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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

有馬 青は気遣い上手

作者: 癒え血

お時間いただきありがとうございます。

 9月の末頃だった。


「おい有馬〜カツサンド買って来〜い」

 

 そう言って俺の肩に手を置くのはクラスで人気者の伊藤学武だ。


 俺は、この言葉を言い返すことが出来ない。だから小さい声で死んじまえって呟く。俺に可能な細やかな抵抗だ。勿論小さい声でも聞こえてしまったらダメだ。だけど、このままパシリ地獄が続くのなら聞こえてしまってもいいかもしれない。


 俺は伊藤の方向を見て「分かった」と言って購買に向かって行った。




 購買に着くと人集りができていた。有馬青にとってパシリにされるのは何も初めてのことでは無い。基本的に学校に来ると毎日パシられる。


「おばちゃん。カツサンド一個お願いします」

「お!今日も来たんだね〜。いつもありがとうね」

 

最早毎回パシられる有馬は購買の常連扱いだった。有馬にとってそれはクソほど嬉しく無いことなのだ。だって自分が購買に来ているのはパシリとして来ているのだから。


 有馬は、普通に弁当を持って学校に来ているのに、腐れ伊藤の所為での常連扱い。それはそう嬉しいと思える道理が無い。有馬は側から見てもただの苦労人である。


「350円になります。カツサンド好きだねぇ」

「カツサンド…最近嫌いです」

「そ、そうかい。ま、まぁ、いつも本当にありがとうね」

「気にしないでください」


 有馬はカツサンドをおばちゃんから受け取った。


 有馬の頭の中にはカツサンドへの憎しみで溢れている。カツサンドを嫌いになったのは伊藤が関与している。有馬は別に伊藤と仲が良い訳では無い。むしろ有馬にとって伊藤はゴミの様な嫌悪する存在ですらある。



「伊藤にカツサンドをこのまま渡してもアイツは感謝の一言すら言えないんだよなぁ。はぁー、やっぱり伊藤が人気者の理由が分からないな。クラスメイトは人を見る目すら無いのか?仕方ないか…ガキだし」



 有馬は伊藤の悪口を購買からの帰り道で沢山言っていた。更に伊藤だけではなく、クラスメイトの悪口にも発展していた。有馬の中学生からの親友が見ていたのなら慰めたのだろう。だが、有馬の親友とは高校が違う為この高校にはいなかった。


 有馬はパシリられるのが本当に大嫌いだ。ただで人のことを使うって行為に疑問を抱かないクラスメイトには怒りすらある。それはそうだ。有馬は現在高校3年生である。つまり高校に入ってから3年間パシリをしていたことになる。これだけの年月パシリやっていれば伊藤のことを嫌いになるには十分である。有馬の場合はクラスメイトも嫌いなのだがそれも仕方ない。パシリに疑問を抱かない連中に慈悲はないだろう。


 有馬は教室に着いた。


「お!有馬〜。帰って来たか。カツサンド寄越せ。」

 

 有馬は手のひらを出して人差し指と親指で丸を作り金寄越せのサインをだした。


「金か…。今は無いから後で払う。だからカツサンド寄越せ」

 

 有馬はいつも通り自分で立て替えるのかと思った。有馬の中で伊藤の評価は最早地中である。つくづく頭がおかしい話だと思う。けれどパシリをしている奴にクラスの中の人権は無いのだ。


「分かった…後で返せ」

「カツサンドゲットォォ」

 

 伊藤が馬鹿みたいに雄叫びをあげている。


 有馬はまた聞こえないぐらいの声で「頭逝ってるんちゃう?」って言った。

 良識ある人間がこの光景を見ていたら間違い無く頭がおかしいと思うだろう。有馬青は当然のことを言っているだけである。


 そもそもこの様な行動は信頼できる仲間同士だから出来ることであり、脳味噌が詰まってない時期のクソガキ同士ですると碌なことが起こらない。


 偶に見ることがある猿山の大将を煽てるクラスメイトには有馬は辟易している。単なる同調圧力であるが、学生にはどうしようもないのであった。

 

 そんな文句ばかり言っても仕方ないといった感じに有馬は母親が作ってくれた弁当を食べ始めた。


 有馬は高校デビューを失敗したので友達がいない。そもそも有馬は会話することを面倒だと思っている。だから有馬に友達ができる理由もなかった。


 文句を言った有馬は自分の席に戻って行った。


 自分の席で「いただきます」と有馬はしんみりとした声で言った。有馬にとって食事は1日で一番楽しいことである。そんな有馬が最近食事中にしんみりとするのには理由が存在する。3年生になってもクラス替えがなかった事で酷く落ち込んでる。まぁ、そんな事は人数の少ない田舎の高校では割と有る。


