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小説家になろう大戦

作者: 昼熊

「くらえ、撃滅インフィニティー‼」


 ノートパソコンを手にした学生服姿の少年が叫ぶと、彼の前に立っていた少女が手にした杖を突き出した。すると、驚いたことに杖の先端から半透明の赤い何かが勢いよく放出される。

 その赤い何かは地面をえぐりながら直進していく。その先にいるのは漆黒の鎧を身にまとい、頭から牛のような角が生えた金髪碧眼の青年。


「主、ご命令を」


 焦るそぶりすら見せない青年が、背後であくびをかみ殺している中年男性に指示を仰ぐ。

 その男は手にしていた文庫本を両手に構え、面倒臭そうに口を開く。


「格の違いを見せつけてやれ」

「承知」


 青年は自分の身の丈ほどもある大剣をこともなげに振り下ろす。

 赤い光は容易く真っ二つに切断され消滅する。


「な、なんだとっ⁉ ぼくの渾身の一撃がっ!」


 目の前の光景が信じられないのか、少年が呆然と立ち尽くしている。


「渾身ね……。おいおい、総PV数がギリギリ五桁程度の若造ごときの攻撃が通じるわけねえだろうが。俺は書籍化済みの作家様だぞ? その程度のPV数なんて一日で凌駕できる」


 その絶望的な差を目の当たりにして少年がくずおれる。

 前に立つ少女が心配そうに歩み寄り、何やら励ましているがその声は届いていない。


「現実ってのはこんなもんだ。じゃあな、新人。唸れ、漆黒の栄光」


 文庫本を手にした男が腕を振り下ろすと同時に、漆黒鎧の青年から放たれた闇の斬撃が少年少女を飲み込んだ。



 


「やっぱ、圧勝か」


 見物していたPC画面から目をそらし、大きく息を吐く。

 デビューしたての若者が挑むには無謀すぎる相手。少年の方は作家名すら知らなかったが、相手は俺でも知っている有名な『なろう作家』だ。


「しっかし、これは革新的すぎるだろ」

「ねえ、さっきのって新しいゲーム?」


 俺の後ろから覗き込んでいた妹がもっともな疑問を口にする。

 振り返るとストレートで艶のある黒髪が目に飛び込んできた。

 我が妹ながら美人に育ったものだ。その遺伝子を少し俺に分けてくれていたら、もっと人生楽しかっただろうな。

 なんて、妄想はどうでもいいか。質問に答えないと。

 

「近づきすぎだ。あれは『小説家になろう』が始めた新サービスだよ」

「えっと『小説家になろう』って小説投稿サイトだよね? お兄ちゃんも投稿しているやつ」


 身内で唯一そのことを知っている妹が小首をかしげながら口にする。

 俺は小説を書くのが趣味であり仕事だが、妹はアウトドア派だからな。小説よりも漫画派だ。


「そうだよ。「小説家になろう」(「なろう」)は日本最大級の投稿型小説サイトです。パソコン・スマートフォンに対応しております。小説を読みたい方・アマチュア作家・オンライン作家・小説サイトを管理されている方・プロ作家・出版社・小説業界の方まで、みんなのための小説サイトです。小説を自由に掲載したり、掲載された小説を無料でお読みいただけます」

「何その、サイトの説明文をコピペしたかのような説明」


 『小説家になろう』を開いて説明文を読んだだけだからな。


「でもさ、なんで小説投稿サイトでゲームやってんの? おかしくない?」

「これが新サービスなんだよ。小説を投稿した作者だけが遊べるやつでな」


 令和も二桁を超えた現在『小説家になろう』は三十周年を迎えた。この三十年もの間、ユーザー数は小説投稿サイトとして圧倒的一位だが、ここ数年登録者数と閲覧数が落ちている、らしい。

