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魔力ゼロの迷い人  作者: お茶
ルートII
40/50

38話 魔法鑑定《スキルスキャン》 (2)

「な……SSクラス、だと……!?」


 最初に驚きの声を上げたのは、隣にいたメディンだった。


「ほう……これはまた……中々」


 感嘆の声を漏らすは幼女。

 そして鑑定をした張本人であるティズも、興味深そうな表情で、僕の事を見つめていた。


「あの……つまり、どういう事なんですか?」


 僕はたまらず、問いただす。

 いったい、今の鑑定(・・)結果で何が分かったのかと。


「端的に言おう。白崎守君、君は魔法スキルを所持している事が判明した。――それも魔力ゼロでありながら(・・・・・・・・・・)、だ」


 そう説明してくれたのは、机に両肘をつく幼女だった。


「スキ……ル? あの、それって……」


 まだ理解できていない僕に幼女は、


「つまり、だ。君は魔法が使えるという事だ」


「魔、法……?」


 全くもってピンとこない。

 当然だ。僕は何の取り柄もない、ただの人間(・・・・・)だ。

 魔法など使えるはずもないし、今までに使えた試しもない。

 そもそも魔法なんてものが使えたら、元いた世界で、もっと人生を楽しく謳歌していたはずだ。


「あの、それって本当なんですか? 僕が魔法を使えるって……」


 未だに信じられなかった。


「あぁ、ティズの鑑定に間違いなどありえないよ。君は確かに、向こうの世界の人間でありながら、魔法スキルを所持している」


「向こうの人間……?」


 そういえば、この世界に迷い込んで最初に出会った、あの炎を操る男もそんな事を言っていたような気がする。

 確か僕らの事を、白の人間、と……。


「なんだ、君達は本当に知らないんだな」


「君達?」


「いや、なに。矢内君にも同じ説明をしたら、同じような反応が見られたのでな。彼も知らなかったようだよ。白の世界と黒の世界の関係を」


「白……? 黒……?」


 さっきからこの幼女は何を言っているんだ。

 頭がパンクしそうだ。あまりにも理解できない内容すぎて。


「あぁすまん。つまりだ。かいつまんで説明すると、君達がいた元の世界を白の世界。今我々がいるこの世界を黒の世界と呼んでいる」


「なん、だそれ……」


 そんな漫画みたいな話、初耳だった。

 本来だったらこんな事、信じるに値しない内容だった。

 でも――だけど――今いるこの状況は、信じざるを得ない、それこそイレギュラーな状況だった。


「じゃ、じゃあ僕はその、白の世界に帰るにはどうしたらいいのさ?」


「分からん」


「えぇ!?」


 まさかこんな、あっさりと希望が打ち砕かれるとは思わなかった。


「いや、君に意地悪をしているわけではない。本当に知らないんだ。君達が帰る方法を」


「そんな……」


「失礼ですが、そもそも白崎さんはどうやってこの世界へ?」


 そう質問を投げかけてきたのは、ティズと呼ばれる青年だった。


「いや、それが、よく分からなくて……。気づいたらこの世界にいて……」


「ふむ……。つまり突然迷い込んでしまったと」


「はい……」


「どう思う、ティズ?」


 幼女はティズへと尋ねる。


「そうですね……。もしかしたら最近多発している転移者(・・・)の発生となんらかが関係しているのかと」


「ふむ……」


 またもや話がついていけない領域へと突入していた。


「あの、じゃあ僕は、いったいどうすれば……」


 すると幼女はニカッと表情を変え、


「なに、安心したまえ。君は今や、我々の団員。最低限の衣食住は保証しよう」


 その言葉を聞いて僕は、少し安心した。

 身寄りになってくれる人がいるだけで、こんなにも頼もしいなんて。

 でもずっとお世話になっているだけじゃ悪い。

 そう思った僕は、


「あの、僕に出来る事とかないですか……?」


 そこで、ついさっきの鑑定結果を思い出す。


「そ、そうだ。僕が所持している魔法スキルとやら。それって、どうやったら使えるようになるんですか?」


 もしその力が自由に使えるようになれば、今度は僕がメディンを助けられるかもしれない。

 もう二度と、あんな無力さを味わなくて済むかもしれない。


「そう聞いてくると思ったよ」


 幼女はまるで分かっていたかのように、笑みを浮かべ、


「メディン。彼に基礎という基礎を叩き込んであげなさい」


「私に務まるんでしょうか……。そもそも彼はこの世界の人間ではなく――」


「魔力も一切ない、そう言いたいのだろう」


「……はい」


「だが彼――白崎守君には、この場にいる誰よりも、大きな可能性を秘めている。それは間違いない」


「はぁ」


「だから頼んだよ、メディン。時間がある時は、私や他の団員も直々に稽古を付けよう」


「分かりました」


 そう言うとメディンは、


「よし、じゃあ行くか、白崎守」


「えっ!?」


 突然、メディンが僕の手を取る。

 その行動の意味を、僕はもう理解していた。


「"起動"――」


 メディンが小さく、そう呟いた瞬間、


「わっ!」


 僕らはまばゆい光に包まれ――次の瞬間、目の前に広がる景色がガラリと変わっていたのは、もはや言うまでもなかった。

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