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魔力ゼロの迷い人  作者: お茶
ルートⅠ
20/50

20話 立入禁止区域 - ガウント - (3)

「何が起こって……?」


 なぜか直前で、停止していたツタ。

 少女達の様子をみるに、意図的に止めたわけでもなさそうだ。

 じゃあなぜ――疑問に思ったその時、


「早く倒しちゃいなさいよ、ルーリー!」


「わ、わかってるわよもう!」


 止まっていたツタが、重い腰を上げるようにして、再び動き始めた。

 再度それは、地面を滑りながら、僕へと襲い掛かかる。


「ちょ――」


 今度こそ本当に終わった――はずだった。


「……っ!?」


 だがそうして襲い掛かってきたツタは――またしても、当たる寸前の位置にて、停止していた。

 まるで、見えない何か(・・・・・・)に阻まれるようにして。


「こ、こいつ……まさか防御魔法(ガードスキル)持ちなの!?」


「まってルーリー! でもあいつは、魔力を一欠片も持っていないのよ!?」


 そう、その通りだ。

 相手の言う通り、僕に魔力なんてものも無ければ、異能の力など使えるわけでもない。

 

 ――そう思っていた。


 だが思い返してみれば、この世界に来てからだった。

 ピンチの時に、都合よく状況が好転するという、おかしな事が起こるようになったのは。

 はじめは偶然、もしくは奇跡だと思ってた。

 でも今、確信した。


 ――この現象は、僕が引き起こしているのだと。


「まさか……」


 疑念を確信へと変えるべく、僕は目の前のツタへと軽く触れてみた。


「わっ!?」


 瞬間、ツタは光の粒子となって、どこかへと消えさってしまった。

 やっぱりそうだ、間違いない。これ(・・)は僕自身の力なんだ。


「あ、あれっ!?」


 目の前でツタが突如消え、少女が驚きの声をあげる。

 そんな少女を横目に、僕は一目散にメディンの元へと駆け寄る。

 そして今もなお、メディンを押さえつけるツタに、僕はそっと両手で触れた。


「頼む……!」


 僕の願いが通じたのか、その刹那――メディンをがっちりと固定していた巨大なツタは、一瞬にして消え去ってしまった。

 そして次の瞬間――。


「動くな」


 解放されたメディンは、まさに一瞬にして、少女達の背後へとまわった。


「今すぐ手を引け、さもなくば――」


「ひっ……」


 メディンのスピードに反応できず、遅れて、自分たちの今の状況を理解した少女達。

 やがて少女らは負けを悟ったのか、


「わ、分かったわ……分かったから、今すぐその物騒な物をどけてちょうだい……」


 その言葉を聞き、静かにナイフを下げるメディン。


「ふ、ふんだ! こんなラッキーでいい気にならない事ね! 行きましょうルーリー!」


「う、うん!」


 負け惜しみにも近いセリフを吐き捨てながらも、少女はポケットから、見覚えのある、ダイヤモンド型の小道具を取り出した。

 そして次の瞬間、少女達の姿が、強い光へと包み込まれていった。

 そのまばゆさに目を細めていたのも束の間、少女らは一瞬にして、目の前から姿を消してしまった。


「ふぅ……」


 一気に体の力が抜けていく。

 一時はどうなるかと思ったけど、僕らの依頼もクリアしたし、結果オーライかな。

 ……いや、結果オーライでもないか。一歩間違えれば死んでたし……。


「あー……とりあえず助かったよ」


 ふいにメディンが、どこかバツが悪そうに言った。

 そんなメディンに僕は、


「いや、こっちも、お礼を言わなきゃ」


「なぜだ?」


 メディンは心の底からなぜ、と。


「ほら、僕がやられそうになった時、止めようとしてくれたでしょ?」


「……あぁ。一応預かり物であるお前に何かあったら、またボスに小言を言われるからな」


「あ、そういうこと……」


 僕は少しがっかりする。


「そういやお前――いや、帰ってからでいいか」


「?」


 何かを言いかけて、途中で言いやめるメディン。

 気になるが、僕も特には追求しない。


「さて、目当ての物も手に入れた事だし帰るか。そろそろ30分経った頃だろう」


 ポケットから、ダイヤモンドのようなものを取り出すメディン。

 僕はそこでようやく、少女達がさっき使っていたこの小道具が、テレポート用の道具だという事を知る。


「準備はいいか?」


 唐突に、メディンは僕の手をとった。


「えっ、ちょ――」


 あれ、またこのパターンですか。


「"起動"――」


 もはや、お決まりとなった光が、僕らを包み込んでいく。

 視界が白く染まる前に、僕は目を閉じ、ひとときの瞬間移動へと身を委ねた。

 いやぁ……。人間の慣れって恐ろしいものだね。

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