37話 魔法鑑定《スキルスキャン》 (1)
ガウントを後にした僕らは再び、幼女が待つ、廃墟ビルへと来ていた。
そこで僕らは、ガウントで起きた出来事を、包み隠さずに報告した。
「それで……結局オールドメタルは手に入れられなかったと?」
幼女は机に両肘を立て、メディンへと問う。
「すいません……。私の力が及ばなかったせいで……」
「ふぅむ。それにしても、あの青緑姉妹がお使い、ねぇ……」
幼女は自身のおさげを指でくるくるといじくりながらぼやく。
「まぁこの話はこちらで片づけておくさ。それよりも」
幼女は突然、僕の方を見つめ、
「君はなにか――変わったことは無かったかい?」
「……え?」
その質問の何の意図があるのか僕には分からなかった。
「別に何も……。予想通りお荷物っぷりを発揮したというか、存在が空気だったというか……」
僕は正直にその時の有様を報告する。
「ふむ……。どうやら都合良く発動する能力ではないようだな」
「……?」
さっきから何の話をしているんだろう。
そんな僕のポカーンとした表情を見て、幼女は思い出したかのように、
「あぁ、すまない。君はまだ、何も知らないんだったな」
そう告げると幼女は突然、くるっと椅子だけを回転させ、
「ティズ!」
部屋の奥、真っ暗闇で何も見えない方へと叫んだ。
と、次の瞬間、
「お呼びでしょうか」
「うわぁ!?」
突如目の前に、眼鏡をかけた、いかにもなインテリボーイが姿を現した。
さっきからずっと奥で待機していたのだろうか。
彼は何食わぬ顔で、僕らの前へと姿を見せた。
「紹介しよう。こちらは我が組織の、《鑑定士》、ティズだ」
「ご紹介預かった、ティズと申します。以後お見知りおきを」
そう言って目の前のインテリボーイは、僕に手を差し出す。
僕はそれに応じるようにして、握手を交わす。
「あの……話が全く見えてこないんですが……」
「なぁに。君には今から、能力の測定をしてもらうだけだ」
「はぁ……」
測定……身体測定みたいなものだろうか?
「では失礼……。少しの時間、ジッとしていてください」
ティズと呼ばれるその青年が、僕の肩へと右手をそっと置いてきた。
そして何かを感じ取ったのか、はたまたこれから感じ取るのか、そのまま目を瞑ってしまった。
「……」
何が起こっているのか全く分からない僕はされるがまま、とりあえず無言で事が過ぎるのを待っていた。
「……終わりました」
やがて測定とやらが終わったのか、ティズは目を開け、右手をそっと肩から離した。
「推定"所持魔力"はゼロ。限りなくゼロ――ではなく、純粋たるゼロ」
まるで機械のように淡々と測定内容を告げていくティズ。
当然、僕にはその内容が理解できはずもなく。
「それで?」
幼女がその先の結果を促す。
ティズは眼鏡をくいっと上げ、
「彼の魔法所持を確認。分類は防御」
そしてティズは言葉半ば、僕の目を真っすぐに見据え、
「級判定は――最高位であるSSと判明」
まるで無機質な機械音声のように、測定結果を僕へと告げた。




