47話 ルート:トゥルーエンド (7)
「じゃあ、あばよ!!」
振り下ろされた拳。
僕はそこで死んだはずだった。
だが僕は生きている。生きていた。
「……」
まばゆい光が僕を包み込んでいた。
まるでどこか懐かしい、そんな感覚。
そして、今ならなんだってできそうな気がする。
「て、てめぇ、どんな能力を使いやがった!?」
振り下ろされた拳。
それは、まるで不自然のように、直前にて硬直していた。
あたかも見えない壁に阻まれるようにして。
僕は大きく深呼吸をし、ゆらりと立ち上がる。
そして見据える。目の前の男を、しっかりと。
そして決める。覚悟を。
「……どうしても、見逃してはくれないかな」
僕は問う。
だが大男はいきり立つやいなや、
「ふざけるなァ!!」
その答えと共に、風をきって大ぶりの右ストレートが僕を襲う。
だがその攻撃は、またしても、見えない壁によって阻まれる。
「……しかたない、か」
僕は目の前で硬直する大男の右拳を軽く振り払った――次の瞬間。
「――ぐぇ!?」
まるでスローモーションのようにして、大男が空中を舞っていた。
男は回転しつつ、やがて地面へと乱雑に転がり落ちた。
「っ!!??」
何が起こったか理解できないのか、男は地面に倒れたまま動こうとしない。
僕はそこへ、追い打ちをかけるようにして、子供がサッカーで遊ぶが如く、男の腹へと蹴りをお見舞いする。
「がッ!?」
すると大男は、地面と平行に吹っ飛んでいき、瓦礫の壁へと叩きつけられた。
さすがにこたえたのか、男はずるずると壁をつたい、地面へと崩れ落ちていった。
「……はぁ」
僕はため息を吐き、ゆっくりと男の方へと近づいていく。
やがて僕は男を見下ろし、その腰に携えられた短剣へと目をやる。
「……これか」
無抵抗のままの男をよそに、僕はその短剣へと手をかけ、難なく手にする。
「……そっちが悪いんだからね」
そう言って僕は、短剣へと力を込め、男の心臓部分へとそれを突き立ててやった。
「――ぐ、あ、あ――!」
男は苦しそうにもがき、両手両足を無様にばたばたをさせた。
だがそんな無駄な抵抗もむなしく、やがて男は動かなくなった。
どうやら全ての魔力を吸い取り終えたようだ。
この男の言う通り、魔力を吸い取られた人間は、再起不能となるのは間違いではなかったようだ。
「ふぅ」
体を包み込んでいたまばゆい光が消滅していく。
なんにせよ、これで終わったんだ。全てが。
「……そうだ、この短剣どうしよう」
僕は少し迷ったのち、
「……別にいいよね、貰っちゃっても」
男から短剣を抜き取り、腰に掛かった鞘毎僕はそれらをポケットへとしまいこんだ。
「今後役に立ちそうだしね……」
そう呟いたところで気がつく。
そうだ、メディンは。
「メディ――」
急いで後ろを振り返ると、そこには、心配した面持ちでこちらを見つめるメディンが立っていた。
「……終わったよ」
「あ……え、と」
どこかバツが悪そうに、それでもメディンは僕の目をしっかりと見据え、
「ありがとう」
一言、礼を告げた。
「一応、これでミッションクリア……ってことになるのかな?」
「分からん。だが一度ボスのところへ戻って報告しよう。テレポートストーンの魔力も、そろそろ回復する頃だ」
そう言ってメディンは、ポケットからテレポートするための道具を取り出した。
「じゃあ帰ろっか」
「ああ」
メディンは僕の手を取り、そしてメディンは短く呟いた。
「"起動"――」
そうして僕らは、灰色の世界、ガウントを後にした――。
掴みようのない不安を、どこか胸に秘めながら――。




