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パッシブスキルに呪われた男


 血を一滴垂らした後宝珠を叩き割ればスキルを入手することができるという魔道具であり、その希少性から売れば数十億は下らないとされている超絶レアアイテムである。

 この世界でもSランク探索者が持ち帰ったため、見た目の情報は出回っているが、普段は一切お目にかかることのできない魔道具の類だ。

 俺でも初めて見た。まさか今世で自分が手にするとは思っていなかったけども……。


コメント

・うおおおおお!!

・すげえええええ!!

・売れば一瞬で金持ちw

・さすがに使わんよなwww

・なんのスキルが出るのかは運らしいし

・これ買うのに数十億ってマジ?ガチャ代高すぎ

・普通のソシャゲより害悪仕様なんだよなぁ


 せやな。

 前世だとスキルオーブの初めての使用者が入手したスキルは《算術》らしい。これは、計算がしやすくなるというちょっと便利そうなスキルだが……お忘れではないだろうか。

 スキルはダンジョン内でしか使うことができない。

 日常生活に便利そうなスキルを入手できたとしても、それを日常生活で活かせないのならただのゴミスキルだ。


 しかも手に入れたのが数学者とかならまた話は変わるが、ただの探索者が《算術》スキルを手に入れたとしても、帰り道に「あー、この素材だったら……しめて810万1145円くらいか」的な暗算で使用する機会しかない。

 あれ……ちょっと便利だな……。

 結構頭のいい人が入手すれば戦闘でも活かせそうなような気はするが、そうでなかったら宝の持ち腐れなので結局アカン。


 普通に考えて売って装備を整えるのが先決だろう。

 高すぎる。数十億は高すぎる。


「無難に売って装備を整える。んでもってちょっとお高めの配信機材とか周辺環境を良くする」


コメント

・それが安牌よね

・お、画質さらに良くなるのかな

・いやー、でも夢咲にしては堅実か

・さすがにどれだけバカでも売るわw


 ……ふぅ、と俺はため息を吐く。

 そして、わざわざカメラ目線で人差し指を左右に振って舌を鳴らした。


「ちっちっち、お前ら俺のことなーんも分かっちゃいねーよな。俺がそんなクソおもんねぇことすると思うか? 数十億? なんのスキルを手に入れるか分かんない? だから安牌で売る? ──ふざけんじゃねーよ。死ななけりゃエンタメって言ったばかりだろ。借金してもエンタメになんだよ、ギリギリ」


コメント

・ならねーよ

・ギリギリすぎるだろw

・借金するな夢咲


「たとえ話じゃボケ! ……まあ、うん、借金はエンタメじゃないわ。金は返そうな」


 急に素になっちまった。

 前世で友人に金貸してそのまま戻ってこなかったこともあるしな……友人間で金を貸す時は手切れ金だと思ってるわ……。

 まあ、今はそんなことどうでもよくてだな。


コメント

・まさか……やるのか!?

・うっそだろおい

・さすがの夢咲でも……なあ?


「──バカ野郎俺はやるぞ!!」


 俺はガッ! と指の皮を齧って血を放出する。

 塗りたくるようにスキルオーブに血を付着させると、俺は思い切り上に振り被る。


コメント

・うおおおお!?

・え、マジ!?w

・夢咲ならやってくれると思ったよw

・いっけええええ!!!


「食らえスキルオーブ! できればアクティブスキルで──よろしくお願いしまぁぁぁぁぁぁあああすッッ!!!」


 ──パリンッ!!!


 かなり重めの破砕音とともに、スキルオーブは粉々に砕け散った。……今になって指先がちょびっとだけ痛いぜ。齧る時に勢いあまりすぎたんだぜ。

 ユキヤから予備で貰ったポーションを開けて、指先にちょびっとだけ染み込ませる。……あら不思議! 一瞬で傷が消えるじゃありませんか!!


コメント

・割ったァァァ!!

・本当にやりやがったよ

・ジャパニーズブチコワシ腹パンニンジャ!Fooo!!!

・金よりエンタメ取るとか最高かよ


 エンタメが金になるんだから両取りだぞ。

 身も蓋もないけど、目先の金に囚われてると絶対に足元すくわれるからな。長期的な運用をできる自信が無いなら、纏まった大金は持つべきでないと俺は思う。前世の苦い経験からな……ッ!


