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魔力ゼロの迷い人  作者: お茶
ルートII
41/50

39話 修行 (1)

 目を開けるとそこは、西部劇のような景色が広がっていた。

 あたりにはいくつかの民家が連なり、どうやらここは人々が住む村だということが伺えた。

 そんな場所で今、僕はメディンと――なぜか対峙していた。


「まずはお前の能力を誘発させるために、こちらから攻撃を仕掛ける。いいな?」


 目の前に立つメディンは突然、突拍子もない事を言い出す。

 誘発? 攻撃? 全てが突然すぎて思考が追いつかない。


「ちょっとま――」


 僕がそう言いかけた瞬間、無慈悲にもメディンの右ストレートが飛んでくる。


「へぶぅ!?」


 避ける間もなく、不格好にも、僕はそれをダイレクトにもらう。


「なぜ避けない」


「無理に決まってるでしょ!」


 喧嘩なんてこの方一度もしたことがない。そうなれば当然、攻撃を避けるなんて動作、僕には無理に決まっていた。

 というか、どうして僕は今、メディンに殴られているんだ?


「泣き言を言うな、もう一度いくぞ」


「えっ――」


 同じようにして再び、メディンの右ストレートが飛んでくる。

 避けきれず喰らったかと思われた――が、


「うわぁっ!?」


 まさに間一髪のところで、僕はその攻撃を回避する事に成功する。

 言うまでもない。単なるまぐれだ。


「やるじゃないか。ではもう一回――」


 まぐれは二度続く――わけもなく、


「あがっ!?」


 僕は再び、顔面へと直にその拳を喰らう。


「ちょっと、まって、ストップ――」


 僕は息絶え絶えの中、なんとか目の前の相手に対し、制止を求める。


「なんだ。まだ3発しか終わってないぞ」


「ちゃんと、説明を、して、ください……」


 僕は息絶え絶えながら抗議する。


「だから言っただろう。お前の特殊能力を誘発させるための練習だと」


「それが、どうして、殴る、必要が?」


 そんな短い説明だけ聞かされて、いきなり殴られてはかなわなかった。

 もっとこう合理的な理由というか、他に方法というものがあるんじゃないか。


「白崎守――お前は確かに、魔力ゼロでありながらSS(クラス)魔法スキルを所持する、規格外の人間だ」


「それはさっき、あの幼女からも聞いたよ……」


魔法スキルをモノにしたいと言ったのは、お前自身だろう?」


 確かにそうだ。だけど、


「少し手荒すぎやしないですか?」


 こんなやり方、すぐにこちらがバテてしまう。


「ではもう一度いくぞ」


 そんな抗議もむなしく、再び、それは僕へと襲いかかる。

 そう何度も避けきるなんて芸当、できるはずもなく、


「っ!」


 まさに腹部に直撃した――そう思われた、その時だった。


「!?」


 僕へと攻撃するべく、こちらに伸ばされたメディンの右ストレート。

 それはなんと、不自然にも、寸止めする形で硬直していた。

 あたかも、見えない壁に阻まれるようにして。


「ようやく、か」


 その声に僕はハッとし、ようやく事態を理解する。

 メディンの攻撃を、僕自身の魔法スキルで無効化したという事を。


「その感覚を忘れるな」


 いや、忘れるなと言われましても……。

 これだって偶然みたいなものだし……。

 でも……。


「なんとなく分かってきた……ような気がする」


 僕は自分の中で、なんとなくではあるが感覚を掴み始める。

 僕が所持する魔法スキル。それはどうやら、本人の防衛本能が強く働いたときに発動するらしい。


「もう一度――!」


 思考半ば、今度はメディンの回し蹴りが飛んでくる。

 当然避けられるわけもなく、直撃したかと思われた――が、


「っっ!!」


 再び――。

 先程と同じようにして、メディンから放たれたそれは、まるで寸止めするかのようにして、直前の位置で停止していた。

 結果から言うと、僕は無傷のまま立っていた。


「これが……僕の力……?」


 未だに実感がわかない。夢見心地というか、今自身の身に、何が起こっているのかよく分かっていなかった。

 当然だ。20年近く生きてきて、こんな非現実的な現象を、何度も拝む事なんて一度もなかったからだ。


「は、は……」


 笑けてくる。この非現実な力に。

 そして、それが自分のモノだということに。


「何かコツを掴んだみたいだな」


 メディンは何かを察したように言う。


「分からない……分からないけど、なんとなく感覚は掴めてきたような気がする。……あくまで気がするだけだけど」


「そうか。じゃあそろそろ実戦といくか」


「……へ?」


 一瞬、目の前の相手が何を言っているのか理解できなかった。

 だが、理解する猶予さえも僕には与えられなかった。

 なぜなら、次の瞬間にはもう、メディンが戦闘態勢で目の前へと迫ってきていたからだ。

 そして僕は、初の実戦経験へと臨むこととなった――。

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