01 勇者アイスの冒険
初投稿です。頑張ります!
――それはある異世界物語。勇者は今、旅立つ。
「起きなさい、アイス。今日はあなたの16歳の誕生日、遂にこの日が来ましたよ」
あ、やべぇ。マジで母さんが俺を起こしにきたぞ。
「――。……」
まずい、本当に俺に魔王を倒しに行けと?
「起きなさい、アイス。さあ、お城で王様があなたを待っていますよ」
「……」
知らねぇ、俺は行かないぞ。寝たふりだ。
「アイス。……アイス! ……こらーっ! この母にそんな手が通用すると思って――るのっ!」
『どーん!』
「ぎゃああ――――!」
母、ルビーの攻撃! 巨大なヒップアタックによりアイスは10のダメージ!
「こらっ! アイス、今のなんなの!? 吹き出しみたいなの、何? 巨大なヒップアタック? アイスはこの母を肥えたブタさんのように思ってたのね!」
「ち、違う! そこまでは言ってない、冗談だから!」
どうやら口に出してしまったらしい。
「うっ、うわー~ん! アイスが母をバカにしたー!」
「ちょ、ちょっと待てよ、泣くなって――」
うわー、めんどくせぇ。マジでいったいどうしてこうなった……。
まずは自己紹介をしようか。俺の名前はアイス=フレイバー。しがない農村に母親と住んでいる16歳だ。実はちょっとした秘密を持っている。けど、そのことについてはまた今度語らせてくれ。
そして今、絶賛泣き叫んでいるのはルビー=フレイバー。俺の母親だ。ちょっと変わった母親ではあるけれど、母さんは超がつく程の美人でもある。
だが、しかし。
何故か母さんは俺を勇者だと思い込んでいるようなんだ。俺が赤ん坊のころからそれを信じて疑わない。そして勇者教育なるものを俺は母さんから受けてきたんだ。
マジでなんで? まさか名前も知らない父親が実は勇者だったとか?
その父親が魔王を倒しにいったけど、返り討ちにあって父親の仇を俺に取れとか?
わからない。母さんの考えがわからない。
父親のことは一度として母さんに聞いたことはないし、母さんも話してくれたことはない。
――そろそろ聞くか?
「って、いつまでに俺の上に乗ってんだよ! 早く降りてくれ、重いから!」
「! 重い!? この母が太っちょトロールのように重いですって!?」
あ、まずい。
「うわー~ん! アイスが母はトロールだってバカにしたー!」
「言ってないだろ! わ、わかったよ! 行けばいいんだろっ。行くよ、王様に会いに行くよ!」
ピタリ。と母さんは泣き止んだ。おいおい、あからさまに嘘泣きなんだな。
「さあ、アイス。世界を救う為にはまずは仲間を集めなさい」
「……」
なんか、準備したようなセリフとポーズを決めているんだが。それに仲間って。俺と冒険しようって奴はいないと思うな。
「さあ、そしてこれは母からの贈り物です。これを装備して勇者アイスとして旅立つのです」
そう言うと母さんは俺のベットの下から装備を一式取り出した。
あー、いつの間にそんな物を隠したんだ。
「さあ、これは稲妻の剣よ! これはきっとアイスの力になってくれるわ」
「……稲妻の剣? それって世界に十本あると伝えられている伝説の武器の一つの? ふーん、レプリカでも格好いいな。」
ほう、母さんも頑張ったんだな。図鑑で見たことあるけど本物そっくりじゃん。レプリカでもかなり高そうな剣だ。
「レプリカ? そんな訳ないでしょ、アイス。これは本物よ」
「は? え?」
「さあ、そしてこれは魔法の盾と勇者の服よ」
「……」
「どうしたの?」
「まさかそれも本物だって言うんじゃないよな?」
「勿論、本物よ」
「……あー、は?」
ニッコニコに微笑んでいる母さんが勝ち誇った顔で俺を見ている。
どうなってんの? これが本物なら国宝級の宝物なんですけど。
そして、更に信じられないことに気が付く。
「母さん、なんでそんな格好してるんだ? 何処かに出かけるのか?」
気のせいか? 母さんはまるで冒険にでも出発するかのような身なりをしている。
「何を言ってるの、アイス。勇者アイスの一人目のパーティーメンバーはこの母、ルビー=フレイバーよ!」
「は?」
――16歳の誕生日、俺のとんでもない冒険が始まったんだ。
これから頑張ります。ブクマ、評価して下さると嬉しいです!感想もお待ちしてます。