「さてさて。何を手に入れたかな!!」


 俺は少しばかりの希望を胸にステータスを開く。

 

「──GYAAAAA!!!!」

「あ、すみません。邪魔ッス。《即撃》」


 その瞬間リポップして攻撃してきたストーンゴーレムを、一瞬にして腹パンの刑に処す。今じゃねぇんだよな……。

 

コメント

・ストーンゴーレムくんんん!!

・意気揚々と再登場して一瞬で消される石……

・もう扱いがゴブリンのソレなんよ

・タイミングが……

・もうちょっと早くリポップしてれば優しく腹パンしてもらえたかもしれないのに


 さて、邪魔者はいなくなったので確認してみよう。

 

 

──

夢咲氷織 Lv.67


HP 596/643

MP 37/249


【固有スキル】

《即撃Ⅵ》《神速Ⅱ》


【エクストラスキル】

《反撃の心得》《心眼》


【通常スキル】

《剣術Ⅶ》《水魔法Ⅲ》《身体強化Ⅷ》

《状態異常耐性Ⅰ》《思考加速Ⅳ》《危機感知Ⅹ》《回避Ⅹ》

《体術Ⅱ》

───


「ふむ。《心眼》らしい。強そうだな」


コメント

・どことなく嫌な予感がするな……

・神なのか心なのか真なのか分からんけど

・敢えての新と予想


「心だぞ。コメント欄で大喜利はさせん」


 そんなことを呟きつつ、俺は意を決してスキルの説明を表示させる。

 えいっ。


────

心眼……見たくないモノから目を背け続けている者に贈られるスキル。


・心の眼で敵を捉える。(1/10の確率で戦闘中目を開けることができない)

・心眼状態中、全能力が15%UP

・???(剣術スキルがⅩで解放)

────



「パッシブスキルじゃねぇかこんちくしょう!!!!」




☆☆☆

Side ???


「はっはっは!!! 何こいつ面白っ!!」

「はしたないですよ、ブリジット」


 画面の前で涙を浮かべながら大笑いをする金髪ツインテールの少女に、黒髪のロングの女性が苦言を呈した。

 ブリジットと呼ばれた少女はケッ! と吐き捨てる。


「うるせぇよショタコン。お前にはしたなさが理解できるなら、今すぐその性癖を便所にでも放り捨てて来ることだな」

「あらあら。私は手を出すタイプのショタコンではないので大丈夫ですよ。眺めて鑑賞しておきたい派閥ですとも」

「そっちのほうが変態っぽいんだよ。それに、お前の言う鑑賞は、小さなガラス張りのショーケースに入れて自由の効かない姿を見ることだろ……おい、聞きながら興奮すんなよ気持ちワリィ……」


 ブリジットは自分より年齢も身長も上の女性に向かってドン引きした表情を見せた。

 この世界の基準で言えば、どちらかという黒髪の女性のほうが「まあ、珍しくはないね」で処理される側の変態である。むしろ、男に興味ありませんという面のブリジットのほうが糾弾される。おかしい。


「いやはや、それにしても、あれだけ男性配信者に興味が無かったブリジットが……珍しいものですね」

「ダンジョン配信してる男どもは探索者じゃなくてただの腑抜けだろ。あんな奴らに興味も劣情も抱くわけねーだろ。……夢咲氷織は良いぞォ……コイツはダンジョンをよく理解している。危険も、苦しさも……ロマンもな」


 ニヤリと笑ったブリジットに、黒髪の女性は「ふーん」と気のない返事をした。

 相変わらずショタにしか興味がないのか、この変態は……と呆れつつ、ブリジットは彼女を小馬鹿にするように発言した。


「おっと、そういえば最近お気に入りのショタが真面目にダンジョン攻略し始めたんだってな。いや〜、残念だったな、はっはっは!!」

「……どうやら喧嘩がしたいようですね」


 ドデカイ《《メイス》》を取り出して臨戦態勢を取る黒髪の女性に、ブリジットは苦笑する。


「さすがにフランスのSランクと日本のSランクが喧嘩したら国際問題になりかねねぇだろ。ってか日本にはお前みたいな変態しかいねーの? あたし、日本がダンジョンそのものに見えてくるわ……」

「同志たちがいっぱいいる、とだけ言っておきます」

「こっわ……」


 ブリジットは身震いして、日本への偏見を更に強めた。

 実はお忍びでこっそり日本に行こうとしていたブリジットだったが、今のを聞いて少し予定をずらすことに決めたのだった。


 

 


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― 新着の感想 ―
こんばんは。 まさか此処に来て、(戦闘中は)南○白鷺拳のシュ○になるとは……この海のリハ○の目を持ってしても(ry
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