☆炎上☆
「魔除けのテントってさ。魔物寄ってこないじゃん? 勿体なくね?」
コメント
・ねーよw
・安全を取れ安全を
・勿 体 な い
・エンタメに振り杉ィ!
冗談だよ、冗談。
ちゃんと一撃食らっても死なない階層で寝泊まりするから安心して欲しい。1%を引かない限りグッスリ寝れるんだから、リスナーもそこまで心配することないと思うんだけどな。
ハイ……まあ、深層入ったらテント買います……。
「混沌のゴーレム倒したことでレベル爆増したし、余程のことが無いと傷負わんから平気」
コメント
・そういえばそっか
・かなり強かったし相当レベル高そう
・混沌のゴーレムくんが惜しいよ……
「なんかやけに人気だよなアイツ……」
何だか憎めない仕草をしてたこともあって俺も嫌いではないんだけど、なんなら俺より人気じゃね? って疑問を抱くくらいには切り抜かれ率が高い混沌のゴーレムくんである。
俺と一緒にマグマに沈む音MADとかあったしな。
ゴーレムくんはしっかり指立てながら沈んでいくのに、なぜか俺だけマグマで溺れてるヤツな。ふざけんなよマジで。
「新たに手に入れたスキルの確認もしておきたいしな……」
俺が手に入れたスキル《心眼》。
当たり前のようにパッシブスキルである。
コメント
・パッシブスキルなのは叫びで分かったけど、結局どういうスキルなん?
・そういや詳細聞いてないままだったかw
・叫んで配信ぶつ切りにしてたからな……w
「1/10の確率で目が開けられなくなるんだってばよ。その間は全ての能力が15%UPらしいけど、デメリットが多すぎる……」
コメント
・また変なスキルをw
・ホンマに心の眼で草
・スキルに呪われすぎてて草
・夢咲が何したってんだよ!……腹パンか
・普段の行い(腹パン)のせいだね
しかも厄介なことに、《心眼》は《反撃の心得》同様にエクストラスキルという括りに該当し、エクストラスキルはスキルレベルが存在しない。
つまりは、永劫にこのデメリットが付与されるということである。マジで俺が何をしたってんだよ。
「腹パンと《回避》とのシナジーは良いけど、視覚情報削られるだけでかなり酷いぞ……」
腹パンが効かない相手と相対した時に、ご自慢の剣術が使いこなせなくなる可能性が高い。……いや、できるかできないかで言われれば《《できないことはない》》。
俺にはもう一つのスキルレベル十に到達したスキル《危機感知》がある。
まあこれは攻撃を正確に予見してくれるわけじゃなく、あくまでぼやっとした感覚的に危険が迫る時に教えてくれるだけなんだけど──攻撃のタイミングさえ分かれば俺の剣術は力を発揮してくれる。
《抜剣》とかの技能はある種発動さえできれば自動攻撃だし。
とはいえ視覚を閉じたまま戦闘ができるかは試してみないと分からない。
「よし……来いやゴミカスどもッ! ぶち殺したるわ!!」
俺は意気揚々とダンジョンを駆け回り始めた。
目指せ三十階層! 俺たちの戦いはこれからだぜ!
☆☆☆
「嘘やん」
コメント
・五十回戦っても発動しない模様
・確率に嫌われすぎてて草
・私知ってる。これ、発動して欲しくないタイミングで絶対発動するヤツだ
・確率に裏切られるのある意味配信者に向いてるんだよなw
現在の階層は二十階層のフロアボスの扉の前。
因縁の混沌のゴーレムくんと出会いを果たしたあの場所である。
魔物とあまり出会わなかったのは運が良いのだけれど、《心眼》の検証がしたいのに一切発動しないのはどういうことですかね。
……フロアボスでデメリットスキルの検証とか嫌だぞ俺は!
雑魚魔物で試したいのに……1/10とは何ぞや。
「まあ、これだけ戦っても発動しないならフロアボスでも発動しないだろ……」
そう高を括って、俺は扉を開ける。
目の前に現れるのは何度も見たストーンゴーレムくん──あっ。
「見えん」
コメント
・アッ……
・これは……
・タイミング悪すぎて草
・心眼来たァァァ!!
──パチリと強制的に瞼を閉ざされた。
何も見えない。当然だ、目を開けることができないのだから。
──《心眼》が発動。
このタイミングじゃなくても良いだろクソがッ!!
「GYAAA!!!!」
「うるせぇ! 黙ってろ!!」
「……GYA」
コメント
・本当に黙るなw
・ストーンゴーレムくん素直
・ゴーレム族ってなんでこんなにノリ良いんだ……W
・夢咲最低だぞ!
当たり前だけどコメントが見えない。
本当にこれで戦えるのか……? と不安に思いながらも集中を研ぎ澄ますと、不思議な感覚を覚えた。
「……ん? 分かるぞ……見えはしないけど……分かる」
この部屋の構造。自分の感覚。
そして魔物の敵意から、どこに何がいるのかを感覚的に理解することができた。
こ、これは……うしろの天◯飯。右の手刀でオラを狙ってる的な感覚……。
コメント
・分かるのか夢咲!
・ゴーレムくんがいじけて地面にハの字を書いてる姿を!
・おっ、ゴーレムくんが我を取り戻したかのように動き出して……
・いけ!夢咲を倒せ!お前ならいける!
・頑張れゴーレムくん!!
敵意が動き出した。距離は近い。
直に詰めながら俺に拳を振るってくるだろう。
「GYAAA!!!」
「──ここだ」
俺は敵意を読み取り、《《《回避》を使わずに》》ストーンゴーレムの拳を避けた。
そして、自動で発動するは必殺──
「──《即撃》ッ!!」
──ドガッッ!!
硬い何かを穿つ感覚。
破砕音が耳に届くと、同時に敵意は消え去り──俺の瞼がパチリと開かれた。
コメント
・ふざけんな夢咲!!
・ゴーレムくんを返せ!
・うわぁぁぁあ!!
・なんて酷い……
・夢咲のファン辞めます
「なんで??」
そして俺はなぜか炎上した。