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魔力ゼロの迷い人  作者: お茶
ルートⅠ
23/50

SS 漆黒の狩人

 時刻は夜更け過ぎ。そこは辺り一帯が完全に静まり返った、とある廃墟の街。

 そんな暗闇と静寂の中、息を切らし走る、一人の男性がいた。


「はぁっはぁっ……! くそっなんなんだ一体!」


 男性は走りながら、悪態を吐き捨てた。

 そんな男性はやがて、体力が尽きたのか、走ることをやめ、近くの電柱へともたれ掛かった。


「――追いかけっこはもうおしまいですか?」


 後ろから男性を刺すような声。

 そこに立っていたのは、どこにでもいそうな、サラリーマン風の男だった。


「なっ、なんなんだよお前はぁ! 俺が何をしたっていうんだよ!?」


 男性は悲痛な表情で叫ぶ。

 対照的に、目の前の男は涼しい顔で、


「あぁ別に、あなたが何をしたとか、そういうのはどうでもいいので。ただ私は、業務をこなすだけなので、お気になさらず」


 そしてそれ(・・)は突然に起こった。

 男の周囲で音を立て、なんと、渦状の炎(・・・・)が燃え上がった。


「なっ!?」


 そんなありえない光景を前に、男性が驚きの声をあげる。


「な……なんなんだよ……うそだろおい……」


 今にも泣きそうな男性。

 対して目の前の男は、そんな様子を気にも止めず、


「じゃあさようなら」


 渦状の炎が、一斉に、男性へと襲いかかる。


「うわぁあああああああああ!?」


 炎に飲まれた男性が、廃墟の街に、断末魔を響かせる。

 やがて男性の声は途切れてしまい、十秒経ったか、経たないかぐらい。


「さて、と」


 男は指を鳴らす。

 すると、さっきまで男性を焼き尽くしていた炎が、一瞬にして、どこかへと消え去ってしまった。

 そこに男性の姿はなく、あるのは黒い・・・となった、何か(・・)だけだった。


「次の世界の亀裂地点は――」


 だが男の興味は既にそこにはあらず。男は一枚の用紙を、街頭の下で確認していた。

 やがて用紙を二つ折りにし、スーツのポケットへとしまうと、男は暗闇に溶けこむようにして、この場から消えてしまった。

 黒の世界――最下層へと迷いこんだ、哀れな獲物を狩るべくして。

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