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学園都市へ―2―


「魚、多いですね」

 初めてあった日から、三週間が経った。

 三週間の間、特に何か事件と呼べるものは起こらず、平和そのものだった。

 

そして、嬉しいことに三週間で憎き魚の干物も随分減って、明日の朝でなくなるかというくらいになった。

 嬉しいんだが、食料に困るようになってしまうかもという点では嬉しくないものである。

「そうだな、多いな」

 はやく魚以外のものが食べたい。

 それだけを切実に思っている。


「スカイさん、もうすぐつきますね。学園都市に」

 コアが、魚の干物をつまみながら言う。

「そっか、もうすぐか。早いものだな」

 学園都市についてしまえば、コアとはさようならになる。そう、さようならになるんだよな。


 今まで、一緒に過ごした人と別れることも、死別したこともたくさんある。回数を経るごとに感じる悲しみや寂しさは減ってきて、もうほとんど感じないはずなのに。


 コアは今までの人とはどこか違う……。どこがとは言い表せないのだが、確実に違う。


「あと少し、よろしくお願いします」

「ああ……」




 突然、強風が吹いた。



「きゃあ!」

「…?!」

 オレは直感した。

 これはただの強い風ではない。人為的に、魔法で起こされた風だ。

「誰だ!」

 オレは周りに向かって、叫んだ。

 これは魔法なのだから絶対に術者がいるはずなのだ。

「……あ、」

 コアは、何かに気づいてしまったようで、こえをもらした。


「敵意がないのなら出てこい」


「わかっている、その魔法は私が放ったものだ」

 茂みの影から出てきたのは初老の燕尾服を着こなした男だった。しかもその男は、エルフだった。

 なかなか自分たちの里から出てこないエルフがどこかに使えているのか。珍しい。

 それは置いといて。

「……、なぜだ?」

 何かあるとすれば、コアなのだか……、そうだとして、連れ戻しに来たのか?


「簡単なことです、彼女を連れ戻せと彼女の両親に言われたからです」

 このエルフは執事といったところだろうか?

「そうか。ならば、名乗ってもらおうか」

 おそらく、このエルフの言っていることはコアの反応からして、真実だ。

 だったら、名乗るのは礼儀だと思う。

 名乗らない執事を雇っている家なんかあるだけ無駄だとオレは考えているからな。


「失礼……、私としたことが。私はオスフェリア家の執事をしています、トーリ•フェーラーと申します。」


 オスフェリア…?どこかで聞いたことがある、遠い昔、なんだっただろうか。

 それよりだ、相手が名乗ったのだ。オレも名乗らなければな。

「オレはスカイ•リーデルという。」


「リーデルとは、あの五百年ほど前に表舞台から消えたリーデル家でしょうか?」

 フェーラーは、リーデルという家名を聞いて、そんな質問をした。

「……わからない。昔のことは、おぼえていないんだ」


「そうですか、スカイさん。コア様は……」

「ちょっと、私抜きで進めないでくださいよ!」

 頬を膨らませて、腰に手を当てたコアが、オレとフェーラーの間に入ってきた。


「私は、帰りません。お兄ちゃんを探すの、お父様とお母様に、そう言っておいて……!」

 コアは、フェーラーの目をしっかりとみて告げた。コアの決意が感じられる。


「……やはり、戻る気はないのですね」

 フェーラーはわかっていたようである。

「私は無理矢理に連れ戻す気はありません、ただ、近くで守らせてください」

 そして、コアのことをほうって行く気もないらしい。


「わかりました。あの……スカイさん、いいですか?フェーラーがいても」

 コアは俺に反対されるのをこわがっているのか、恐る恐る聞いてきた。


 オレは反対する気はないし、むしろ安心できたと言っていい。

 オレは心配だったのだ。

 オレと離れて、知り合いのもとまで行く間に、誘拐されないか、騙されたりしないか。それ以外にも、心配しかなかったのだ。

「大丈夫だ。そっちのほうが安心できる」


 こうして、学園都市まであと少し、フェーラーがついてくることになった。


 これから、更新日を二日に一回の更新にしようと思います。

 そろそろ、夏が終わってしまうので。

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