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宝箱よ再び

「サクッと抜けちゃったわ……」


コメント

・熱い戦いは無く、暑いだけで終わった

・変なトカゲが変な人間によって殺されただけだった

・動物虐待反対!

・火山階層って抜けようと思ったら二日くらいかかるのに

・最終的に「痛い痛い熱い熱い!!」って言いながらマグマを泳いでいったシーンは涙無しじゃ見られなかったぜ……


「おい捏造すんじゃねーよ。さすがにそこまで化け物にはなってないわ」


 結構何事もなく火山階層を攻略してしまった俺である。

 何だか物足りないと感じでしまうのはエンターテイナーとしての性なのか、はたまたリスナーを楽しませたいからなのか。

 まあ、環境が大幅に変わったことでコメントもかなり盛り上がっていたし、良い刺激になったんじゃないかなとは思う。


「まあ、中層だったからまだ魔物が弱くて助かったのはある。深層の火山階層はヤバそう」


 一応前世の時に深層で火山階層に当たったことがある。

 その時はリセマラしようか途轍もなく迷ったけども、結局リスナーに唆されて強行したものだ。

 ……死にかけたけど。


 死にかけた経験を活かしているからこそ、今無傷で攻略できているわけだけども、悲しいことに死にかけている場面も一定数需要があるんだよな……。  

 死んだら死んだで炎上するんだけど……謂わば危機一髪──死を目前にしたギリギリの状況をリスナーは好む傾向にある。


 趣味が悪いと言えばそれまで。

 でも、ダンジョン配信なんて危険と隣り合わせの行為をエンタメとして提供している以上、リスナーのその嗜好は理解の範疇にある。

 ダンジョン配信者も同じ穴の狢だしな。


「さて、そんじゃ次は二十二階層だな」


 火山地帯に思いっきり人工物っぽい階段があるのはなかなか面白い。まあ、ダンジョンの仕様ってやつだな……。

 次の階層はパターン的に森系か水系になるんじゃないかと思う。


 階層の環境は基本的にランダムだが、何となくそれっぽいパターン的なものが感覚的に存在するんじゃないかと思っている。

 それなりに長く探索者をやっているからな。こうした経験則というのはバカにならない。


 そんなことを思いながら階段を下っていくと、そこに広がっていたのは──非常に見覚えのある景色だった。

 


 ──バカになったわ。


「Oh……」


コメント

・2 連 続 火 山 w

・エンターテイナー過ぎて草

・どんな確率だよw

・熱い階層を抜けたら熱かった件

・夢咲だけ難易度バグってる??w


「おFuck!」


 俺は全力で中指を立てた。

 ご丁寧に【暴力的コンテンツのモザイク化】を発動して。


コメント

・何やってんのか大体分かるけど全身モザイクだから分かりづれぇ……w

・前回の全身モザイクってバグじゃなかったんやwww

・デフォでモザイク系男性配信者

・まあ、腹パンが暴力的コンテンツだから仕方ないね


「誰が暴力的だ、誰が」


 百歩譲って腹パンが暴力なのは良いとして、それを繰り出してる俺も含めて暴力的なコンテンツ扱いされるのは遺憾だぞ。

 ……くそぅ……判断してるのがAIだから文句の行き先がねぇんだよな……。


「とりあえず先に進もうか。さっきもパパっと抜けたし」


コメント

・またあの怖気不可避回避見せられるのか

・夢に出てきそう

・あの回避しながら近づいてくるの並のホラー以上だよ

・怖いんじゃなくて本能的な気持ち悪さだよな


「ガチでドン引きされたらそれはそれで傷つくんだけど。言っておくけど液体を躱す以上、あれが最適な動き方なんだからな?? 別に好きでやってねぇからな??」


コメント

・効率と感情は別なんだよなぁ


「ダマレ!」


 パッシブスキルがすべてを邪魔してくる件。

 なんかこう……もっとカッコいい回避してくれないかなぁ……迫りくる岩の礫を一歩一歩避けていく的なさァ! 人体の限界を無視して最適解を歩んでいくのってどうなん?


 俺自身も気持ち悪い自覚はあるのであまり強く言えない。


「ハァ……」

 

 ため息を吐きながら進んでいくと、眼前に再びサラマンダーがマグマを撒き散らしながら現れた。

 お前もう飽きましたわ……。


「《即撃》」

「ぎゅえっ!?」


 ゲ◯ダンのような何かを踊りながら腹パン。

 敢えなく死亡したトカゲに目を置くことなく先に進むと、道の真ん中に金色の宝箱が見えた。


 ……金色の宝箱?

 んなもん見たことないぞ?


コメント

・金色の宝箱なんてあったっけ?

・絶対レア確定的なアレやん

・開けろ!開けろ夢咲!

・ようやく運が向いてきたのか


「まあまあ落ち着けよ。とりあえず安全かどうか確かめてから開けるのが普通だろ? ──まあ、俺は普通じゃないし確かめる手段が無いので……開けることで確かめまーす!! ヒャッハー! レアを寄越せェ!!」


 俺は最高潮にテンションが上がっていた。

 散々苦汁を舐めさせられたミミックとかいう害悪ゴミ魔物。

 

 ──こんなにも《レアです!》と言わんばかりの宝箱は、如何にも怪しくてミミックが入っていると思うだろ??

 これもまた俺の経験則だが、ダンジョンが嫌がらせをする場合には意外と直接的なものが多い。


 例えば《《転移ゲートを二十階層ごと》》に設置することで移動の手間掛けさせたり、落とし穴の罠がダメージに繋がらず、あくまで魔物と戦わせる機能になっていたり……などなど。

 後者は迂遠的じゃね? と思うけども、回避できる罠である以上、良心はあるよね! という感想を抱く。

  

 つまりは、ここまでレアっぽい金色の宝箱が設置されているということは──すわなちマジでレアである確率が高い!!

 なんかめっちゃバカっぽい感想で申し訳ない。


コメント

・テンションバグってて草

・「開ける前に安全を確かめるぞ→開ければ安全か分かるよね!」控え目に言って頭おかC

・ここで日和るのは探索者として失格だよなぁ?w

・期待してるぞ夢咲!


「リスナーも開けることを望んでるわけだし、ここで開けないとかいう選択するヤツはいねーよな」


 最悪何かあれば《回避》が発動する。

 ここでミミックだった場合もそれはそれで配信者的にも美味しいだろう、と冷静な思考も俺にはあった。


 万事抜かり無し。いざ開封の時。


 俺は宝箱の淵に手を掛ける。

 この時点でミミックならばニュルンと牙が生えてくるはず。

 ということは──これはマジで何かしらのアイテムである確率が非常に高い。


 俺は内心でドキドキの胸を高鳴らせて勢いよく宝箱を開けた。


「てぇいっ!!!」


 ──するとそこには黒々とした空間が広がっていて──マズイ、と思ったその瞬間にはもう遅かった。

 

「やっべ」


 宝箱から黒い《《ナニカ》》が這い出て、俺の体に纏わりついてくる。しかもなぜか《回避》が一切発動しない。

 攻撃ではなく恐らくギミック。ならばこれが原因で死ぬことは無いだろうと予測を付けた、俺は黒いナニカに引きずられるように宝箱の中に入っていくと──、


「I'll be back!」


 とニコニコ全力笑顔で沈んでいった。


コメント

・お前これがやりたかっただけだろ

・心配を返せ

・ワロタw

・お前に混沌のゴーレムくんは超えられないよ

・パクリはやめてください


 いや、俺が元ネタね??

 


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