 そこで新しすぎる試みとして始めたのがこの『小説家になろう大戦』


「軽く説明すると、小説の評価ポイントがある程度たまった作者のみが遊べるゲームでな」

「評価ポイントってなに?」


 そこから説明しないと駄目なのか。


「あれだ、小説を読んだら各話の終わりに ポイントを入れて作者を応援しましょう! って書いてあるだろ」

「あーあれ。なんか星のマークが五個あるよね」

「その星をクリックしたら評価ポイントが入るんだよ。あとブックマークに入れてもポイントが加算される」

「そんなシステムだったんだ。知らなかった」


 読むだけ読んで評価を入れたことがない読者というのは意外に多い。

 作者側としては面白いと思ったら、迷わずその場でポイントを入れてほしいんだが。


「まあ、そのポイント数がある程度いくと、このゲームで遊ぶ権利をもらえるって訳だ」

「へえー。ちなみに兄ちゃんはこのゲームできるの?」

「まあな。これでも結構人気あるんだぞ。一応、書籍化もしているしな」


 というか専業作家だ。

 妹に小説を書いているのはバレているのだが、趣味の延長でたまたま書籍化した程度にしか思われていない。どれぐらいの収入を得ているのかも知らないはずだ。

 ネットで調べればすぐわかるはずなんだが、そこまでは興味がないようで助かる。


「で、そのゲーム内容なんだが、作者は自分の分身となるアバターを制作」

「アバターって、つまりゲーム内で動かすキャラメイクってことだよね」

「そうだな。リアルの自分そっくりにしてもいいし、まったくの別人にしてもいい」


 そこら辺は好みの問題だが、大半の人が別人に仕上げている。

 ちなみにこのキャラメイクがかなり凝っていて、自分とうり二つに仕上げようとしたら時間はかかるけど可能だったりするんだよな。


「うんうん、それで」


 ちょっとは興味があるようだな。妹が珍しく熱心に聞いている。

 スマホゲーはちょくちょくやっているから、この系統のゲームは大丈夫なんだろう。


「分身を作ったら今度は一緒に戦うキャラを作らないといけない」

「あー、さっき二人一組だったもんね」

「そうだな。ただし、今度のキャラは決まりがあって自由に作ることはできない」

「どういうこと?」

「自分の書いた小説の作中に出てきたキャラじゃないと駄目なんだよ。キャラは作中に準拠した見た目や能力になる」


 ここがこのゲームの肝だ。


「それって、投稿した小説を元にして勝手にキャラ制作されるってこと?」

「半分正解かな。作者は作中のどのキャラを使うかを選ぶことはできる」


 主人公でもライバルでも敵キャラでも選ぶのは自由だ。


「でもさ、それならめっちゃ強いラスボスとか選んだらいいだけじゃん? 不老不死で一撃で世界を滅ぼすようなキャラとか出たら勝ちようがないし」


 まあ、そう考えるのが普通だよな。

 俺も初めて聞いたときは同じことを考えた。


「そこがそう簡単じゃないんだよ。キャラの能力は確かに作中で使えるものだけど、その威力や範囲は評価ポイントの量で上下する」


 例えば『石化』や『即死』の能力があるキャラだったとしても、評価ポイントで勝てない相手には効き目がないに等しい。


「ええええっ! じゃあ、ポイントがいっぱいもらえる人気作であればあるほど強いキャラが使えるってこと?」

「まあ、そうなんだが。それだけじゃないんだよな、このゲーム。簡単にゲームの流れを見せるぞ」


 PCで『小説家になろう大戦』を起動させて、画面を見せながら説明を続ける。


「まずこのゲームはアバターの☆を削りきれば勝ちだ。ほら、頭の上に召喚ポイントと十個の☆が表示されているだろ」


 マウスを操作して、甚兵衛を着込んだ熊のアバターに矢印を移動させる。


「もしかしなくても、これ兄ちゃんのアバター?」

「おうよ。かわいいだろ」

「……ノーコメントで」


 この良さがわかるには、まだ若すぎたか。


「でだ。その頭に浮かぶ数字がポイントだ」

「一、十、百、千、万……ねえ、桁数おかしくない? 万超えているんだけど」

「間違ってないぞ。それは作品の総PV数と同じだからな。ちなみにPV数ってのは今まで何回その小説が読まれたか、だ」

「兄ちゃんの小説数万回も読まれてるんだ、へええええ」


 生まれて初めて妹からの尊敬の眼差しを浴びている。

 実際はこれでも本当の総PVの千分の一なんだけどな。このゲームの召喚ポイントは総PV数割る千となっている。


「ええと、つまり。キャラの攻撃力や能力が評価ポイントに比例して、召喚するには総PV数を元にした召喚ポイントが必要ってこと?」

「正解」


 単純に言ってしまえばそうだ。


「説明続けるぞ。まずこのゲームはターン制のバトルで、内容はカードゲームだ」

「ターン制はわかるけど、どこにカード要素が?」

「まあ観てみろって」


 チュートリアル開始ボタンを押すと、まず俺に五枚のカードが配られる。

 そこには美麗なキャラ絵と武器や防具の絵が描かれていた。


「あれ、キャラって一体じゃないの?」

「作中のキャラなら五十体まで使用可能だ。手札の説明をすると一番左のが処女作の主人公。その次が四作目のヒロイン。更に五作目のライバルキャラだな。あとの二枚は作中に出てきた槍と魔道具だ」

