家警察に帰還することになるかもしれない。そうなれば、自分たちだけ残ることは出来ない。アレキザンドラ氏は自分たちとサンチェスの隠れ家を平気で爆破するような男だ。自分たちが詐欺にかけた遺族の最後の生き残りが目の前に出てきて何もしないわけがない。そう考えたレオパルドとセフェリノ警部はより丁寧に、そしてもっとスピーディーに証拠探しをした。






「では、私たちはここで失礼いたします。この度は、サンチェスからの宝石完全防衛心からお祝い申し上げます。」

エクトル警部はサンチェスが来たのに宝石は盗まれなかったということを確かめ、その日中調べつくしたのち、国家警察への帰還を判断した。レオパルドとセフェリノ警部も警官に変装したまま警官隊の中に混じっていた。しかし、アレキザンドラ氏やアレキザンドラ社を逮捕できる証拠は、見つかっていなかった。レオパルドとセフェリノ警部もエクトル警部が帰還を指示するまで常に証拠探しはしていた。それでも見つからなかったのだ。

「いえいえ、エクトル警部と警官隊の方々のおかげですよ。」

エクトル警部とアレキザンドラ氏がお互いにサンチェスから宝石を防衛できたことを喜ぶ中、レオパルドとセフェリノ警部は本当にサンチェスは宝石を盗まなかったのか、と考えた。サンチェスが一度目に宝石を盗まなかったのが罠だったとしても、予告日をずれることはないはずだ。ということはこれは罠ではなく、何らかの理由があってサンチェスが宝石を盗めなかったということだ。しかし、その要因は何だろう。さすがのレオパルドやセフェリノ警部でもわからなかった。そして、サンチェスなら大丈夫だろう、という信頼があったからこそ、サンチェスが罠にはまっているなんて思わなかった。

エクトル警部とアレキザンドラ氏が別れの挨拶を済ませると、アレキザンドラ氏の邸宅内にいた警官らは全員帰っていった。



「何も、話していないだろうな…?」

アレキザンドラ氏が社員を集めてそう言った時、社員らは自らの身の潔白を証明し出した。アレキザンドラ氏はフンッ、と鼻を鳴らし、去っていった。社員らはアレキザンドラ氏がいなくなってからため息をついて安堵した。アレキザンドラ氏ににらまれれば終わりだ。もとは仲間でも、一度でも怪しい行動をすれば暗殺されることもありうる。アレキザンドラ社はアレキザンドラ氏に支配されているのだ。

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