一緒に逝きたい
「ずっと親友ね!」
「うん!」
里奈ちゃん、私はこの約束絶対破らないからね。
ミッション系高校に通うことになった私と、里奈ちゃんは平和に過ごしていた。そう、アイツが来るまでは……。
「藍。行こっ」
「うん。そうだね」
私の唯一無二の存在で、私が大好きな里奈ちゃん。顔は至って普通だけど、独特の魅力が素敵。誰にも盗られない様に、小学校から見守っているんだよ?里奈ちゃんは「彼氏がほしい」とか言ってるけど、誰にも渡すもんですか。そんな計画を立てていると、ひとりでに、笑みがこぼれてきた。
「どうしたの藍?私の顔面白い?」
「ううん、思い出し笑い」
「あっ、あの芸能人のこと?」
「うん」
私は芸能人が好きだと嘘をついている。でないと、里奈ちゃんのことを考えて、笑顔になるから。本当はあんなカスみたいな人は嫌い。里奈ちゃん以外に素敵な人はいない。
「ねぇ、里奈!?」
「えっ、もしかして友紀?」
「そう!幼稚園以来!」
知り合い?
幼稚園の友達?じっと顔を見つめる。平凡な顔。こんな子が里奈ちゃんに釣り合うはずないわ。でも二人は楽しそうに笑っている。ちょっとここは……何か言わなきゃ。
「ねぇ里奈ちゃん。そろそろ行かないと遅れるかも」
里奈ちゃんを苛立たせないように、柔らかくいう。
「確かに」
よし。心の中で笑ったのも本の束の間、
「遅れるんだったらさ、先藍行ってよ。道わかるよね?」
えっ?なんで?幼稚園の頃少し仲良くした腐った馬鹿の方が私より上なの?
「うん、わかった。遅刻はしないでね」
本音は言えない。そんなこと言ったら絶交されてしまう。まず里奈ちゃんを満足させなきゃ。
手を振り学校へ向かいながら、あの女をやっつける方法を考えた。
結局里奈ちゃんとあの女は、ぎりぎりで来た。待ってればよかったかも。ため息をつきながらクラス発表の紙を見に行くと、私と里奈ちゃんは一緒のクラスだった。はぁ……。一安心した。これで一年間は生きていける。
そういえば……あの女は?名前は友紀だっけ?全部のクラスを見回り友紀という名前は同じクラスにしかなかった。
最悪!!爪を噛む。ムカつく!!
里奈ちゃんは最初は私にしゃべりかけに来てくれたが、あとはアイツに話しかけに行っている。何よ何よ!!幼稚園なんてノーマークだったわ。悔しい。アイツは幼稚園の頃の里奈ちゃんを知っているんだ。私が知らない里奈ちゃんを。よし決めた。私は二人でいるところに行き、
「友紀ちゃん、だっけ。私とも仲良くしてくれるかなぁ」
猫なで声でいう。
「いいよ!私あんまり友達いないんだ!えーと、藍ちゃん?」
作戦成功。心の中で呟くと
「よろしくね」
里奈ちゃんは、すごくうれしそうな顔になる。この女に渡すもんか!
里奈ちゃんとアイツは名前の順が近くて、教会へ行く時も少し話しているし、何より寮の部屋が一緒なのが腹立たしい。
里奈ちゃんの気持ちはアイツに向いていると知った私は、ノートを開けば「里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん里奈ちゃん」ろくに勉強もはかどらない。シスターには注意されるし、最悪。
もう……決めた。
「里奈ちゃん」
「ん?」
真夜中。教会で話したいことがあると言い、里奈ちゃんを呼び出した。
「話したいことって?」
「それはね……」
ポケットからナイフを二本取り出した。
「え……」
後ずさる里奈ちゃん。
「里奈ちゃんが悪いんだよ?アイツとばっかり話すから」
「アイツ……?友紀のこと?」
「そうよ」
私は里奈ちゃんを押し倒した。
「何すんの!?」
「楽になりたいの……。逝こうよ」
一本を自分の方に向け、もう一方を里奈ちゃんに向ける。
「いやっ!!」
「ごめんね」
ザシュッ!!
『里奈ちゃん、大好きだよ』