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大怪盗サンチェスの冒険記  作者: 村右衛門
サンチェスと決別の刻
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98.サンチェスと計画

サンチェス解決編、やっと推理小説っぽい!!


「アレキサンドラ社壊滅の時から張っていた予防線、それは『本人確認の方法』だった」


 サンチェスから、計画の全貌が語られる。

 これまで水面下で動いてきた、全ての計略と策謀の、その全容が表舞台へと顔を出す―――。



「『本人確認』……? それってどういう……」


「僕はアレキサンドラが復讐に来る時、死んだふりをすることを事前に決めてた。だから、死んだはずの人間が、実際にその場にいるのだ、と信じさせられるだけの証拠が必要だった」


 サンチェスの言葉を聞きながら、トランキーロ長官もサンチェスと初めて対面の上での会合を果たした時のことを思い出す。

 確かに、そのときにも同じようなことを言っていたのだ。



「血液、指紋、筆跡。ぱっと思いつくだけでこの三つ」


「筆跡……!! 予告状か! 確かに、全て直筆だった!!」


「エクトル警部、御名答」


「指紋……についても予告状から採取できる……か。しかし、血液は―――」



「一度だけ、あります。サンチェスが出血した場面が……」


「っ……!! いや、そんな……」



 レオパルドの言葉に、トランキーロ長官を除いた全員が言葉をなくす。

 

