表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロの迷い人  作者: お茶
ルートⅠ
19/50

19話 立入禁止区域 - ガウント - (2)

 この場の空気を壊すようにして、突然鳴り響いた、軽快な電子音。

 それは誰でも一度は耳にしたことがある、ありふれた着信音だった。


「な、なんなの、この音は!?」


「見てルーリー! あいつから鳴っているわ!」


 突如鳴り響く電子音に、少女達は慌てふためいていた。


「う、ぐ、ぐ……」


 そんな少女らを無視して、僕は電話に出ようと、自身のポケットへ手を伸ばそうとする。

 すると目の前の少女が、


「ちょっと! まさかあんた能力者だったの!?」


「……えっ」


 突拍子もない事を言いだした。

 どうやらこの少女は、この音が、僕の能力的なものだと勘違いしているようだった。

 だったら――と、僕は賭けに出る。


「……そ、そうだ。だから一回離してくれないか?」


 当然、僕にそんな異能の力はない。

 だがそんなハリボテの嘘でも、少女達には効果てきめんだったようで、


「ど、どうしようフィリア……?」


「そ、そうね……。じゃあ一回離してあげましょう……」


 やはり歳相応というべきか、能力者であろうと、中身は少女なんだなと実感する。


「えいっ!」


 少女は片手を縦に、大きく振った。

 すると、僕に巻きついていたツタが、一瞬にして光となり、消え去ってしまった。


「おわっ!?」


 空中に投げ出された僕は、そのまま地面へと着地する。

 そして、すかさず携帯を取り出そうとするが、


「ちょっと待ちなさい! 何をしようとしてるの!?」


「な、なにって、別に何もしないから!」


 僕はポケットに手を突っ込んだ状態で叫ぶ。


「う、うそよ! 絶対うそだわ! そんなの信じられるわけないじゃない!」


「そ、そうよ! その隙に、魔法(スキル)を使う気だわ!」


 だめだ。全くらちがあかない。

 僕は半ばやけくそ気味になりながら、


「あーもう! 本当に何もしないったら!」


「うそようそよ!」


「絶対にうそだわ!」


 まさに水掛け論。

 そうやって僕らが言い合っていた内に、とうとう電話が――切れてしまった。

 だがそこで、僕が落胆したのも束の間、


『あーもしもし。聞こえる――よな?』


 突然、携帯のスピーカーから、ノイズ混じりの声が聞こえてきた。


「な、なにこの声は!?」


「見て! あいつのポケットからよルーリー!」


 少女達にも聞こえるほどの音量で、その正体不明の声は、ひとりでに喋り始めた。


『えーと――とりあえず今大変な状況ってのは分かって――そのまま聞いてくれ』


 僕はポケットに手を突っ込んだまま、静聴する。


『今、その――をアップデートしておいた。使い方は――を――すれば大体は分かると思う」


 電波状況が悪いのか、ところどころうまく聞き取れない。

 それでもその声は、一方的に続ける。


『お前はそこで――絶対に死な――。だからひとまず安心し――。他にも言いた――あるけど――時間が――――』


 唐突に、声が途切れる。

 しばらく待ってみるも、その声が再び聞こえてくる事はなかった。


「な、なによ今の声は……?」


「さ、さぁ……?」


 呆然とする二人の少女を横目に、僕はすかさず携帯を取り出す。


「あっ! ちょっと何勝手に動いてるのよ!」


 少女を無視し、僕はスマホの電源を入れる。

 頼む、なんでもいい。ここから逆転できる何かを。

 そんな願いが届いたのか、なんと電源があっさり入った。

 すると、真っ白な背景のディスプレイに、


 ――体の内のエネルギーを解放しろ。


 たったそれだけ。意味不明な一文が表示されただけだった。


「は……?」


 ディスプレイをタッチしても、その状態のまま、いっこうに変化しない。


「ねぇフィリア……。もしかしてあいつ、魔法(スキル)なんて使えないんじゃ……?」


「そうねルーリー……。何よりあいつからは魔力の反応がしないわ……」

 

 不穏な空気が漂い始め、少女達は勘付き始める


「い、いや! 使えるから! えーと……魔法(スキル)!」


 僕はスマホを上に掲げ、精一杯の虚勢を張った。

 だがもう、時は既に遅し、


「騙していたのね……許せない」


 少女が怒りをあらわにした――その時だった。

 突如、少女の足元から、さっきまでとは比べ物にならない大きさのツタが、姿をあらわした。


「死んじゃえ!」


「っ!?」


 そしてそれは、大きく振りかぶり、勢い良く僕の体を薙ぎ払った――はずだった。


「ちょっと! なにしてるのルーリー!?」


「ち、ちがうのよ! 私は止めるつもりなんて……!」


 何やら少女達の様子がおかしい。

 だが、それもそのはず。襲いかかってきたツタは、どういうわけか――。


「止まって……る?」


 まさに当たる直前で、停止していたのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