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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

派遣聖女は公表しない 〜責任はお取りしませんが、そのバグ(魔力回路)、なおしておきましたわ〜

作者: ちいもふ
掲載日:2026/03/20

「……ふぅ。これでよし。07:10の爆撃(予約投稿)、完了ですわ」


 魔力端末(PC)のエンターキーを静かに叩き、私は満足げに息を吐いた。

 王国魔法訓練校、Eランク治癒術士のユリカ。それが私の表の顔。


 だが真の姿は、夜な夜な禁書(WEB小説)を執筆し、魔力回路を書き換える『聖女』。

 私の目的はただ一つ。責任の重い正社員になどならず、時給2,000魔石の派遣仕事で「執筆時間」を死守することだ。



「ちょっと、ユリカ! またそんな難しい顔をして魔導端末をにらんで。あなたみたいな『無能』が、そんなの使いこなせるわけないじゃない」


 背後から突き刺さる、耳障りな高笑い。クラスメイトのステイシアだ。

 彼女は借金まみれのくせにプライドだけは高く、大公家の正社員の座を狙って血眼になっている。


「ええ、ステイシア様。私、派遣希望の身ですから、難しいことはよく分からなくて……今日も勉強させていただきますわ(棒)」


「ふん、自覚があるならよろしい。私はあなたと違って、大公家の正社員になって『特別魔石ボーナス』で人生一発逆転するんだから!」



 ……ああ、ステイシア様。


 大公家の現場は「冬は極寒、夏は灼熱」の魔力炉。責任だけは一丁前で、一度入れば二度と出られない終身刑のような場所。

 借金返済のためにそこへ突っ込むなんて、まさにバグだらけですわね。



「それでは、本日の実技試験を始める! 課題は『魔力回路の修復』だ!」


 教官の合図とともに、ステイシアが鼻息荒く端末に向き合う。



 だが、数分後。


「な、なによこれ! 画面が真っ赤!? 動かない! 意味がわからないわよ、このポンコツ端末ぅ!!」


 ステイシアがパニックになり、デタラメにキーを叩く。

 魔力回路が過負荷で火花を散らし、暴走を始めた。


 教室中にアラートが鳴り響く。


「ひっ、暴走!? 誰か、誰か止めて!」


 教官たちが駆け寄るが、複雑に絡み合った古代語のバグを前に立ち尽くす。


 私は、おどおどしたフリをしながら、掃除用のハタキを持って彼女の端末の横を通り過ぎた。


(……やれやれ。メイン回路がオフのまま、タイマーだけが空回りしていますわね。美しくないわ)


 私はハタキを振るうフリをして、指先で一瞬だけ端末に触れた。

 脳内で古代語ロジックをチェックし、一撃で書き換える。


 ――修正完了。


「……あれ? 止まった?」


 ステイシアが呆然と画面を見つめる。

 暴走は収まり、回路は何事もなかったかのように、グリーンライトを点灯させていた。


「す、すごいぞステイシア! まさかこの複雑なバグを一瞬で直すとは!」

「え? あ、あ……ええ、そうよ! 私の隠された才能が目覚めたみたいだわ!」


 教官の絶賛に、ステイシアが速攻で手柄を横取りする。

 私は後ろで「ステイシア様、すごいです〜(棒)」と拍手を送りながら、心の中で微笑んだ。


(ええ、どうぞその手柄、持っていってくださいな。おかげで大公家への『推薦すいせん』は確定ですわね)




 三か月後。

 ステイシアは意気揚々と、地獄の魔力炉へと旅立っていった。


 「さよならユリカ! あなたは一生、安い派遣でくすぶっていなさい!」


 私はその背中を、慈愛に満ちた目で見送った。

 時給2,000魔石。残業ゼロ。責任なし。



 私は、執筆のためだけに用意された「最高の現場」へと向かう。


「さて、今日の現場ネタも最高にドロドロしていましたわね。これを『禁書』の悪役令嬢のエピソードに書き換えれば……またPV(魔力)が跳ね上がりますわ」


 ダメなら、別の現場へ行けばいいだけ。

 私は自由な翼を広げ、今日も07:10の爆撃に備えるのだった。

 本作をお読みいただき、ありがとうございます。


 責任ある立場も素敵ですが、私はユリカのように「自由」と「執筆時間」を愛する生き方に憧れます(笑)。


 もし「派遣聖女ユリカの次の現場が見たい!」と思っていただけましたら、評価や感想をいただけますと幸いです。

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