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魔力ゼロの迷い人  作者: お茶
ルートII
36/50

34話 幼女《ボス》II (2)

「へ……?」


 何やら話があらぬ方向へと進みだしていた。

 それもおそらくだが、決してよからぬ方へと。


「ほう。いいだろう」


「矢内さん!?」


 なぜか快くOKする矢内さん。


「まぁまぁ白崎君。君の言いたいことも分かるが、今はこうするのが賢明ではないかね?」


「う……」


 矢内さんが突きつける正論に、何一つ言い返せない。

 それもそのはず。仮にこの誘いを蹴ったとして、僕らに行く宛など存在しないのだから。


「だそうだが? 白崎守君(・・・・)


 幼女は椅子に座ったまま、机へと両肘をつき、視線を僕に向ける。

 ……はぁ、しょうがない。不本意ではあるが、


「……わかった」


 すると幼女は表情をにこやかに、


「よし。それでだ。そちらの矢内君には組織の雑務を手伝ってもらおうと思う」


「承知した」


 またしてもすんなりと受け入れる矢内さん。

 ……ってあれ、僕は?


「そして、そちらの白崎君には――うちの団員と依頼をこなしてもらう」


「あぁ、依頼ね――」


 ――って、


「えっ!?」


 ちょっとまった! なんで僕だけそんなハードルの高そうな事をさせられるんだ!?


「あの……依頼ってのがなんなのかはよく分からないけど、それはちょっと僕には荷が重すぎませんか……?」


 そんな当然の疑問に、幼女は小悪魔のような笑みを浮かべ、


「なぁに。その事なら大丈夫(・・・・・・・・)だ。君が心配する事じゃあない」


「え?」


 いったい何が大丈夫だと言うのか。

 当の本人が無理だと言ってるのに。


「まぁその話(・・・)は追々しようじゃないか。それよりも今は、君たちの寝床についてだが」


「はぁ……」


 寝床……ね。やはりというか嫌な予感しかしない。


「矢内君に関しては、このアジトの2階を好きに使ってくれていい」


「承知した」


 いや……この建物、だいぶ老朽化が進んでたけど、寝るような場所なんてあるのか?


「それで白崎君だが――」


 ……また僕だけ違うパターンか。


「君はメディンの家に滞在してもらう」


 あーメディンの家ね。はいはい。メディンって今隣にいる黒装束の子だよね。

 あぁそう。ふーん。つまりは居候か。

 ……。


「へぇ!?」


 何秒か遅れて言葉の意味を理解した僕は情けない声をあげる。


「そそそそれはちょっと……」


 さすがにひとつ屋根の下で、女性と暮らすのはなんというか、抵抗があるというか。

 それにこの黒装束もといメディンって人、なんか怖そうだし。ついでに性格もきつそうだし……。


「だ、そうだ。よろしくな、白崎守君(・・・・)?」


 メディンが首をこちらに向け言う。フードに隠れるその顔は今、どんな表情をしているのだろうか。

 笑っているのか。はたまた嫌そうな顔をしているのか。

 どちらにせよ僕に拒否権などあるはずもなく、


「え、えと……よろしくお願いします……」


 僕は観念し、しぶしぶ了承する。


「さて、そろそろ本題に入るとするか」


 突然、真面目なトーンで話をし始める幼女。

 というか今のが本題じゃなかったのか。


「メディン――それと白崎君には今から、ガウント(・・・・)へと向かってもらう」


 ……ガウント?

 それは全く聞き覚えのない単語だった。

 だがおそらくは場所の事だろう。


「今から、ですか」


 メディンの問いに幼女は、


「今から、だ」


 と、短く答えた。


「あ、あの、僕は――」


「ほら、行くぞ」


 いきなりメディンが僕の手を取る。

 それはデジャヴ――というより、ついさっき体験した展開だった。

 そう、この直後、目の前の視界は真っ白に埋め尽くされていき――いや、もう深く考えるのはやめよう。

 今はただ目を瞑って、この得体の知れない感覚に身を委ねよう……。

 ……されるがまま、なるようになれだ。

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