「なるほど。ねえねえ、カードの上と下にある数字って何?」

「上は召喚コストだな。つまり、それだけのポイントを消費しないとそのキャラを召喚できない」

「左のは召喚コスト安いけど、真ん中のはすっごく高いね」


「強いキャラを召喚しようとすれば自分の召喚ポイントがごっそり削られる。有名でPVも評価ポイントも多い作品のキャラ召喚したら、そりゃ強いは強いんだが召喚ポイントが一気に減る、というデメリットもある。強いキャラを一体召喚したら、あとはもう召喚できなくなる、とかな」

「一応、バランスを取ろうとはしてるんだ。下の数字二つは? 15/7 とか書いているけど」

「それはキャラごとの攻撃力と生命力だな。説明は不要だと思うが、攻撃力は相手に与えるダメージ。生命力はなくなったらキャラがリタイアってやつだ」

「でもさ、結局めっちゃ強いキャラ出たら、それで終わりじゃないの?」

「そうでもないんだよ。まず、俺のターンだからこのキャラ……洗浄勇者を召喚する」


 清掃機器であるポリッシャーを手にした清掃服姿の男が召喚された。


 15/7 洗浄勇者


「おー。それで相手を攻撃したら一回で死ぬよね。だって相手の☆が十個しかないし。じゃあ、まずアタックだ!」


 ノリノリの妹が画面を指さし攻撃しろとせかす。


「そうはいかないんだよ。それだと先行が完全有利になるだろ。カードゲームによくある要素で、召喚したばかりのキャラはこのターン動けないんだよ。なので、攻撃できるのは次の順番が回ってきてからだ」

「あっ、そうか」

「付け加えると、キャラの攻撃力が高くても削れるのは☆一つだけ。ようはキャラの攻撃を十回アバターに当てたら勝ち」

「なるほど。そうしないと、強いキャラ召喚するのが断然有利になっちゃうもんね」


 それから敵もキャラを召喚したが、こちらよりも弱かったので気にせず洗浄勇者が攻撃。


「あれ、今の敵キャラが攻撃受けたよね? アバターにダメージ与えるゲームじゃないの?」

「アバターへの攻撃は召喚したキャラで防げるんだよ。相手の方が攻撃力が高ければ、攻撃を仕掛けた方が倒される。とまあ、単純に言えばそんな感じだが、あとはキャラごとの固有スキルとかも絡んできて、以外と戦略性のあるゲームになってる」

「でもさ、やっぱり有名な作家だとPVが多くて召喚ポイントも多いし、キャラも強いってのは変わりないよね」

「倒されにくいし、カードも強くなるのは間違いない。だからこそ、作家側としても小説の人気を伸ばそうと必死になるだろ。あと救済措置としては仲のいい作家から一キャラずつなら借りることが可能になってるよ」

「えっ! じゃあ、有名作家と友達になれば無双じゃん!」


 いいことを聞いたとばかりに部屋を飛び出していく妹。

 妹よ、まずどうやって有名作家と仲良くなるんだ? 

 あと強いキャラを借りられても召喚コストはどうする?

 言い忘れていたけど、他人から借りたキャラは一試合一体までしか使えないんだぞ?

