40話 修行 (2)
「行くぞ!」
メディンが小走りで、僕との距離を詰めていく。
その右手は、今にも攻撃をしかけようとしていた。
「っ!」
眼前、メディンから軽い右フックが放たれる。
僕はガードすべく、両手をクロスさせ、顔面を覆う。
「い――だっ!」
相手から放たれた右フックは、そのまま僕のガードする両手へと叩き込まれる。
攻撃を受けた手首がじんじんと痛む。
だが僕には、休む暇さえも与えられなかった。
「もう一発行くぞ――!」
メディンは体勢を崩さずに、そのまま回し蹴りを放つ。
それは、確かに僕の横っ腹を捉えていた――はずだった。
「っ」
だが、視線を下にやると、そこには、不自然に硬直する、メディンの右足が映し出されていた。
つまり――だ。メディンの回し蹴りは、僕の魔法によって防がれていた事になる。
「やるじゃないか――だが、」
メディンをそのまま右足を降ろし、それを軸にし、今度は左足で回し蹴りを放った。
「っ――!」
今度こそ喰らった――まさにそう思いかけた時だった。
突如、自身の体がまばゆい光へと包まれる。
「なっ!?」
謎の現象に驚きを隠せなかったが、それも一瞬の事だった。
それは、まるでフラッシュバックのようにして、すぐに消え去ってしまった。
「なんだ、一体何が起こって――」
謎の現象を前に、メディンは攻撃を中断し、軽いステップで後ろへと下がる。
そして再び、突っ込むようにして、軽いジャブを放った。
――が、しかし。
「……?」
その攻撃はまたしても、見えない壁に阻まれるようにして、阻止されていた。
「もう一発――!」
だがメディンはそこで諦めず、今度は左手で攻撃を仕掛けてきた。
だがそれでも――。
「……」
なんともない。僕の体は無傷を保っていた。
まるで何事もなかったかのようにして。
「ならば――」
突然、メディンがボクシングのような構えを取る。
「これならどうだ――!」
1発、2発と、数発のジャブが僕の体めがけて放たれる。
まさに攻撃の雨――だがそんな状況の真っ只中にいながらも、
「……あ、れ……」
僕の体には傷一つ付いていなかった。
あの眩い光以降、僕は一度も攻撃を食らっていない事になる。
「……ふぅ」
打つ手なしになったのか、とうとうメディンは攻撃を止めてしまった。
「白崎守、今までに魔法を使ってきた経験は?」
突然、それはやぶからぼうな質問だった。
「いや……そんな経験は全く無いけど……」
僕は正直に言う。
するとメディンは微かな笑みを浮かべ、
「そうか。それにしては中々じゃないか」
……自分でもよく分かっていないけど、メディンがそう言うからにはそうなんだろう。
「でもまだ不安定だ……。この前の双子に襲われた時みたいに、とっさの状況でこの魔法を発動できるかどうか……」
感覚は微妙には掴めてきたけど、まだ自分のモノにできたとは言い難かった。
「まぁそれは、追々とな?」
話半ば、メディンは、再びファイティングポーズを取る。
そして再開される。
僕の潜在能力を引き出すための、特訓が。
「お手柔らかに……」
そして僕はこのあと、数発の攻撃を直に貰う事となった。
魔法の完全会得までは、まだまだ時間がかかりそうだ。




