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魔力ゼロの迷い人  作者: お茶
ルートⅠ
6/50

6話 vs異能力者 (2)

 気がつけば僕は、全速力で駆け出していた。

 策なんてない。あるのは、あの男を一発ぶん殴ってやりたい、ただそれだけの理由。

 だが相手も棒立ちで殴られてくれるわけではなく、


「はっ! おもしれぇ!」


 向かってくる僕を見て、男は楽しそうに数発のジャブを放った。


「……っ!」


 僕はとっさに方向転換し避けようとする。

 しかし、時すでに遅く、


「ぐっあっ!」


 打撃の連打が、体中へと襲いかかる。

 思わず倒れてしまいそうになるも、右手を膝に立てなんとかこらえる。

 目の前の敵は、そんな隙をも見逃さなかった。


「おらおら! もういっちょいくぞ!」


 男は上半身をひねり、勢いよくアッパーを放った。


「や、ば――!」


 僕は必死に考える。次はどこに攻撃が飛んでくるかを。

 必死に予測しようとする。

 だが、それは無駄な行為だとすぐに気がつく。

 読めないのだ。どう予測しようと、不規則すぎて。


「だったら――!」


 まさに苦肉の策の末だった。

 僕は何も考えず、がむしゃらに、右方向へと、大きく横っ飛びをした。


 ……どうだ。

 向こうが不規則なら、こっちも不規則に動いてやる。

 そんな愚策とも言える策。


「……?」


 一瞬の静寂と、妙な間が生まれる。

 僕は視線を自分の体へと向け、どこにも変化がない事を確認する。

 だがそんな中、男の様子がなにやらおかしかった。


「くっくくく……」

 

 男は顔を伏せ、肩を小刻みに震わせていた。

 一瞬何をしているのか分からなかった。

 しかし、それが笑いをこらえている仕草だと気づいた瞬間、既に手遅れだった。


「あがぁ!?」


 突如、みぞおちを強烈な痛みが襲う。

 回避したと思っていた攻撃、それは、今になって、時間差によってやってきたのだ。

 あまりの痛みに体勢を保つ事さえも困難になり、僕はそのまま地面に倒れこんでしまう。


「ガキィ、もう終わりか? さっきまで威勢はどうしたァ!?」


「う、ぐ……」


 痛みをこらえるのに精一杯で、言葉を返す余力さえもない。

 泣きたくなる。意気揚々と突っ込んでいって、このざまという無力さに。


「もう終わりかよつまんねぇな。しゃーねぇ、じゃあ終わりにするか、あばよ」


 トドメと言わんばかりに、男は激しく地面を踏み鳴らした。


「っ!」


 これで終わり。

 ――のはずだった。


「……あぁ??」


 だがそこには、なんら変わらない光景。

 そして僕の体には、何の変化も無かった。


「くそが……なら、これでどう、だ!」


 男は、虚空を思い切り蹴り上げた。

 しかし、それでも――。


「……?」


 僕の体には、なんら変化は訪れない。


「んだよこれェ!?」


 わけも分からず、叫び出す男。

 僕にも何が起こっているのか全く分からない……が、もしかしてこの状況って、チャンスなのでは?

 体はまだ痛むが、立ち上がるぐらいならできる。逃げるなら今のうちかもしれない。

 そうして僕が、立ち上がろうとした、その時だった。


「……クズの分際で……勝ち誇ってんじゃねえぞおおおおお!!」


 ――男がこちらに向かって走り出していた。


「なっ――!?」


 何かを考えるとか、そんな猶予は一切なかった。

 気がつけば男はもう、目の前にまで迫っていた。


「死ねガキィ!!」


 怒号を発し、殴りかかってくる。

 そこにあるのは、もはやただの暴力だった。


「ちょっとまっ――」


 制止もむなしく、男の拳が僕の顔面を捉えた。

 ――はずだった(・・・・・)


「な、な、な……なんだこりゃぁ!?」


「……?」


 だが、拳がまさに当たる直前。

 どういうわけか男の右腕は、まるで寸止めするかのようにして、不自然に硬直していたのだ。


「何をして……」


 何が起こっているのか、この男が何をしているのか、さっぱり分からなかった。

 そんな状況の中でも、男は必死に、僕の方へと拳を押し込もうとしてくる。

 しかし、相手がどれだけ力を込めようと、その拳がこちらに届くことはなかった。

 あたかも、見えない壁に阻まれるようにして。


「ぐ……く……」


 男は諦めたのか、やがて振り上げた拳を下ろしてしまった。

 そして次に男は、突拍子もない事を言い出した。


「……よ、よし、分かった。ひとまず話し合いといこうぜ……」


「……は?」


 僕だって別に、争いごとを好んでいるわけではない。

 話し合いで済むんだったら、それに越したことはない。

 だけど、だったらどうして――最初から(・・・・)話し合いをしようとしなかったんだ?


「……ふざけるなよ」


 拳を強く握る。

 そして右足を後ろに退き、力を込める。


「ま、まて! は、話を――」


 僕は男の言葉を無視して――顔面へと右ストレートを放ってやった。


「へぶぅっ!?」


 つたない右ストレートが、男の顔面にクリーンヒットする。

 ――そこまではよかった。だが次の瞬間、そこに映し出された光景に、僕は思わず驚愕する。


「え……?」


 なぜなら、殴られた男は、明らかに物理法則を無視した勢いで、弧を描くようにして吹っ飛んでいったからだ。

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