表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/34

ドロップアイテム

 ア イ ツ ら は 帰 っ た 。


 いや、語弊があるな。帰らせたというほうが正しい。

 いつ魔物が湧いてくるか分からないダンジョン内において、集団行動というものは非常に理に適ってる。

 人数が増えれば警戒する人員も投入できるし、怪我を負えば誰かが魔物の注意を引いて戦闘中に回復することもできる。


 その分得られる経験値が少なくなるのはパーティーを組む弊害ではあるのだが、安全に攻略するならそれくらいの弊害は弊害にならない。

 

 ──まあ、全部俺に関係ねぇんだけど。


 いつ魔物が湧いてくるか分からないダンジョン内において、俺はひたすらソロ活動を強制させられている。

 なんか勝手にスキルレベルが上がった《回避》。  

 スキルレベルが上がるにつれて害悪仕様になってしまった《即撃》。


 たとえば《回避》が敵対行動している者の悪意に反応して自動で回避をする……的な有能さを持ち合わせていれば、俺は何の悪意もなく「回避さんあざーす!」とニコニコ笑顔で天に感謝を告げている。


 しかし実際のところは、悪意関係なく俺に降りかかる火の粉を──回復魔法も支援魔法も味方の流れ弾も、何でもかんでも回避しやがる。


 おまけに回避したら敵味方関係なく腹パンするというイカれた性能を持っている。


 こんなヤツとパーティー組みたいって言ってくれる人がどこにいるだろうか。あ、ドMは除きます。


 そんなわけで、ユキヤと愉快な仲間たち御一行には感謝を告げて帰還してもらった。

 俺もすぐに帰るけど、もし途中で鉢合わせて流れ弾を回避してしまった時があまりに怖い。


 俺は男も女も関係なく人に腹パンする趣味はねぇんだ……。



「ほな、ドロップした魔道具を見ていきまひょか〜」


コメント

・いよいよか

・そこら中にドロップアイテムが転がってるせいでどれが魔道具か分からん

・申し訳ないけど混沌のゴーレム戦よりユキヤとアイリスが助けに来たところのほうが切り抜かれそう

・草


「切り抜き師の皆さん、後生ですから俺のカッコいいとこを切り抜いてください」


 俺は思いっきり土下座をかました。


コメント

・カッコいいところ台無しにするな

・これぞ恥の上塗りであるw

・お前が自ら切り抜き甲斐のある行動ばっかするから……


 切り抜き甲斐のある行動ってなんやねん。

 多少ネタに走ろうとするシーンはあるけど、基本的に俺は割と真面目にやってはいる。分からないかもしれないけど、普通にステステ歩いている時だって前世で培ってきた攻略技術をふんだんに使用しているのだ。


 ……いや、リスナーが理解してない時点であかんか。


 今度ダンジョンの歩き方講座でもしようかしら……。


「うわ〜、めちゃくちゃドロップアイテムあるな。やっぱり睡眠無意識腹パンのほうが効率良い気がするんだよなぁ」


コメント

・やっぱり言い出したぞコイツw

・睡 眠 学 習

・寝てる間に回避貫通しないかこっちはヒヤヒヤなんだぞ……


「スリルある方が面白いだろ? ストーンゴーレムだって一撃ダメージ食らったくらいじゃ死なんし。余裕とか舐めプとかじゃなくて、経験則的にな」


 ある程度探索者として活動していくと、引き際というものが理解できるようになる。

 単に魔物の強さを見抜けるようになるだけでなく、"大体これを食らったら死ぬな"ってラインが感覚的に分かるのだ。

 

 前も言ったけど戦闘中にステータスを見る暇なんて当たり前のように無い。

 ということは、自分のHPがどれほど減っているのか可視化することができないのだ。


 何とも不親切である。

 視界の端にHPバーとか用意しとけよな、とも思うけど、それはそれで戦闘の邪魔になるんだよな……。


 ちなみに今言ったことは大体ソロが前提の話だから、パーティーとなるとまた別だゾ!! ソロ万歳!! パッシブスキル死ね!!


コメント

・スリルありすぎ問題

・面白いのはまあ本当w

・見てるだけの人間としては刺激が無いと飽きるからねぇ

・死ななけりゃ何でもエンタメよ


「良いこと言うじゃねーの。死ななけりゃエンタメ。まさにその通りだな」

 

 その点、ネタに走って死んだら、それはただのバカとして後世の記録に残ってしまう弊害があるけどネ……。

 俺の場合、腹パンマン……散る……的な文言で『今年あったヤバい出来事3選』みたいなネタ系動画投稿者のエサとなる可能性が高い。


 いやだ……Tik◯okで無限に転載されるような扱いにはなりとうない……!!