―――まさか、信じられない


 そう、言いたくもなる。

 しかし、サンチェスは先程確かにアレキサンドラ社壊滅のときからこの計画を立案していたと言ったのだ。

 そう思えば、この推論もあながち間違いなどではない。いや、それこそほぼ確信できるのだ。それこそが答えなのだと。



「その通り、アレキサンドラの罠にかかり、私は大怪我を負っている。少々計算違いで絶妙に大怪我になりましたが、致命傷と四肢を失うことだけは避けましたよ」


「罠にかかった、というそれすらも……!! 全て計画であったと!!?」



 エクトル警部の上げる驚きの叫びに対し、サンチェスは大仰に頷いて返した。

 まさかの種明かしに、全員がもう一度沈黙する。



「警察病院は、必ず私のデータを採る。そうすれば、後ほど『本人確認』が、取れるわけです」


「実際、私のところへと届いた手紙には乾ききっていない血で血判が押されていた。そして、警察病院に保管された血液とDNAが合致したのだ」


「…………っ」


 確かに、先程までもサンチェスの先見の明には驚きを隠せないでいた。

 しかし、それすらも氷山の一角であったのかもしれない、と思うと恐ろしくなってくる。



「じゃあ、そろそろ話そうか。今回の計画の一番の大舞台、爆破からの生き残りについて―――」


 それは、今回の計画の言わば基幹となるもの。生き残りが成功しなければ、そもそも計画は成立しなかったのだ。

 計画の、根幹。最早全貌の大半を占めていると言っても過言ではない爆破からの生き残り、その全てが、明かされる。



  ◇



 全ては、フィリアルが突然隠れ家へと訪れた日に遡る。

 突然来訪したフィリアルは、アレキサンドラが何かを企んでいる、との報せを持ってサンチェスを訪問してきた。



「―――私は前々に『フィリアル軍団』……ネーミングはほっといて頂戴。そういう組織を作ったのよ」


 フィリアルはそのことから話しだした。

 日本において、日本での生活に困っている外国人を中心に集めた多国籍集団であったらしい。そして、フィリアルの好みか、スペインの人間は酷く多かったと。


「基本的に、彼らは全員元からの裏の人間。私が怪盗業から身を引いてからは前と同じ様な裏の仕事に従事していたらしいのだけど……そのうちの一人から、ある情報を得たの」


 組織の中でもかなりの古株で、信頼できる男よ、と言いながらフィリアルは話を続ける。


「アレキサンドラと思わしき人間が、取引をしようとしているらしい。しかも、取引で手に入れようとしているのは―――」


 フィリアルは、そこで一度言葉を切り、腕を大きく爆発させるように円を描いて広げた。


「―――爆弾よ」


「なるほど……とてもわかり易い説明だ」


「驚かないのね、それどころか私を馬鹿にするだけの余裕もある」


「いやいや、馬鹿になどしていないさ。そして、驚いていない、と言うことだけども、まあ……予想はしていたからね」


 サンチェスは、フィリアルからアレキサンドラが爆弾を仕入れようとしている、という話を聞いても全く表情を変えない。

 こんなときが、いつかは来ると予想していたし、実際にアレキサンドラ社壊滅のときから計画は練り続けていたのだから、当然だ。



「一旦は、私が言えるのはここまで」


「ここから先のストーリーは課金が必要なのかい? あるあるだけれども、僕はそこまで好きじゃないシステムだ」


「そうじゃないわよ、また詳しい情報も仕入れてくるから、今はここで我慢して、ってこと。というか、貴方もゲームとかやるのね、少し意外」


「怪盗業以外では内職くらいしかしていないからね。暇なんだよ」


「なるほど? じゃあ、私はこのくらいで帰るわ。また、会いましょう」


 そう言って、フィリアルが席を立つ。


「あぁ、紅茶もごちそうさま」


 手をひらりと振りながら、そのまま帰ろうとするフィリアル。しかし、サンチェスはそのフィリアルを、呼び止めた。



「それで? 今日味方だった君は、どこまで味方なのかな?」


「―――私が貴方達のファンであり続ける限り、私は貴方達の味方よ」


 サンチェスの問いかけに、フィリアルは確固たる意思を持った瞳をサンチェスに向け、それでいていたずらっぽくそう、言葉を返した。

 そして今度こそサンチェスの隠れ家をあとにする。

 サンチェスと三駒は、去りゆくフィリアルをただ見守るしか出来なかった。



  ◇



 二度目の、フィリアル来訪。

 今回も、アポイントメントなどは無かった。


「ようこそ、フィリアル。また、情報を仕入れてくれたのかな?」


「ええ、急ぎ計画を立てなければならないだろうし、少し急いできたのよ」


「それは有り難い。どうぞ座って、紅茶をどうぞ。三駒の煎れる紅茶、前も飲んだからわかると思うけど美味しいんだよ」


「ええ、そうね、美味しかった」


 フィリアルが席につく。

 その真正面にサンチェスと三駒が並んで座った。



「―――アレキサンドラが、取引を終わらせたらしいわ。手に入れたのは爆弾と、()()()


「なるほど、何となく、あちらの計画が見えてくるね」


「貴方ならすぐに察すると思っていたわ。そう、盗聴器は恐らく、爆弾とともに設置して貴方たちの会話を盗聴するため」


「そういうことか、こちらの声を聞きつつ、いいタイミングでドカーン、と言うわけだね」


「そんな可愛らしい音なら良いのだけどね」


 少しずつ、ヴェンガンザの策謀が水面から顔を出す。そして、サンチェスは少しだけはみ出ていた部分を引っ張って、水面からおもいっきりに引っ張り上げたのだ。


「さて、計画を立てるとしましょう? 急拵えの計画にはなってしまうけれど……この際仕方がない」


「おや、そんなところまで協力してくれるのかい?」


「ここまで足を突っ込んだのよ? もう片足だって抜けないわ」


「それもそうか、じゃあ頼むことにするよ」


「任されたわ」


 ここから、サンチェスとフィリアルは計画を立て始める。

 すぐにでも来たる、爆轟の音響くときに備えて。


完結まであと2話!?!!

リアルタイムで感想いいねブックマークできるのもあとたった10日と少しです、是非今のうちに!!

勿論、完結した後に盛り上げていただいても嬉しいです。完結後10年は覚えてて下さい!!


次回「サンチェスと種明かし」

6月1日投稿予定!!

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