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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと敵討ち
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14.サンチェスと決戦 参

サンチェスと決戦 参


ドォーーン

サンチェスとレオパルド、セフェリノ警部の自宅は倒壊し、煙に巻かれたのは彼らがそれぞれの自宅に帰っていった頃だった。三人は驚きのあまりそれぞれの自宅だったであろう場所を見続けていた。急に家1つが爆発したことに驚いた近隣住民も最初は遠巻きに見ているだけだったが、危険がなさそうだとわかったとたんに集まってきた。中には家主より先に国家警察に連絡したものもおり、国家警察の警察車がサイレンを鳴らして近づいてくる。レオパルドとセフェリノ警部は状況を飲み込めた後もその場に立っていたが、サンチェスは状況を飲み込み、国家警察が近づいてきていることに気づくとすぐにその場を離れた。怪盗であるサンチェスは出来るだけ国家警察とのかかわりを避けなければならないのだ。レオパルドとセフェリノ警部はその必要もなく、到着した国家警察の対応をした。二人とも国家警察に顔が知れている私立探偵と顔が知られているどころか国家警察の人間であるベテラン警部だったため、国家警察の対応はうまくいったが、情報は一切持っていなかったため、捜査は難航しそうだった。今の状況だったら犯人の逮捕は難しいだろう。現場に向かった刑事はそう考えた。しっかりと国家警察の対応をした二人でそのような状況なのだから、国家警察の対応さえしていないサンチェスの隠れ家の方は一切捜査が進まなかった。この家の家主を探そうとしてもサンチェスが隠れ家として利用するために他人名義で借りている家の家主なんて見つかるはずもなく、完全に迷宮入り決定だった。しかし、サンチェスとレオパルド、セフェリノ警部の家の爆発はほぼ同時刻に起こったことから同一犯の可能性が高いということだけはわかった。


「これからどうしますか。」

「マンションでも借りますか?」

「国家警察に泊まれますかね?」

「セフェリノ警部ならまだしも、私は難しいでしょう。」

日も傾き、ほとんどの人が自宅に戻って行くころ、赤い夕陽を反射する池を前にレオパルドとセフェリノ警部は話していた。それぞれ自宅が爆破され、国家警察の対応も終わらせた二人は一度合流することにした。一気に家を失った彼らはこれからどうするかを相談しているのだった。一時的な自宅を手に入れるが先か、それとも自宅爆破の犯人を確保するのが先か。二人ともお金は自宅に保管するというより銀行に預けていることが多かったため、一気に一文無し!とはならなかったが、自宅を失った時点で失ったものは大きかった。今頃同じ状況になっているであろうサンチェスはどうしているのだろうか、レオパルドはそのようなことを考えながら視線をセフェリノ警部から目の前の池へと移す。その時、

「レオパルドも大変だね。」

レオパルドにとっては聞きなれた声が放たれた。レオパルドは反射的に声の発信源に向きなおった。セフェリノ警部も驚いた顔で彼を見ている。二人の視線の先には、怪盗として騒がれているはずの、サンチェスがいた。レオパルドとセフェリノ警部は数秒間驚きのあまり沈黙だった。サンチェスは二人が落ち着くまで待ってから言った。

「二人とも家がなくなって大変だろう?」

なんでそのことを知っているんだ!?レオパルドはそう叫びたくもなったが、先ほど自分たちが作戦会議をしようとしていた時にサンチェスがどこかで聞いていたことを思い出し、またかと思うだけでとどめておいた。しかし、サンチェスが言っていることは事実ではある。否定できず、安易に肯定もできない中、「まあ、僕も同じなんだけどね。」とサンチェスからも被害報告を受ける。レオパルドとセフェリノ警部は同時に声を出して驚きを表明した。そして、

「これは確実にアレキザンドラ社の影が見えてきたね。」

レオパルドは目の前に逮捕すべきサンチェスがいるのさえ忘れて予測を立てていた。

「ですね…」

セフェリノ警部もレオパルドにつられて同じく予想を立て始めた。サンチェスはこれはこれで好都合だと思った。自分がわざわざ来た理由である本題を未だに出せていないのは困ったことだが、自分が逮捕対象から一時的にでも離れるのは好都合だった。サンチェスは少しの間軽く気配を消してレオパルドとセフェリノ警部の予想を聞いていた。そして、大体落ち着いてきたころ、