 それに、そもそも小説書いてないじゃないか……。

 

 

 


 妹が立ち去ったので改めてゲームに向き合う。

 今はランキング戦にはまっているのだが、これは同じレベルの相手としか戦わないので必然的に接戦になる。一番バランスが取れたモードだろう。

 ちなみに戦える相手の作家はPVや評価ポイントが近い相手なので、ゲーム内でも作家としてもライバルポジションの相手となる。

 対戦待ちをしていると相手が決まったようだ。

 プレイヤーのアバターはサラリーマン風か。作者名は……知っている。小説を読んだこともある。何作か書籍化していて、コミカライズもされていた。


 ――が、あまりいい評判は聞かない作家だ。他作品を露骨にパクっているだとか、他にも悪い噂話を何度も耳にしたことがある。

 とはいえ証拠もないし、妬みによる事実無根の誹謗中傷という可能性もあるのでなんともいえないのだが。人気が出れば必然的にアンチは湧いてくる。これが有名税というやつか。

 ただ、個人的にあまり好きな作家ではない。以前、とある出版社のパーティーで顔合わせをしたことがあるのだが、有名な作家には腰が低く、俺のような売れていない作家には態度がでかいという、ベタな小悪党のような性格をしていた。


「だけどゲームには関係ないよな。相手にとって不足なしだ」


 試合が始まり五枚の手札が配られる。

 洗浄勇者、自動販売機、ブラックタイガー、サラリーマン、金色のトカゲ、か。悪くない。

 まずは俺のターンからか。一ターンにキャラは一体しか召喚できないので、まずは様子見で『洗浄勇者』を出す。


 15/7 洗浄勇者

 

【まずは様子見ですか】


 おっとチャットが表示された。このゲームは対戦相手と会話できる仕様になっている。

 作家同士の交流目的で採用された機能だが、ほとんどの人が挨拶程度にしか使わない。だけど、返事はしておくのが礼儀だよな。


【そんなところです。よろしくお願いします】


 相手のターンになり、むこうもキャラを召喚する。


 30/35 残虐勇者


 確か書籍化にもなった作品の主役だったか。一時期に流行った復讐系の主人公で読んだ感想としては……あまり好きになれなかったキャラだ。

 自意識過剰で元々性格が悪く、自業自得だというのに逆恨みして復讐するというこじれた性格をしていた。

 とはいえ、能力としては高い。

 これだと普通に攻撃を仕掛けても防がれて倒されるだけ。攻撃力も生命力もこちらが劣っている。

 俺のターンか。カードを一枚引く。

 おっといいのが来たぞ。早速、そのキャラを召喚しよう。


 35/20 怪力聖職者


 初めて総合日間ランキング一位をとった作品の主人公。怪力が自慢なだけあって攻撃力に特化している。これで相手が攻撃を仕掛けてきても相打ちに持ち込めるぞ。

 これで向こうも警戒してしばらくは様子見が続――なんだとっ⁉

 かまわず攻撃してきた!

 もちろん、怪力聖職者で防御だ。


【そうくると思ったよ】


 チャットが表示されると同時に二体がぶつかり、相打ちになった。


【特殊スキル発動。陰湿な復讐】


 残虐勇者が消滅する瞬間、どす黒いもやが体からあふれ、それが傍観していた洗浄勇者を飲み込む。

 しまった! スキルの確認を怠っていた。初歩中の初歩だろ!


【陰湿な復讐は倒されたときに、相手のキャラを一体、道連れにできる】


 ご丁寧にチャットで説明してくれるとは。

 そういうノリでくるなら作家として付き合うか。


【してやられたよ。だが、勝負はここからだ!】


 そこからは一進一退の攻防が続いた。

 互いの☆を削り合い、ゲームは終盤へと差し掛かる。

 俺の☆は残り二つ、相手の☆は残り一つ。

 敵アバターの前にいるキャラは一体。こちらは三体。

 今は相手のターンだが、向こうがこのターンでキャラを二体以上召喚できなければ、次のターンにこちらの攻撃が通って勝ちとなる。

 油断はできないが敵の書籍化された作品のメインキャラは出尽くしている。おまけに手札は一枚しかない。

 比べて俺の方は召喚ポイントがまだ余っていて、それなりに強いキャラが手札にある。


「勝ったな」


 勝利を確信して思わずつぶやく。


【画面の向こうで勝ち誇っているのではないか?】


 俺の心情を見透かしたような文字。

 一瞬ドキッとしたが、この状況なら誰だって予想がつくか。


【いえいえ、勝負は最後までわかりませんから】

【はっ。俺は……あんたが嫌いだ。俺のようにテンプレで流行り物ばっかり書いているヤツを見下してんだろ?】


 おいおい、いきなり何言ってんだ。

 このチャットは対戦相手にしか見えないからって、その発言はアウトだろ。


【そんなことはありませんよ。私だって定番の異世界物しか書いてませんし】

【……どうだか。あんたはどうかしらんが、俺はてめえが大っ嫌いだ】


 なんでこんなに嫌われているのかは知らないが、二度と関わらないようにしよう。あとで対戦禁止に指定しておかないと。

 これで負けたら腹が立つところだったが、負け犬の遠吠えとでも思って無視だ無視。

 プレイをしないで放置していると制限時間をオーバーしてしまい負けが確定する。なのでこのまま相手は何もしないで終わるのだろう。そう考えていると、動きがあった。

 相手は一枚手札を引くと、手元にあったカードを出す。


【ちょろいん王女を生け贄にして、召喚!】


 ……う、嘘だろ!


