表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/39

ある日、森の中

夏休みが終わってしまう。

 暇だな、すごく暇。



 憎い魚が大量に取れたから、しばらく食料の心配はなくなった。ざっと考えて、一週間は持つだろうな。一週間も魚が続くなんて考えたくもないけど。



 今から出発するが、まずは街道にでないとな。道なき道を行くっていうのも悪くはなさそうだけど、学園都市に向かうには、街道を通って行くのが効率いいしな。



 もちろん、日中は歩いていくけど、夜の間は多少魔法をがんがん使っても大丈夫なはず。ずっと歩いていくなんて嫌なこった。



 だから、オレは唱える。


飛行フライ


 久しぶりかもしれないな、魔法を使うのも。最近は死のう、死のうと思っていて、移動には危険な馬車とか、飛行船とかに乗って移動していたのである。

 今は、目的がむやみに死にに行くことじゃなくて、効率的にいかに確実に死ぬかということが目的だからな。


 

 しかしこれは快適だな。でも、今は日中だからそろそろ降りないと。誰かに見られたらへんなことになりそうで……。

 飛行フライは超級魔法だったか、帝級魔法だったか……、なんにしろ一般的な魔法じゃなかったはずなのだから。

 オレは静かに地面に降りていく。


「っ!?」


 かさり、と森から音がした。けものの気配はないはずだ。ということは、人間か?

 見られたとなると面倒くさいことになるな。

 例えば、お前はなぜこんなところにいる?こんなところで何をしていた?なんていうふうに聞かれてしまうからな。

 しかも、近くで事故があったんだ。疑われるだろう。


「誰だ?」


 警戒しながらも、威圧感を与えないように注意しながら音を出した奴に声をかける。


「え、あ、その。ごめん、なさい」


 そう言って、森の中から出てきたのは可憐な少女だった。

 少女の服装は旅をしているという風ではなく、森の中にふさわしくないきらびやかなワンピースを着ていた。金色の髪は艶があって、その髪を緩く三つ編みをしてまとめていた。


「え?」


 そんな少女の登場に間の抜けた声を出してしまう。


「うああ、見ちゃだめ、でしたよね。ごめんなさい」


 オレが、少女のあまりにも場違いな服装に驚いて、声をあげたのを、少女はしどろもどろになりながらも、謝り続ける。


 すごく気になるんだよな。この少女。


「見てしまったことは別、気にしていないから。だから質問いい?」


 あ、少女がキョトンとした顔でオレを見つめている。失敗したか?

 いきなり聞かれちゃ、誰でも驚くし、不審におもうよな。


「えと、はい。大丈夫です……!」

「ほんとにいいのか?」

「はい」

 

 少女はしばらく驚いていたが、快諾してくれた。

 オレは早速、疑問に思っていたことを少女にぶつけてみた。


「君はどうして、こんな場所にそんな格好でいるんだ?」


「……」


 少女からかえってきたのは、俺が全く予想していなかった答だった。


「お兄ちゃんを探しに行くために、さっき森の中から出てきたんです。飛び出してきたので、服は着ていたものなんです」




地獄がはじまる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