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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと敵討ち
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13.サンチェスと決戦 弐

サンチェスと決戦 弐


「それよりも。」

セフェリノ警部はエクトル警部に軽く別れの挨拶を済ませ、その場を去った。セフェリノ警部が向かったのは国家警察の中にある公衆電話の場所だった。慣れた調子で電話機を操作するセフェリノ警部はいつもより緊張している様子だった。

「もしもし、レオパルドさん。今お時間よろしいでしょうか。」

セフェリノ警部は電話がつながってすぐに軽く挨拶をした。セフェリノ警部が電話をした相手であるレオパルドもセフェリノ警部に挨拶を返し、お互いに挨拶を終えたころ、職務中でもあるセフェリノ警部は出来るだけ早めに要件を済ませようとし、こう言った。

「レオパルドさんも忙しいでしょうし、単刀直入に申し上げます。アンブレシオ氏が逃走しました。」

何の躊躇もなくそう言い切ったセフェリノ警部に、レオパルドは驚いた。自分は直接関わっていないものの、本当は関わるはずだった事件だ。その犯人が逃走した。しかも、セフェリノ警部の続けた話を聞いているとあの、アレキザンドラ社も関わっていそうだ。レオパルドもセフェリノ警部の話を聞きながら今までにも増して緊張した雰囲気が伝わってくるのを感じ取った。本当ならこのことをサンチェスにも伝えたいものだが。レオパルドはそう思いながらもその思考を消した。怪盗となり、脱獄までしたサンチェスと協力することなどは出来ない。それが自分の願いだとしても、それは不可能だ。レオパルドは自分にそう言い聞かせ、セフェリノ警部の話に集中した。セフェリノ警部はその後も警官からの報告を一部簡略化して伝えた。そして、さらに詳しい情報を共有し、今後の作戦会議をするためにもセフェリノ警部の非番の日に集まることにした。


作戦会議当日

「あ、レオパルドさん!忙しい中すいません。」

「いえいえ、こちらこそ貴重な非番だというのに…」

セフェリノ警部とレオパルドはお互いに挨拶を済ませると、早めに本題に入った。

「アンブレシオ氏のこと、何か進展はありましたか?」

先に話を進めたのはレオパルドだ。セフェリノ警部は一切ないことを示すため、力なく首を横に振った。レオパルドもセフェリノ警部の様子から朗報はないのだろうと考え、同じく力なく頷いた。そして、

「そういえば、なぜアンブレシオ氏なのでしょう。アレキザンドラ社とはどのような関係なのでしょうね。」

セフェリノ警部はアンブレシオ氏逃走の報告を受けてからずっと気になっていた疑問を口にした。レオパルドはセフェリノ警部の質問を聞き、「ああ!」と小さく叫んだ。

「そのことなら調べましたよ。アンブレシオ氏はアレキザンドラ社社長、アレキザンドラ氏の秘書です。なかなかの高い立場にいるようですね。」

自分が調べたことの報告をするレオパルドの言葉を聞き、セフェリノ警部は納得したように大きく頷いた。これでアンブレシオ氏逃走にアレキザンドラ社が関わっていることがほぼ確実となった。社長秘書となれば、少しは高い立場にいるわけだ。しかも、アンブレシオ氏を奪還しに来た男たちの話によると、アンブレシオ氏は何らかの形でアレキザンドラ社に貢献しているようだ。しかし、その貢献方法は正しいものではないだろう。それはセフェリノ警部とレオパルドも確信している。だからと言って、アンブレシオ氏が貢献しているアレキザンドラ社が悪とは言えない。それを証明しなければならないのだ。セフェリノ警部とレオパルドが倒したいのはアレキザンドラ社なのだから。それで、セフェリノ警部とレオパルドは現在の進展具合よりもこれからの作戦を立てることを優先することにした。といっても、

