表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

愛しい1人

作者: ハルメク
掲載日:2005/08/06


僕にとって彼女は掛け替えのない人だ。

恥ずかしいけれど、愛していると言ってもいい。

これは僕の一方的な気持ちではない。彼女もまた、僕のことを愛しているであろう。



「先生・・・」

僕は目立たない廊下の隅で彼女に話しかけた。


「なあに、聡。別に先生なんてかしこまらなくてもいいわよ。誰も見ても聞いてもいないでしょう。今は」


「でも、学校では先生って呼ぶよ」

僕は頬を紅くしてしまったに違いない。頬の体温が上がるのがわかったからだ。

彼女は僕の高校の英語教師だ。

年は30だが20代に見えるほど若々しい。憧れる生徒も多かった。


「そうよね。いくらなんでも恥ずかしいわよね。それで何なのかな? 三井 聡くん?」

彼女が悪戯っぽく言った。


「あの、英語でわからないところあるから放課後、空いてたら教えてくれない?」



「放課後はダメなの。職員会議があって」



「そっか・・・」



「職員会議が終わったら、すぐに家に行って教えてあげるわ」



「だっ、だめだよ! 家はっ! 今日は・・・」



「何よ、今日もダメなの? 昨日もダメって言ってたけど、そんなにゴタゴタしてるの?」

彼女は少し眉を吊り上げて言った。


「うん・・・」



「もぅ、じゃあゴタゴタを処理してからってことね」


「ごめん」



「いいわよ」

彼女は職員室の方に向きながら言った。

「じゃあ、仕事に戻るから、あ---」

彼女はそう言って止まった。こちらを振り返った。


「今日の夕飯何がいい?」


「なんでも」

僕がそういうと彼女は再び職員室へ歩きだした。

なんでもが一番困る、と愚痴をもらしていた。


突然肩を叩かれた。振り返ると、同じクラスの伊藤がいた。


「よぅ! マザコン!」



「うざいなあ。マザコンじゃないよ」


「でもさぁ、お前の母さん、美人だよなあ」


「そうかな・・・」

彼女は僕の母親で、女手ひとつで僕を育ててくれた。

恥ずかしいけど僕は唯一の家族を愛している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 親子でしたか! 見事にはまってしまった罠に、苦笑しました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