 有馬青の所属する的場(まとば)工業高校は、私立である。私立で工業がつく高校となれば当たり前だが資格を沢山取れることがメリットだ。逆に言えばそれ以外無い。大体の工業生は進学する人はいない。有馬青も例外ではない。就職組だ。


 2年生当たりの頃に大体の進路の方向性が決まる。有馬青とっては資格の関係上土木系の会社に行くのが望ましい。有馬青にが工業高校に入った理由は単純である。


 母親を楽させてあげたかったからだ。

 

 有馬は物心ついた頃から母子家庭だから…就職組なのもそれが理由だ。


大学にお金を気にせずに行っていいと言われたら誰だって行きたいと言うだろう…裕福であれば。有馬の母親は気にせず大学に行けって言ったが有馬は断った。


「クソガキが…」


 有馬青は思った。


 クラスメイトにはギブアンドテイクって言葉が足りないと思う。誰かが苦しんでいてもクラスメイト達は基本的に助けない。それなのに自分達は優先して助けろと言う。本当に頭の可笑しな話だ。


「母さんがくれた金を無駄遣いさせやがって……」


 有馬青は怒りながら母親が作ってくれた弁当を食べ終えた。有馬青は毎日この様な出来事でイライラしながら弁当を食べている。そりゃあ自分の母親が時間を掛けて作ってくれた弁当も味を感じなくなる。



ー放課後 PC室


 放課後、有馬青はPC室に居た。


 有馬青は情報処理部に入っていた。入部した理由は分かりやすく将来の為だ。若いうちにPCに触れておけば将来的に役に立つと思ったからだ。有馬青の自論で、技術者になるのにPCすら動かせなかったらそれはもうゴミである。


 有馬青の所属していた部活は情報処理部は夏頃には引退をする。引退してから、それ以降情報処理に来る3年は基本的にいない。当然だ。皆9月頃は就職活動で忙しいのだ。有馬は勉強は出来ない。けれど…頭は良い。


 これも有馬の自論だが、バカ達は今更ヤバイヤバイ言いながら勉強しているけど入学した頃から勉強しとけば就職なんて簡単に出来る。有馬は非常に先を見る。ただ普通の学生は面倒臭いと言って考えることを放棄する。これが有馬が他の学生より勉強が出来なくても頭が良い理由だ。


 だから有馬青はヤバイヤバイ言わずに思う存分情報処理部にお邪魔して自分の将来に投資が出来ていた。


「有馬…。今日は何やっているんだ?」


 情報処理部の顧問は有馬に話掛けた。有馬は顔を顧問に向けた。


「先生、エクセルのマクロを練習中です。書類整理もこれを覚えれば簡単だと卒業した先輩から教えて貰ったので練習しています」


「マクロかぁ。先生はそんな難しいことは教えてあげれないな…教えてあげれないごめんな。先生も来年の情報処理部の為に覚えてくるかな」


 情報処理部の顧問は優しいかった。だから有馬に教える為に近づいたみたいだ。


「先生…ありがとうございます」

「感謝すんな、お前にはこっちも助けられてんだ。だから気にすんな」


 有馬はクラスに居る時間よりPC室に居る時間の方が居心地が良いと感じている。だから有馬は卒業するまでPC室に入り浸ることだろう。


「何か助けましたっけ?まぁ、分かりました」

「忘れんのか?そーか、お前はそういう奴だったな」


 有馬は部員の悩み等を率先して解決したりしてた。有馬青は責任感が強く面倒見が良い。だから部顧問はかなり助けられていた。だけど本人には自覚がないのだった。


 そして有馬青にとって居心地の良い時間はあっという間に過ぎていった。



ー帰り道


「やっぱり部活は楽しいな…」


 有馬青は独り言を言いながら家に帰っていた。


 ピロリン 


 有馬のスマホにアプリ経由のメッセージが届いた。相手は如何やら母親みたいだ。


「母さんからか…。ん、今日は帰りが遅くなるって…。そーか…。母さん、来年から楽させてあげるから…。少しだけ待っててね」


 有馬母から息子の青に届いたメッセージは、「今日は帰りが遅くなる。だから悪いんだけど冷蔵庫漁って好きなもの食べて…。ごめんね青。追伸母より」と言う感じだ。


「スーパーによるかな…。家の冷蔵庫の中にもやし以外入っていなかったの覚えているし…」


 もやしは、貧乏人とって万能の食材である。安くて色々な料理に応用が効いてしまうので。



ースーパー


「母さん…今日帰ったらいつもより疲れてるかもしれないな。なら、食べやすいものするかな…」


 有馬青は気遣いを忘れない。

反応有れば続き書きたいです。

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