「何かいい作戦があればいいんですけどね。思いつきますか?」

「全然です。」

作戦が思いつかないものはしょうがない。最終的にその日は何の作戦も立てることが出来なかった。セフェリノ警部もレオパルドも落胆しながら別れの挨拶を済ませ、帰ろうとした。すると、セフェリノ警部とレオパルドの前に老人が歩いてきた。ふらつきながら杖だけを頼りに歩くその老人はいつ倒れてもおかしくないほどだった。レオパルドとセフェリノ警部は明らかに危ないその老人を見て心配になったが、何事も起こっていないのだから今のところは大丈夫だろうと思い、いつ何が起こってもいいように態勢を整えながら通り過ぎることにした。

「あっ、」

レオパルドの横を通り過ぎた老人は、何か落として行った。レオパルドは横目で老人が落としたものを見て、その大きさとひらひらと舞い落ちる様子から、紙切れか何かかと考え、落ちるか落ちないかのところで拾った。そして、すぐに老人に声をかけようとした時、老人はいなかった。レオパルドは周りを見回してみたが、どこにも老人の姿はない。セフェリノ警部は老人が紙切れを落としたのさえ見えていなかったため、レオパルドが何をしているのかさえ分からず、首をかしげていた。しかし、レオパルドの手の中に先ほどまでにはなかった紙切れを見つけた。今まで多くの事件を担当してきたベテラン警部、セフェリノ警部は小さな紙きれさえも見逃さなかったのだ。しかも、

「S a n c h e z…」

その紙切れにサンチェスの名があることも見つけた。レオパルドがセフェリノ警部が急にサンチェスの名を出したことで、セフェリノ警部のほうに向きなおった。

「サンチェスがどうしたんですか?」

レオパルドはセフェリノ警部に聞いた。すると、セフェリノ警部は無言のままレオパルドの持つ紙切れを指さした。レオパルドはそのことに気づき、手のひらに握る紙切れを見た。すると、サンチェスからのメッセージが書かれていることに気づいた。さっきの危なげな老人はサンチェスの変装だったのだ。サンチェスはレオパルドとセフェリノ警部にメッセージを残し、どこかへ消えたのだった。


サンチェスからのメッセージ

アレキザンドラ社を倒すための証拠集め、僕も手伝うよ。

僕が予告状を出してアレキザンドラ社社長の邸宅に盗みに入る。

その時に二人も警官のふりをして調べたらいい。アンブレシオ氏がアレキザンドラ氏の秘書なのだから、

頑張れば令状だってとれるはずだ。

予告状はまた今度国家警察宛てに送らせてもらうね。


レオパルドはサンチェスからのメッセージを読み、自分たちの話まで聞かれていたのかと思った。セフェリノ警部もサンチェスがどこに隠れていたのかと先ほどレオパルドと話していたところの周りを見ている。レオパルドは改めてサンチェスの変装術と隠密性の高さを知った。自分たちが今までの進展を共有し、これからの作戦を考えている間、サンチェスはそのすべて、または一部を聞いていたのだ。レオパルドとセフェリノ警部はそのことに気づくどころか気配さえも感じなかった。レオパルドは敗北感は感じたが、逆に親友がそこまで力をつけていることを喜んだ。サンチェスがその力を怪盗としてではなく、探偵や警察官として使ってくれたらよかったのに。そうも思った。しかし、そう思っても仕方がないのだと思い、自分たちにもできることをしようとした。レオパルドはセフェリノ警部を促し、次こそ帰ることにした。サンチェスが危険を冒してでもアレキザンドラ社討伐に協力してくれるというのだ。ならば、自分たちも頑張らなければならない。命を賭してでも両親の仇をとる。レオパルドはそう決意して自分の探偵事務所兼自宅に帰っていった。セフェリノ警部も、叔父の仇を打つことを固く決意し、自分の自宅に帰っていった。老人から変装を解いたサンチェスも隠れ家に戻って行った。そして、またもアレキザンドラ社についての情報を集め始めた。両親の仇であるアレキザンドラ社討伐のために。


ドォーーン


大きな爆発音が鳴り響き、ほぼ同時に三軒の家が倒壊したのはレオパルドとセフェリノ警部、そしてサンチェスがそれぞれ自宅に帰っていった頃だった。

かなりのことがない限り明日も投稿いたします。

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