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プロローグ

少しグロテスクな表現も含まれる予定ですので、ご了承ください。

『侵入者だー!!』

『逃がすんじゃねぇぞ!』


バタバタと騒がしい音を立てながら、無数のスーツ姿の男達が家屋から出てきた。

大小様々な銃や刀を握り、皆高い塀の上を見上げている。

視線の先には宵闇に溶け込むような黒いローブに般若面を被った人間が月明かりに照らされ、佇んでいた。


『生かして帰すんじゃねえぞっ!』

『撃てっ!撃てぇぇぇぇぇ!!!!』


男達の掛け声で一斉に銃が構えられ、静かな山の中腹に多くの銃声が響き渡る。

そんな様子をよそに黒い人影はとても優雅に銃弾をかわしていく。


『……ば、化け物か?』

『………くそっ、何で当たんねぇんだよ!』


何百発もの銃弾を掠る事もなく避けている黒い人影を茫然と男達は見つめる。


『休むな!撃ちつづ、ぐあっ……』

『兄貴!!』


激しい銃撃が緩んだ隙に黒い人影が放った何かが男の左胸を貫き、白のワイシャツに鮮やかな赤いシミが広がる。

慌てて数人の男たちが駆け寄るが、兄貴と呼ばれた男は既に息絶えていた。

尚も黒い人影は次々と的確に幾人もの男達を仕留めてゆく。


『?……枝?』

細い棒状の物が次々と地面に突き刺さる。


『……何もんだ、奴は』


鳴りやまぬ銃声の最中、妖しげに照らされる黒い人影はただ踊るように空を舞っていた。



『何やら、外が騒がしいな』


ゆったりと広い和室で茶を嗜む初老の男がそう呟く。

障子の傍には黒いスーツに身を包んだ30代ほどの男、2人が座っていた。


『鼠が一匹入り込んだようです』

『……早急に始末しろ。五月蠅うるさくてかなわん』


穏やかな様子で今しがたてたばかりの茶を飲む。

その様子を一方の茶髪の男は呆れた様子で見つめ、もう一方の中年の男は表情を変えることなく状況報告を続ける。


『控えておりました富部とべ班は全滅。

 現在、寺中を含む50人が始末にかかっています』

『ほう…』


それを聞いていた初老の男が静かに器を置いた。


『あの富部がやられるとはな……

 面白い。ここへお通ししろ』

『なっ、しかし…』

『狙いはわしではない。

 そんなこったぁ考えずとも分かる。……違うかい?』


すると、奥の障子がゆっくりと開いた。

茶色の三つボタンのベストに紺色のネクタイ、白の靴下、上下を少し濃いめの茶色で揃え、傍らにシルバーのスーツケースを携えた男が礼儀正しく正座していた。


「流石は葉島はじま組の重役でございます」

『…なっ、何処から』

『貴様、一体何者だ!』


後ろに控えていた茶髪の男が拳銃を構える。

それにひるむ様子もなく正座している男は柔和な笑みを浮かべ答える。


「ただのしがない時計屋でございます」


至極落ち着いた様子で答え、うやうやしく頭を下げた。


『お下がりください、重役』


中年の男が素早く初老の男を背に隠す。苛立たしげに茶髪の男が問う。


『誰に雇われた? 答えろっ!』

「ですから、私はただの時計屋です」

『惚けんじゃねぇ! 撃ち殺すぞ!』

「血気盛んですねぇ……下らない言い掛かりをつける暇がお有りなら、

 大人しく主の傍に控えている方がいいと思いますよ?」

『っ~~貴様ぁ、ふざけやがって』


痺れを切らした茶髪の男が時計屋に向けて発砲した。

が、その弾丸は当たることなく、ポトリと床に転がる。


『!!』


それからは全て一瞬の出来事だった。

時計屋が間を詰め、慌てて引き金を引こうとする茶髪の男の拳銃を蹴り上げ、足を払う。


『ってぇ』


盛大に転んだ茶髪の男だ起き上がろうとした時には既に決着がついていた。

カチャリと銃口が男の額に当てられ、引き金が引かれる。

バンっと乾いた音が響き、茶髪の男の横を弾丸が射抜いた。


「短気は損気ですよ?

 状況はちゃんと判断すべきだと私は思います」


腰を抜かした男を見下ろし、ふわりと微笑んだ。


『……大した野郎だ』


一部始終を傍観し《み》ていた重役が口を開いた。


『おめぇら、下がれ』

『宜しいのですか?重役』

わしはこの若僧とゆっくり話しがしたい』

『承知しました』


中年男はその場で一礼をし、茶髪の男を引きずり和室を出た。


『……おめぇ、茶は嗜むかい?』

「独学ではありますが、少々」

『まぁ、茶でも飲みながら話そうや』


外では未だ無数の銃声が響き渡っている。

それと同時に何かが崩れ落ちる音もしている。

そんな物々しい中で、和室で静かに茶を点てる初老の男と自称時計屋の若者―


『それで、お前さんを突き動かす理由ってのはなんだ?』

「それは勿論、家業に関する事です」

『ってぇと、時計か?』

「そうですね」

『おめぇの様な輩が来るくれぇだ。 ただの時計じゃねぇんだろ?』

「まぁ、そうですね」

『で? おめぇを態々呼び寄せる時計は何処にあるんだ?』


そう初老の男が尋ねると時計屋の若者は微笑みながら男の頭を指した。


「ここにございます」



静まり返った夜の山道を茶色のスーツに身を包んだ30代くらいの男が歩いている。


「今日は、また大仕事だったね~。 ま、後は黒羽くれはが何とかしてくれるだろう」


誰かに話しかけるようにしながらただ山道を下りていく。


「急に呼び出して悪かったね。

 ちゃんと埋め合わせはするから機嫌直してよ、ミツキ」

「………」


男がゆっくり振り返ると後ろにはいつの間にか般若面を被った黒い人影が佇んでいた。

黒い人影はゆっくりと歩みを進め、男に近づいてくる。


「お疲れ様。 今日はあり―」


ドスッと人影が男の胸に飛び込んだ。

ポタリと雫が落ちる。


「ぁが……ぎっ、あ゛ぁ゛ぁ゛」


身体が一気に焼ける様に酷く熱を帯びた。

するりと持っていたスーツケースが滑り落ち、鈍い音をたてて地面に転がった。


「……き…………み………」


苦悶の表情を浮かべ、黒い人影を見つめながら男は地面に崩れ落ちた。

辺りが再び静寂に包まれる。倒れた男を見つめる人影はいつの間にか二人になっていた。


「……なんだ、意外と呆気ないね」


もう一人の人影は地面に倒れた男を一瞥し、無残に転がったスーツケースを持った。


「まぁ、でも…欲しいモノは手に入ったからどうでもいいか」


楽しげに呟き、その場を後にする。


般若面を被った黒い人影は、ただ静かにその後に付いて行った。

まだまだ、ド素人ですので広い心をもって読んで頂けると幸いです。

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