「でも、どれだけ予想を立てても、完璧な計画が思いついても、自分の家もなければどうしようもないんじゃないかい?」

サンチェスは話を本題に戻した。サンチェスがわざわざ危険を冒してまでレオパルドとセフェリノ警部に会いに来た理由はこれなのだ。レオパルドとセフェリノ警部は急にサンチェスに声をかけられ、そういえば!というように自分たちの家がなくなっていたことを思い出した。そのことを思い出し、一気に落胆するレオパルドとセフェリノ警部を前に、サンチェスは微笑を浮かべて言った。

「――――――――。どう?いい案だと思うけど。」

サンチェスの言葉に、レオパルドとセフェリノ警部は驚くとともに疑いの色を濃くした。しかし、かなり夜になってきて、今頃マンションの一部屋でも借りるなど難しくなっていることや、このままでは野宿する必要が出てきていることを考え、かなり疑いはしたがサンチェスの案を受け入れることにした。


翌日の早朝

「どう思いますか?なんで急に隠れ家の一つを貸すなんて言ってきたんでしょう。」

セフェリノ警部は昨日からの疑問をレオパルドに投げかけた。

『僕の隠れ家を貸そうか?家賃なんて取らないし、返さなくてもいいから。どう?いい案だと思うけど。』

サンチェスは昨日、急にそういってきた。レオパルドとセフェリノ警部はそう言われて、なぜそんなことを急に言い出したのかと思ったがこのまま家がないままはきついと思い、その案を受け入れることにした。しかし、セフェリノ警部とレオパルドはいまだに疑っていた。サンチェスは怪盗としていくつもの隠れ家を他人名義で借りているらしい。その隠れ家の一つを貸してくれたのだ。そのこと自体はうれしいことではある。疑わしいことばかりでなければ純粋に喜べたのだろう。レオパルドはそう思った。しかし、これでいったん落ち着くことが出来た。一時的ではあるが住む家を得られた今は何も考えることなくアレキザンドラ社討伐に集中できる。レオパルドはそう考え、セフェリノ警部が国家警察に出勤してからもアレキザンドラ社、そしてアレキザンドラ氏のことを調べていた。サンチェスが予告状を出すのはいつか分からないため、いつ来てもいいような万全の態勢でいるべきだと思っているのだ。セフェリノ警部は早朝から国家警察に出かけていた。窃盗犯担当部署ではないセフェリノ警部はサンチェスの事件に表立って関わることは出来ないはずだったが、アレキザンドラ氏をアンブレシオ氏の関係者、重要参考人として令状を取れれば正式に事件にかかわることが出来る。セフェリノ警部はそう思い、今までよりも気合を入れて準備をしていた。国家警察の一員であるセフェリノ警部はレオパルドよりもサンチェスの事件に対して動きやすい。それぞれに得意分野はあるが、全体的にセフェリノ警部の特権は大きい。国家警察の知能犯担当警部、知能犯担当部署に属するセフェリノ警部は知能犯についての情報は国家警察が手に入れている限り入手することが出来る。また、警部という少しは高い地位にいるため、部下に指示を飛ばすことや、国家警察のデータを閲覧する権限があったりする。レオパルドもレオパルドで自分の探偵事務所の情報網を利用することにより、国家警察でも手に入れられない情報を得られることもある。サンチェスも、窃盗事件を起こすことで国家警察を脅かしている反面、今回のように手助けすることもできる。


スペイン一の大怪盗、チャールズ・サンチェス・ロペス

スペイン一の私立探偵、レオパルド・アルバ・モンテス

スペイン国家警察知能犯担当部署警部、セフェリノ・オルティス・ネバレス警部


この三人が協力した今、アレキザンドラ社の壊滅は刻々と近づいてきているのだった。


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