第一話 オーバーチュア
ロリコンバレーです。考えている内容を文章にまとめるのは難しいですね。読みづらいところなどがあるかもしれませんが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
―――かつて、その少年は世界を震わせた。
見た目からして小学生だろうか?少年のピアノ演奏が終わったころには音楽堂にいた不信感を抱いていた大人たちも、皆席から立ち上がり拍手喝采であった。
繊細な手つきのその奥にある情熱が、あの小さな手の中に溢れんばかりと詰まっているようだった。
彼の名はケンスケといったか、将来が楽しみだ。
大人たちは彼の才能に惹かれ、彼と関わりを持とうと彼の両親へと話しかけるようになった。彼の両親はそれはそれはよく喋る人で、いろいろな誘いに乗った。
それからも彼は沢山のショーに出演した。そのたびに少年は大人たちからの歓声を浴び、そして彼の両親は少年の才能ではなく自分の地位にうっとりした。
***
少年はいつしかこう思うようになった。
「両親を喜ばせるためのピアノが、両親の承認欲求を満たす道具になっているのではないか」
少年は、努力をやめた。両親に、これ以上もうできないと伝えた。両親は自分たちの行動をひどく後悔した。そして、一報も残さずに音楽の世界を去った。天才少年ピアニスト「ケンスケ」は、幻となった。
少年は、業界を去った後もピアノは続けた。ピアノは好きなことだからだ。習っているわけではなく、弾きたい曲の楽譜を見つけ出しては1週間たたずとも覚えて、完璧に仕上げてしまう。彼が天才といわれる所以である。
***
「彩絵さんはなんで僕なんかを連れてきたの?」
「だから、言ったじゃん。友達作れなかったんだって!」
「今いなくても、彩絵さんくらい美人だったらすぐ友達出来そうだけど…」
「…!」
「あー!!!ごめんごめんごめん!!!キモかったよね…今の忘れて」
「いや、恥ずかしいけどちょっと嬉しかったよ」
「そう?ならいいけど…」
僕はいま、失言をした。人の心が分からないのは自負しているが、今のは流石に気持ち悪い発言だった。自重しよう。
「というかさー、よかったらケンスケが私の友達1号になってくれない?」
「…え?僕でいいの?」
「私さー、人付き合い苦手でね~、距離感とか間違えやすくて友達作るの苦手なんだよね笑」
「そうなんだ…僕で良かったらお願いします。」
「お!嬉しい!今日からよろしくねケンスケ!」
「こちらこそよろしく…彩絵さん…」
それから僕たちは昼食をとって店を出た
「それでさ~、これからどこいく?」
「…え?僕は帰るつもりだったけど…」
「いやせっかく今日友達になったんだしどこか遊びに行こ!どこいくー?やっぱカラオケ?」
「あ…えっと」
「とりあえず駅の方行こ!なんかあるかも!」
僕たちは駅に向かうことになった。彩絵さんのペースに飲まれて危うい。
「あー!ストリートピアノあるじゃん!今人いないしケンスケくんちょっと弾いてみてよ~」
「いいよ。弾きたくないし。」
「ちょっとでいいから!おねがい!」
彼女は引き下がってはくれなさそうだ。簡単に弾いてすぐに行こう。
「少しだけだからな」
僕は、少し前にどこかで耳にしたラグタイムみたいな曲を即興で弾いてみた。弾いていたら楽しくなってしまって、つい長く弾いてしまった。
演奏が終わって、ふと彼女の顔を見た。
「ケンスケくん、人気者だね!」
「え…ってこんな人だかりが!!」
気が付いたらストリートピアノを囲む人だかりができており、拍手も聞こえた。
「早く行こう。ここは居心地がわるい。」
僕は彼女にそう言い、逃げるようにその場を後にした。
***
結局、今日は1日彼女に付き合わされた。カラオケに行き、ショッピングモールで荷物持ちをさせられた。
「でも、ちょっと楽しかったなー」
ふと、そんなことが口から出た。帰り道、足元の小石を蹴りながら、月明りが顔を出し始めた空を見上げた。
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