表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスの逃亡劇
12/104

  サンチェスの本命発覚

サンチェスの本命発覚


「でも、レオパルドさんでも、サンチェスっていう怪盗には苦戦するんですね…」

突然セフェリノ警部が自分の話題を振ってきたことに驚いたサンチェスは思わずせき込んだ。これはどのような返答をするのが正しいのだろうか。今はレオパルドに変装しているのだから、周りはレオパルドの言葉として受け止めるだろう。しかし、見た目はレオパルドでも、中身はサンチェスだ。自分のことをレオパルドとして褒めることもできない。サンチェスはセフェリノ警部の問いに対し、どのような対応をするのが正しいのかについて、頭を悩ました。最終的に、サンチェスは出来るだけ失礼にならないように、あいまいな表現で会話を終わらせた。セフェリノ警部は無理やりサンチェスが話題を切ったことに首をかしげていたが、すぐに気持ちを切り替えてほかの話題に変えた。そして、数十分間捜査をしたのち、アンブレシオ氏の邸宅が広すぎたため、サンチェスとセフェリノ警部は手分けして捜査することにした。サンチェスは出来るだけくまなく邸宅を捜索し、アンブレシオ氏を逮捕できるような証拠をつかもうとした。自分を詐欺にかけた詐欺師だ。絶対に自分で捕まえる!サンチェスはそう決意していた。レオパルドに理由を聞かれたときに本当の理由を答えたくなかったのは、ただ自分が詐欺にかかったというのが恥ずかしかったからだ。怪盗になりたいといっている自分が詐欺にかかるというのは何とも滑稽な話だ。サンチェスはそう思ったため、レオパルドには本当の理由を言わなかった。というよりは言えなかった。レオパルドはかなり怪しんだだろうな、サンチェスは今更になってそう思った。しっかりと理由を伝えればもう少し怪しまれずに家宅捜索をさせてくれたかもしれない。まあ、どういう経緯で家宅捜索をすることになったとしても、レオパルドに待ち伏せされるのは変わらなかっただろう。サンチェスはレオパルドが国家警察に今回のことを報告し、待ち伏せしているということに気づいていた。そして、その対策もしてきた。サンチェスは頭の中で計画を思い返し、捜査に戻った。しかし、サンチェスが捜索するようにセフェリノ警部から言われたところはすべて捜索し終えてしまった。サンチェスもしっかりと捜索はしたのだが、結果としては何の証拠も見つけることが出来なかった。サンチェスはもう一度捜索しようかとも考えながら一度セフェリノ警部と合流するため、集合場所に戻った。しかし、セフェリノ警部はいない。

「あれ、セフェリノ警部?」

サンチェスは軽く待ったが、セフェリノ警部は来ない。周りにいた警官に聞いても、「さあ…?」「どこでしょうね?」といったあいまいなことしか言われなかった。サンチェスは何となく違和感を感じた。警官が何かを隠蔽しようとしているような、そのような感じだ。何が起こっているのかはわからなかったが、何かしらのことが起こっているのだとはわかった。サンチェスはこのまま何もしないでいるのもどうかと思ったため、セフェリノ警部探しに向かうことにした。セフェリノ警部がいる可能性が高いのは、先ほどまでセフェリノ警部が捜索していたはずの場所だ。サンチェスはセフェリノ警部を探したが、捜索した形跡だけはあるものの、セフェリノ警部の姿はなかった。サンチェスはどこに行ったのだろうか、と考えながら先へと進んだ。すると、

「なんだろう…」

サンチェスの入った部屋の隅に、開けてくれと言わんばかりのカバンがあった。サンチェスは軽く中身を確認しようとした。すると、その中には驚くべきものがあった。

「ア、レ、キ、ザ、ン、ド、ラ、社。」

サンチェスは書かれていた企業の名前を読み上げた。そして、頭の中に一気に情報が入ってきた。


『アレキザンドラ社?』

『はい、我々は貧困層を減らすことを目的としておりまして…』

『チャールズ!お金が借りれるぞ!少しはいいメシが食える!』

『ホント?お父さん!』

サンチェスは昔のことを思い出した。チャールズというのはサンチェスの名前だ。サンチェスは急にアレキザンドラ社という企業からお金を借りることになった。しかし、サンチェスの家はその一か月後、同じくアレキザンドラ社に借りたお金を盗まれ、借金に賠償金が重なり、サンチェスの親は借金に追われ自殺した。それで、サンチェスは近くに住んでおり、幼馴染だったレオパルドと一緒に生活することにし、サンチェスは怪盗を、レオパルドは探偵を目指すことになっていくのだった。そのことを思い出したサンチェスは、改めて自分とレオパルドの両親の仇改め、アレキザンドラ社に対する闘志を燃え上がらせた。


「やっぱり、アレキザンドラ社のことを知っているんですね。」

サンチェスはどこかから聞こえてきた声に顔を上げた。

「セフェリノ警部!どこに行っていたんですか?」

セフェリノ警部がサンチェスのすぐ前にいた。サンチェスはセフェリノ警部がどこに行っていたのかが気になった。すると、セフェリノ警部は答えた。

「隠れていたんですよ。あなたの両親が借金に追われて自殺したというのも聞いていたんです。私も同じようなものでしてね。私もアレキザンドラ社にお金を借りたんです。というか、お金を借りたのは叔父なんですけど。そして、最終的に、アレキザンドラ社にお金を盗まれ、私の叔父が自殺することはなかったものの、ストレスで死んでしまいました。叔父はもともと両親のいなかった私を大事に世話してくれたいい人でしたから、私はアレキザンドラ社を叔父の仇と思い、憎み続けました。しかし、その時はまだ成人ではない私が何を言っても誰も信じてくれるわけがありません。だから、警察官を志したんです。気づかれない悪を取り除ける。そのような警察官になるために。」

セフェリノ警部の話はそこで終わった。サンチェスはセフェリノ警部の身の上話を静かに聞いていた。自分やレオパルドと同じ立場の人間。立場は違えど、同じ動機を持つ人物。サンチェスはセフェリノ警部に同情した。そして、いつの間にか、体も口も動いていた。

「一緒に、アレキザンドラ社を、そして、気づかれない悪を打ち滅ぼしましょう!」

サンチェスの言葉に、セフェリノ警部は目を見張った。実際、セフェリノ警部はレオパルドを仲間に引き入れ、アレキザンドラ社を倒すのに協力してもらおうとは考えていた。しかし、ここまで積極的に協力を示してくれるとは思っていなかった。レオパルドにとっても、親の仇とはいえ、アレキザンドラ社という大企業を相手にすることになるのだ。自分の保身のことを考えてもいい、セフェリノ警部はそう思っていた。しかし、レオパルドはそのようなことを一切考えず、協力を約束した。

まあ、中身はサンチェスだが。

サンチェスは勢いに任せてそう言ったものの、そのように言ったことを一切後悔していなかった。もし、アレキザンドラ社という大企業を相手にするとしても、保身など考えない。それに、レオパルドだってそんなことは考えないと断言できる。もしも、レオパルドが保身を選んだとしても、この後、レオパルドが自分でセフェリノ警部に事情を話して納得させるだろう。しかし、サンチェスとレオパルドは強い決意のもと、それぞれ怪盗や探偵を目指しているのだ。大企業が相手だからと言って怖気づくわけがない。サンチェスはアレキザンドラ社への憎しみを募らせ、闘気をみなぎらせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