43話 ルート:トゥルーエンド (3)
夜はふけ、辺りは完全に静まり返っていた。
場所は再び、ガウント。人っ子一人いない閑散とした地域。
「すぅ……はぁ……」
寒々しい空の下、僕は深呼吸を行う。
ただ、気持ちを落ち着かせるようにして。
「それにしても……寒いなぁ」
「そんな格好じゃ寒くて当然だ」
そうピシャリと物言うメディンは、何の違和感もない、防寒着のような格好だった。
僕だってできたら、着込んだ格好で来たかったさ。
でも仕方がないじゃないか。替えの服など持ち合わせていないのだから。
「そうだ……お前にこれを渡しておく」
唐突に、メディンはポケットから、小さな小袋のようなものを取り出し、僕へと手渡した。
「今渡したのは、依頼で届けるブツだ。それと――」
もう一つ何か、ポケットから紙を取り出し、手渡してくるメディン。
「これは?」
僕がそう聞くと、
「目的地へと地図だ」
「……なるほど」
僕は紙を広げ、地図を確認する。
「ふむ……」
スマホの地図アプリなんかと比べるとえらい原始的な絵面だが、まぁ分からないというほどでもない。
「それで……メディンはどうするの?」
今回の依頼は、身元、名称共に不明の僕が赴くことになっている。
となれば、メディンの存在が明るみに出ることは是非とも避けたい。
でないと、僕が行く意味がないからだ。
「こっそりと、お前の後を付いていこうと思う。依頼主に感づかれない距離で」
なるほど。そうやって後ろから監視していると。
「……じゃあ行こうか」
そうして僕は歩き出す。
遅れて、離れてメディンが歩き始めるのを気配で感じる。
「はぁ……」
ため息から漏れた空気が、寒々しく、白く現れる。
今回、突拍子もなく、こうして依頼に参加したわけだけど、不安は山積みだ。
まず第一として。
メディンの代わりに僕が行くことで、この事案は解決するのだろうか。
名も素性も知れぬ僕相手じゃ、話すらも取り合ってくれないかもしれない。
そもそも話が通じる相手かも分からない。
理想は、僕がこの依頼を達成、ないし解決させることだ。
だが僕には、そんな自信、あるはずもなかった。
じゃあなぜ、わざわざメディンの代わりに依頼を引き受けたのか。
それは、なんというか――言葉では言い表せないような、悪寒・・があったからだ。
分からない。分からないけど、このままメディンを行かせてしまったら、大変な事になりそう――そんな悪寒。
その予想が当たっているかなんて誰にも分からない。
それに今、一番危ないのは、依頼を代わりに引き受け、当事者となった僕・・・・・・・・だ。
……最悪、命の危険があるかもしれない。
相手は、わざわざメディン一人を指名してくるような怪しい奴らだ。
そんな敵地に向かう――それはもう、危なくないわけがなかった。
――でも。それでも僕が行く理由。
それは、この世界に来て身寄りがなかった僕を保護してくれたメディン、そしてあの組織に対する恩返しなのかもしれない。
基本他人はどうなろうと知ったこっちゃない僕だけど、今回の事はどうしても放っておけなかったのだ。
それが危険だと分かっていたとしても。
「……そろそろか」
そんな事を考えているうちに、地図が指し示す目的地付近まで来ている事に気がつく。
辺りは相変わらず灰色に埋め尽くされた瓦礫だらけ。
点々と、崩れ去った建物の跡地も存在する。
「……ここら辺のはずだけど」
僕は瓦礫を避け、建物の跡地を超え、慎重に歩みを進めていく。
そうして少し歩き出してすぐに、僕は驚愕する事態に直面する事となった。
「え……」
この誰もいない灰色の世界で、一人の男性を発見する。
だがこの驚きは、誰もいない場所に人がいた事に対するものではない。
それよりももっと、明確で、単純な理由――。
「……うそでしょ」
そこに立っていた男性。
その男性がゆうに、軽く2mは超えるであろう大男だったからだ。