 99/88 追放されしチートキャラ


【追放されしチートキャラのスキル発動。このキャラが場に出ると攻撃力を敵キャラに割り振ることができる。つまり、三体に33ずつダメージを与える!】


 召喚していた三体がチートキャラのスキル効果により霧散する。

 俺のキャラが全滅だとっ⁉

 そのとんでもない能力にも驚かされたが、一番の問題はキャラの姿だ。数年前に書籍化された有名な作品の主人公。

 だけど、作者はこの人じゃない。となると、知り合いにキャラを借りたのか。でも、既に他人から借りたキャラは召喚済みだ。


【ちょっと待ってくれ。なんでそのキャラを召喚できた。借りたキャラは一度出したよな?】

【確かに 借りた キャラは出したさ】


 なんだその意味ありげなスペースは。

 借りたキャラは使ったと認めた。だが、こうやってキャラを出している。それの意味することは何だ? 

 こいつは何が言いたい。……まさか、そういうこと、なのか?


【まさかとは思うが、そいつはお前の作品のキャラなのか。別ペンネームの】

【よくわかったじゃないか】


 同じアカウントを使って、作品ごとにペンネームを変更することは確かに可能だ。それ自体はなんら問題はない。

 しかし、その作品の作者には悪い噂があった。一度アカウント停止を食らって『小説家になろう』に二度と投稿できなくなったというのに、作者名を変えてしれっと復活をしている、と。


【あの噂が本当だったのか。わかっているのか、それは規約違反だ。禁止事項に『一人が複数のアカウントを保有する行為又は複数人が1つのアカウントを共同して保有する行為。ただし、当グループが別に認めたものを除く』とあるのを知らないとは言わせない】


【もちろん、知っているさ。だけどな、こうやって上手くやればバレねえんだよ。世の中はパクろうが違反しようがやったもんが勝ちなんだよ。オリジナル? 文章力? チートなし? きれい事なんて無駄無駄。人気が出て売れたらなんだっていいんだ! 実際俺の黒い噂を知っているはずの出版社からの依頼はひっきりなしだ。これが世の中ってもんだよ。きひゃひゃひゃひゃ!】


 文字だけだというのに憎たらしい顔が頭に浮かぶ。

 当人の顔を知っているだけに苛立ちが倍増する。が、この文章をわざわざ入力してんだよな?

 その姿を想像すると、少し怒りが収まった。


【さあ、てめえの番だぜ。何もせずに時間切れで終わるか? まあ、雑魚にはそれがお似合いだろ】


 悔しい。だけど、今の俺の手札ではどうしようもない。

 わずかでも可能性があるとしたら、次に引くカードだ。この一枚にすべての望みをかけるしかない!

 深呼吸をして雑念を追い出し、カードを引く。


【次の一手は決まった】

【おいおい、この期に及んでどうすんだよ。俺が別アカを出した時点でてめえの勝ち目はねえ!】


 立場が逆転したことにより余裕の態度を崩さない相手。

 その顔を絶望で染めてやるよ。


【俺のやることは……この会話ログを運営に送る!】

【て、てめえ、ちょっと待て! それは卑怯だろ⁉ 待て考えな】


 ゲームを終了して、運営に報告をする。


 よっし、勝った!





小説家になろうのルールを初心者にもわかりやすく説明してみました。

あと、こんなゲーム作ってくれませんかね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] (爆笑) ほんとにあったら良いですね。 執筆活動の励みになりそう。
[一言] 超絶クソ笑える作品でした。敵のモデルになっているのはまさかwのアノ人でしょうか?
[一言] 電撃文庫大戦は電源有ゲームで あったような? あれは OBの佐島先生の魔法科高校出て居るしwww
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