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一片

 翡翠国ひすいこくに生まれ天命を授かるモノはその身をもって国を守護する掟がある。4人の天命を授かりしモノは四神を従え、東西南北それぞれより翡翠国の平和と安泰を願い見守っているという。


 翡翠国の西端に位置する千秋嶺(せんしゅうりょう)に生まれ、名を白蓮(びゃくれん)という。齢17を迎えたある日、天より命を授かることになった。白蓮の額に白い四つの菱形の印が浮かび上がった。神々しく直視できない程の光が白蓮を包み込む。その光景を見た者は「天より命を授かり白虎の仙人となられた白蓮はこの土地の宝だ!」「今夜は宴じゃ!」「これで翡翠国は安泰よ!」等と喜びを顕にする。翡翠国は4人の仙人と帝によって国の安泰を紡いでいく。帝の政策が良かろうと4人の仙人の力が不十分では国は安定しない。仙人の力が劣っていれば、田畑は荒れ果て洪水などの災害により国は衰退していく。現在の翡翠国では、白虎を司る仙人が不在の状況であり、4人の仙人が揃っていなかった。初めは、命に関わる厄災が起きては居なかったが、次第に洪水が起き、死者も増え続け生きることが困難になっていった。そんな状況下で新たな仙人の誕生はこれほどまでに無い喜びを得る出来事だっただろう。2人を除いて……


「白蓮……あぁ…私の愛しい子…何故神様はこのような残酷な仕打ちをなさるのですか!」


凛銘(りんめい)。此は天からの命なんだ…私達にはどうすることも出来ない…」


景嵐(けいらん)!貴方には私のこの悲しさが分からないでしょう?白蓮は私がお腹を痛めて産んだのよ!それにあの子はまだ大人じゃ無いのよ...」


嘆き悲しむ白蓮の母親は声になら無い声で泣いていた。景嵐の言葉すらもう耳には届かない様だった。


「母さん、僕は悲しく無いよ。だって天命を授かれたんだから。母さんが幸せに暮らせる国を創れるなら僕は仙人になるよ。」


白蓮は泣いている凛銘の頭をそっと撫でた。すると途端に凛銘の声は途切れ、静かな寝息をたてている。


「ねぇ、父さん。僕は母さんに泣いて欲しくない。だから母さんに仙力を使ったんだ。今は心地よく寝られているはずだよ。」


「白蓮…いつから仙力が使えたんだ?」


「天命を授かった直後だよ。力の使い方を習わなくても分かるみたい…母さんのことは頼んだよ。僕はもう行くね。」


「凛銘に挨拶しないでいくのか?」


「母さんに別れの挨拶したらまた泣いてしまう。大丈夫、明日になればいつも通りの母さんになるよ。」


「それは…どう…」


景嵐の言葉を最後まで聞かず、白蓮は月と星が輝く夜空を駆けて行った。景嵐は白蓮の瞳に涙が浮かんでいたことを見逃さなかった。それと同時に憂いを帯びていることも悟った。


(いつの間に白蓮は強い子に成長したのだろうか…)


白蓮が消えた夜空を見上げ寝ている凛銘に告げた。


「凛銘、白蓮は私達が思っているよりずっと大人になっているよ。君は未だ、子どもだと思っているみたいだけどね。」


景嵐は凛銘の肩に手を回し自身の身体によりかか寄りかからせ優しく大きな手で寝ている凛銘の頭を撫でた。

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