「俺の葬式にはユキヤを呼ぶなよ」


コメント

・草

・地獄まで追いかけてきて腹パンしてください!って頼み込んできそう


「おい待て何で俺が地獄に落ちる前提なんだよ!!」


コメント

・無差別腹パン罪……?

・生物のお腹の治安を荒らした罰

・ストマックキラーに天国は似合わないぜ


「悪いけど俺は無機物も腹パンするぞ」


 なんの言い訳にもなってねーけど。

 つくづく思うけど君ら俺の扱い雑すぎねぇか? 仮にも俺って今一番脂乗ってる男性配信者だと思うんですけど──まあ、"男"で売ってないからこういう扱いなんだろうが。


 前世ではダンジョン配信者のことを『命を賭けたプロレス』なんて揶揄する発言が目立つこともあったが、結局のところスリルある命のやり取りを見せ物にして……それを楽しんでる時点でみんな同じ穴の狢なんですわ。


「毎回本題に辿り着かないな。とりあえずドロップアイテムを回収していくか……ストーンゴーレムのドロップは基本的に鉱石の類だったよな?」

  

 地面に散乱している鉱石を拾い集める俺。

 大体がクズ石ばかりだが、魔石とは別に稀に光輝く石が落ちている。


 これがダンジョンにしかない鉱石、魔鉱石だ。

 魔石と名前似てるしややこしいんだけども……。


 魔鉱石は──主に主婦層に爆受けした鉱石である。


 何とね、これで作る包丁の切れ味がすんごいのよ。

 マジでスッパスパ斬れる。硬い野菜とか筋のある肉とかめっちゃ斬れるのよ。いや、マジで革命的だと思うコレは。


「魔鉱石で作る包丁。ちょっとお高めだけどマジで良いよな。斬れ味凄すぎて一人暮らしの自炊モチベがすんげぇ高くなる」


コメント

・探索者くんさァ……

・革命起こしたの探索者の武器やろがい……

・いや確かにあの包丁マジですごいけどさw

・意味もなく大根千切りにしたあの頃が懐かしい


 なぜかリスナーは呆れているようだった。  

 いや、分かってるヨ? 今俺が使ってるお値打ち品の剣だって魔鉱石を加工して作られた物だし、これが世に出回ってから魔物の討伐が楽になったのは認める。

 


 でもなァ……!


「魔鉱石の特徴である自動再生……! 包丁がマジで便利なんだよなァ……!! 研がなくて良いの最高すぎる……!」


コメント

・いつになく熱入ってんなコイツ

・剣を語れ剣を

・仮にも剣術で天下取りたいヤツが言うセリフじゃねぇ


「剣を語る時は剣で語るから良いんだよ」


コメント

・あ、ハイ

・不覚にもちょっとカッコいいと思っちゃった

・実際それを体現してるから何も言えない……

・やるやん

・そのドヤ顔が無ければ最高だったw


 実際問題、前世で使ってた愛剣は魔道具だったし、これといって魔鉱石に愛着が無いというのが本音ではある。

 意外と高く買い取ってくれるから稼ぎが良い、という利点はあるけども。


「さてさて、これも魔鉱石……これはクズ石……んでもって魔鉱石……ん……これがドロップアイテムか」


 いそいそと落ち穂拾いならぬ落石拾いをすること5分。

 そろそろストーンゴーレムくんの再登場時間という時に、俺は恐らく混沌のゴーレムくんの遺品である魔道具を見つけることができた。


 ……あぁ……なんか紫色の巨人が笑顔でサムズアップしてる動画が脳内再生されているわ……。


コメント

・え、これって……

・マジもんのレアじゃん!!

・存在は聞いたことあるけど初めて見たわ

・特徴ピッタリだね


 俺はドロップアイテムである仄かに淡いオレンジ色の光を放つ球体を手に取る。少しでも衝撃を加えると今にも割れてしまいそうな程に心許ない球体だ。


 前世でもなかなかお目にかかることができない魔道具。

 

 その名は──、


巧手(こうしゅ)の宝珠……またの名をスキルオーブ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
シナジー満載なパッシブスキル来るか
混沌のゴーレムさんの能力が手にはいるのかな? それとも紫色に変身?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