第0話 ナラティブ庁・監査官補 神崎(ダイジェスト)
世界は、物語でできている――らしい。
上位次元にある『ナラティブ庁』は、その“らしい”を前提に動く役所だ。勇者が生まれ、魔王が現れ、幼馴染が泣き、悪役令嬢が断罪される。そういう出来事が、偶然ではなく『テンプレ』として繰り返される数多の異世界を庁は管理をする。
主人公・神崎の仕事は監査。物語の品質監査。
読者の熱量――庁内では『RSI(読者満足指数)』と呼ばれる数値――が割れないように、盛り上がりの波が粗くならないように、悲劇が“雑”に消費されないように。そういう建前で、今日も書類が回る。
主人公・神崎は、その監査官補だ。
ただし、彼の権限は万能ではない。むしろ弱い。世界を書き換える魔法も、運命をねじ曲げる特権もない。『世界改変』は規程違反で、越線すれば補正が来る。物語装置は、抵抗者を容赦なく“整える”。
だから神崎ができるのは、いつも地味なことだけだ。
現場に潜って、モブとして走り回る。伝令をする。導線を整える。指揮系統をつなぐ。誰かの一言を遅らせ、誰かの一歩を止め、誰かの選択肢をほんの少しだけ増やす――あるいは減らす。
それは救済ではなく、是正だ。
それも、正しい形に整えるための。
神崎は、その冷たさを知っている。知ってしまったうえで、手を動かすしかない。
◇ ◇ ◇
第一章「幼馴染死亡ルート監査編」見どころ(各3行)
・“泣かせるために死ぬ”幼馴染を、神崎は救おうとする――ただし世界は改変できない。
・救うほど、物語装置は別の悲劇を用意し、『雑な死』を成立させようとする。
・神崎は『RSI』という言葉で戦いながら、救いと整形の境界が溶けていくのを味わう。
◇ ◇ ◇
第二章「悪役令嬢断罪監査編」見どころ(各3行)
・断罪劇は、観衆の拍手で完成する。だから一番怖いのは“正義”の顔をした群衆だ。
・神崎は悪役令嬢を助けたいのに、助け方を誤れば炎上が拡散し、もっと雑に壊れる。
・笑って消費される破滅を、せめて回収できる形にする――その仕事の後味が刺さる。
◇ ◇ ◇
第三章「学院防衛戦監査編」見どころ(各3行)
・学院の『普通』に、赤い必須イベントがじわっと重なる不穏。
・主人公は世界改変なしで、現場の動きだけで悲劇の形を“整える”冷たさ。
・勝っても後味が最悪。『死を燃料にしない』抵抗が記録として残る。
◇ ◇ ◇
ナラティブ庁は、世界を救う組織じゃない。
物語を“割れない形”に整える組織だ。
その中で神崎は、今日もモブとして現場へ行く。
誰かの生を、次の悲劇の燃料にしないために――少なくとも、そう願いながら。
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