易しい試練①
豪華絢爛な調度品が、私を出迎える。
テーブルや椅子には細かな彫刻が施されており、燭台には金が使われている。
だが、家族全員で集まれることは殆ど無いため、この部屋もあまり使われることはなく、豪華な調度品は新品同然だ。
スピネルがなんだか新鮮な気分になって部屋を見渡していると、急に誰かの声がした。
「スピネル!暫く会っていなかったが、元気にしていたか?」
「カイヤお兄様!」
スピネルの兄、カイヤ=ナイト。
スピネルと全く同じ黒髪に漆黒の角を持つが、青藍色の瞳が美しく、凛々しい印象を受ける。
だが性格はその見た目とは真逆で、明るく饒舌で、何よりも妹を全力で可愛がる……いわゆるロリコンである。
「スピネル、少し背が伸びたんじゃないか?」
「スピネル、そのドレス、似合っているな!前のドレスとは少しデザインが違うが、好みが変わったのか?」
「スピネル、少し遠くに行ってきていたからな。お土産を買ってきたぞ!使用人に渡しておいたから、今頃お前の部屋に届いているだろう」
カイヤは、ニコニコと微笑みながら、ひたすら言葉を投げかける。
流石に困り果て、マルベリーに目配せをしたが、マルベリーは「諦めてください」と言わんばかりに頷くだけだった。
その瞬間、大きな音を立てて扉が開いた。
スピネルの父……魔王、ロードの登場である。